太陽神ラーの別名と「隠れたる者」の謎 メジェドってやっぱり太陽神なのでは…。

古代エジプトの王墓に描かれた呪文のに中に、「太陽神の讃歌」とか、「太陽神ラーへの連祷」とか呼ばれているものがある。
初出は第18王朝のトトメス3世で、冥界における太陽神ラーには74の別名と姿がある、として、74の名前と姿が描かれているものだ。冥界を通過しながら太陽神が様々に変容していくという内容になっている。

「死者の書」の中には、死者が様々なものに変身していく呪文があるが、同様に、太陽神ラーも夜の世界である冥界を西から東へ回送しながら様々な神に変容していくのだという。
中には、こんな感じで「えっ、かわいくね?? ていうかまんますぎね???」ってうやつもある(笑)

冥界ではネコにも変身できる。そう、冥界ならね!

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で、この太陽神の別名を改めてしげしげと見ていて、ふと気がついたことがある。

・他の神の名前が3割弱混じっている


って言うても実際見ないとわからんと思うので、以下のページの「太陽神の別名」セクションにまとめておいた。
http://www.moonover.jp/bekkan/god/ra.htm

他の神の名前というのは、たとえば以下のようなものだ。
これは実際、死者の書の中では太陽神ラーは別の神に変身しているところもあるからなんとなく分かる。ラー、ケプリ、アトゥム、ホルアクティ(ホルス)などは、他の場面では個別の神として登場しながら、太陽神の変容した姿として登場することもある。

私個人はあまりにもザックリ概念すぎると思っているため同意しないが、「多くの神々がいるように見えて実はすべてラー神の分身で、エジプト神話の中の裏には一神教の概念があるのでは」などと唱える学者もいるくらいだ。

(1)シュウ ★
(2)アトゥム ★
(3)ラーの魂
(4)闇の者
(5)魂の中の風
(6)魂を守る者
(7)洞窟の先頭にいる者
(8)一つとなったものジェバア
(9)ネトゥティ
(10)アブゥ魚のそれら

また、もうひとつ気になっているところがある。


・「隠れし者」というアメン神の別名が入っている

明確に他の神の名前と分かるもの以外でも、おそらくこれは他の神の別名や形容詞だな…というものは幾つかある。「隠れしもの」はその一つだ。太陽などという目立つ存在なのに何故「隠れ」るのかというと、おそらく夜とか日食とかで姿を隠すシーンがあるからなのだと思う。あとラー神と習合するアメン神はもともと、不可視という概念が神名の元なので、アメン神から吸収した属性なのかもしれない。

と同時に、この特徴的な別名を見ると、やはりメジェドってラー神かアメン・ラー神の別名の一つなのでは…という気がしてくる。
詳しくは以下に書いたとおりだが、死者の書のメジェドの登場シーンでは、「メジェド」は神名というより「名前を軽々しく呼べない誰かを現す言葉」として登場する。

大人気? メジェド様とその周辺 ~死者の書・第17章の前後解釈を添えて
https://55096962.seesaa.net/article/201403article_32.html

アメン神の神名の意味が「不可視」、ラー神に「隠れたる者(見えざる者、とも訳せる)」という別名がある、と考えると、なんかこの謎の神、布めくったら眩しい太陽光出てきそうな気がするんですが。


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なお、エジプトの最高神同様に、メソポタミアの最高神マルドゥクにも、大量の別名がある。
どんなのがあるかについては、以下にまとめておいた。
マルドゥクの場合も、「エンビルル」や「ムンム」、「エア」といった他の神の神名が彼の別名とされている。完全な万能の唯一神まではいかなくても、別の神々を吸収して疑似一神教みたいな習合合体をさせるのは、古代オリエント世界の伝統なのかもしれない。

http://www.moonover.jp/2goukan/meso/god_list/maruduk.htm