ファラオはゆっくり眠れない。ラメセス6世の破損ミイラは今

ラメセス6世とは、古代エジプトの第20王朝の一人である。
甥と考えられているラメセス5世の早世のあとに在位しているが、ラメセス5世の彫像や墓から名前を削り取って自分のものに変えるなどしているため、簒奪王と呼ばれることもある。また、この王の時代にエジプトはアジア支配をほぼ失っており、衰退期の王でもある。

そんな不安定な治世ゆえか、王の墓は死後数十年以内に略奪され、棺はカチ割られ、ミイラもズタズタの状態でロイヤル・カシェ(後世に移された別の隠し場所)から見つかった。あまりに状態が悪く、長らくカラー写真もない状態だったのだが、最近どうも接客に駆り出されているらしいということに気づいてしまった…。

こちらのミイラ・パレードで、旧来の安息の地だったタハリール広場の博物館から、新造の国立文明博物館のほうに移動させられたのである。

エジプトのロイヤル・マミーズ・パレード、盛大に行われる。
https://55096962.seesaa.net/article/202104article_5.html

ちなみに、こちらが発見当時の白黒写真。
頭部の拡大写真もネットを探せば見つかるが、かなり酷く破損していてグロテスクにも見えるのでここには写真を載せていない。
とはいえ全身画像だけでも酷い状態なのは分かると思う。身体の形が分からないくらい破損しているが、これでも古代の神官たちが埋葬し直す時になんとかパーツを集めて修復した後の状態だ。

ramesses_vi.jpg

3my.jpg

で、これが今、新しい博物館でどうなっているかというと…。

https://nmec.gov.eg/mummies-hall/ramses-vi/

こう。

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うん、まあ、そうね。
身体の部分は破損してて見せられないよね…。

ここまでして展示しなきゃならんのか、という疑問が


ツタンカーメンのミイラもそうだけど、状態が悪くて顔の部分いがいは全部布で隠さないとどうにもならいようなミイラは、無理して展示しなくてもいいのでは? と思ってしまう。可愛そうというか、やはりかつては人だったものの器への尊厳を考えてしまう。特にこのファラオは顔部分ですら破損しているので…。

こんな状態になっても、死後も接客して外貨獲得のために文字通り身を粉にして働かされる古代エジプト王、マジでブラック職すぎるのでは。
せめて夜と休館日は快適なベッドで眠れますように。