古代エジプトの王名とカルトゥーシュの雑学。意外と知られていないあれこれ

カルトゥーシュというのは、こういうやつのこと。

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古代エジプト王の名前を囲んでるマーク、として有名だ。これがあるのでヒエログリフ読めなくてもどこに王様の名前があるかがわかりやすい。また、このカルトゥーシュに囲まれていたお陰で「クレオパトラ」という文字が特定出来て、ヒエログリフ解読の切っ掛けになった、というエピソードも有名だ。

さて、このカルトゥーシュだが、たまに違和感のある説明をされていることがある。

「これに囲まれているのが王名」なのはだいたい合っているのだが、たまに王じゃない人の名前も囲まれている。
また、カルトゥーシュに囲まれない王名もある。

というあたりの雑学を軽くまとめておきたい。


■王じゃないのに名前にカルトゥーシュを使う人

たとえば、こういうパターンである。

・自分は王だ! と勝手に名乗ってる人
・王位継承権のある王子のフライング(そして実際は王位を継げないで終わる)
・それなりに権力のあった王族が何故か使ってる、一時的に即位した可能性も

実際の例↓

王女様のカルトゥーシュ。ソベクヘテプ3世の娘イウヘティブ
https://55096962.seesaa.net/article/202008article_2.html


■カルトゥーシュに囲まれていない名前

ファラオの五重名、と言われるように、古代エジプトの王様は五つの名前を持つ。しかも本名以外の名前はしょっちゅう変える人もいて、「最大五種類」というだけで数はもっと多い。

称号の種類については、以下にまとめておいた。
http://www.moonover.jp/bekkan/chorono/royal_titulary.htm

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このうち、カルトゥーシュに囲まれるのは、即位名と誕生名。
あと、ファラオの名前で知られているものの一覧をヒエログリフと平行して載せてくれているサイトが以下。

https://pharaoh.se/dynasty-XIX

一人の王が持っている名前がかなり多くて、ビビると思う。…うん、いや、マジで多いんだ。誕生名はだいたい同じだけど、綴り方違いがあったり、形容詞が追加されていたり。エジプト学者が「この名前とこの名前は同じ王のものでいいんだろうか…?」みたいな悩み方する理由も分かると思う。

と同時に、カルトゥーシュではなくセレク(王宮を模した四角い形)に囲まれた名前が多いことにも気づくかと思う。
セレクはカルトゥーシュより昔から使われていた王名の印で、古くから使われている名前はそちらのマークに入れる伝統があったようなのだ。それもまた、「カルトゥーシュに囲まれない王名」に入るだろう。


■何にも囲まれないパターンもある

あと一つ、予備知識として、本来はカルトゥーシュに囲まれるべき即位名や誕生名が、スペースの都合などで「囲まれない」というパターンもある。
その場合に添えられるのが「偉大なる神(アア・ネチェル)」という尊称みたいなもの。
このパターンはあまり見かけないが、即位名や誕生名なら必ず囲まれている、というわけでもないのは覚えておいても損はないかも。