ついにベネチアのモーゼが動き出した、が…。環境保護の視点が必要な現代の「海割り」

モーゼの海割りは、古代世界だから文句言われなかったのである。
現代だと、干潟が侵食されるとか、海辺の動植物に配慮しろとか、色々と環境保護の視点が必要。なるほどなぁ…という感じ。

というわけで、ベネチアに作られていた対高潮防御システム「モーゼ」の話をしたい。
このシステムについては、かなり前に一度取り上げたことがあった。

モーセは沈み行くヴェニスを救えるのか。イタリア・ヴェネツィア、起死回生の「水の都の物語」
https://55096962.seesaa.net/article/201503article_23.html

干潟の町ベネチアは、ここ最近、頻繁な高潮に見舞われている。このままでは町が沈むとさえ言われてきた。
そのため、高潮が発生した際に海の中からせり上がり、自動で湾を締め切るための壁を建設していた。それが「モーゼ」である。

動き出したベネチアの巨大水門、浸水を防ぐ一方で膨らむ不安
https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/photo/stories/22/072800058/?P=2

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仕組みは、動画などを検索するといくらでも出てくるが、この黄色い板みたいなのが海の中から上がってきて、壁のように並んで高潮を防ぐシステム。

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この仕組み自体は、なんとか動くようになって高潮もそこそこ防げてはいるらしいのだが、問題は、多用すると湾の中の潮の流れが滞って干潟が死ぬ、という点らしいのだ。

…いや、なるほどな、と思った。
そりゃそうだよね、これ本当に壁だもん。干潟と干潟の間の海を仕切って海水の侵入を防ぐんだから、防波堤作ってるのと大して変わらんよね。

ヴェネツィアは干潟の上に作られている町だ。
はるか昔に中の人が旅行した時の記録が以下だが、中心の本島から離れた島などにいくと、実に見事な緑と、鳥や魚の楽園みたいなところが広がっていた。あれがダメージを受けるんだとすると、「それは困る」と言い出す人がいるのも当然だと思う。

http://www.moonover.jp/2goukan/venice/index.htm

これは日本でいうと、諫早湾の閉め切りに関する訴訟と同様なのかなとも思う。
高潮を防ぐために湾を締め切ったら周囲の漁業か…とか、ここベネチアでも起きそう。

町を護るためにモーゼが仕事を全うするのか、環境のために仕事を控えろと言われるのか、今後は、その匙加減が注目すべき点になりそうだ。