古代エジプトミイラの作り方。「脳は鼻から掻き出す」は一部だけと分かってきている話
イギリスのケント州で、民家の屋根裏に忘れ去られていた古代エジプトミイラの頭部が発見されて、博物館に寄贈された。
どうも19世紀あたりに誰かがお土産として持って帰ってきたものを貰った、みたいな、ふわっとした来歴しか分かっていないらしいのだが、19世紀当時としてはよくある話なので、それ以上の追求も難しいかと思う。
https://www.kentonline.co.uk/maidstone/news/ancient-mummy-head-reveals-all-after-scan-270591/
※記事にはがっつり頭部の写真もあるが、生首すぎてアレなのでCTスキャン中の博士たちの写真を代わりに。

年齢は20歳くらい、古代エジプト人あるあるとして歯はかなりすり減っている。
歯がすり減る理由はパンに含まれる砂粒なのだが、混入過程などはこちらの説明でどうぞ
で、CTスキャン自体はまぁよくやってる話なのでいいのだが、この記事の中にぽそっと出てくる以下。
「最近のミイラ頭部のスキャンによって、ミイラから脳みそ取り出す方法にバリエーションがあることが分かってきた」という内容だ。
これは自分も気になっていた部分になる。
多くの本では今でも、「鼻の奥の骨を砕いて、そこから器具を使って脳をかき出した」と書いてある。この器具は確かに見つかっている。
しかし、鼻の奥の骨が砕かれていないパターンもあれば、脳が取り除かれずに残っているパターンもある。そして、例外とは言えないくらいの事例が既に発見されている。
この差異は、たとえば、以下のような状況によって生まれている可能性がある。
■死亡した時期や死亡からミイラ化までの日数
ご存知、エジプトはとても暑い国である。死亡してからしばらく放置すると脳のような腐りやすい器官はあっという間に腐敗する。そうなると、「掻き出す」というよりは「鼻から流れ出てくるのを流す」みたいな感じになる可能性がある。
また、今みたいに車とかないので、ミイラ化処置の場所まで運ぶのに時間がかかってる間に腐敗する可能性もある。
■ミイラ化の等級、身分差
丁寧な処置ほどミイラ化の手間がかかるのはよく知られている。庶民のミイラや、あまりコストをかけずにミイラ化されたものは、脳をきっちり取り除かないことがあるかもしれない。
■時代による手法差
ミイラが作られた時代によって、作り方が異なっていた可能性はある。終盤になるほど手抜きともいうべき状態になり、内臓すら抜かずに香油塗って布を巻いただけの埋葬も出てくるようになる。
これらの情報が出てき始めたのは、ミイラをCTにかけるのが一般的になったここ15年くらいの話なので、知見が溜まるまでには時間がかかるかと思う。が、少なくとも、ミイラの作り方として、「脳みそを掻き出す」は代表的な手法の一つにすぎないというのは認識しておいてもいいかもしれない。
どうも19世紀あたりに誰かがお土産として持って帰ってきたものを貰った、みたいな、ふわっとした来歴しか分かっていないらしいのだが、19世紀当時としてはよくある話なので、それ以上の追求も難しいかと思う。
https://www.kentonline.co.uk/maidstone/news/ancient-mummy-head-reveals-all-after-scan-270591/
※記事にはがっつり頭部の写真もあるが、生首すぎてアレなのでCTスキャン中の博士たちの写真を代わりに。

年齢は20歳くらい、古代エジプト人あるあるとして歯はかなりすり減っている。
歯がすり減る理由はパンに含まれる砂粒なのだが、混入過程などはこちらの説明でどうぞ
で、CTスキャン自体はまぁよくやってる話なのでいいのだが、この記事の中にぽそっと出てくる以下。
「最近のミイラ頭部のスキャンによって、ミイラから脳みそ取り出す方法にバリエーションがあることが分かってきた」という内容だ。
Although traditional accounts state the brain was removed exclusively through the nose, research using CT scans has shown great variability.
これは自分も気になっていた部分になる。
多くの本では今でも、「鼻の奥の骨を砕いて、そこから器具を使って脳をかき出した」と書いてある。この器具は確かに見つかっている。
しかし、鼻の奥の骨が砕かれていないパターンもあれば、脳が取り除かれずに残っているパターンもある。そして、例外とは言えないくらいの事例が既に発見されている。
この差異は、たとえば、以下のような状況によって生まれている可能性がある。
■死亡した時期や死亡からミイラ化までの日数
ご存知、エジプトはとても暑い国である。死亡してからしばらく放置すると脳のような腐りやすい器官はあっという間に腐敗する。そうなると、「掻き出す」というよりは「鼻から流れ出てくるのを流す」みたいな感じになる可能性がある。
また、今みたいに車とかないので、ミイラ化処置の場所まで運ぶのに時間がかかってる間に腐敗する可能性もある。
■ミイラ化の等級、身分差
丁寧な処置ほどミイラ化の手間がかかるのはよく知られている。庶民のミイラや、あまりコストをかけずにミイラ化されたものは、脳をきっちり取り除かないことがあるかもしれない。
■時代による手法差
ミイラが作られた時代によって、作り方が異なっていた可能性はある。終盤になるほど手抜きともいうべき状態になり、内臓すら抜かずに香油塗って布を巻いただけの埋葬も出てくるようになる。
これらの情報が出てき始めたのは、ミイラをCTにかけるのが一般的になったここ15年くらいの話なので、知見が溜まるまでには時間がかかるかと思う。が、少なくとも、ミイラの作り方として、「脳みそを掻き出す」は代表的な手法の一つにすぎないというのは認識しておいてもいいかもしれない。