現代エジプトの地下水資源と、水争奪戦の行方とか

エジプトは国土の90%以上が砂漠で、ほぼナイル川沿いにしか人が住んでいない国だ。なにしろ水がないので人は住めない。
川沿い以外で水があるのは西方砂漠のオアシスくらい、――なのだが、実はエジプトの地下には巨大な帯水層が眠っている。

ヌビア砂岩帯水層(Nubian Sandstone Aquifer System)と呼ばれる、約3万年ほど前に降った雨が地下に溜まった層である。

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https://www.researchgate.net/figure/The-Nubian-Sandstone-Aquifer-System-after-Salem-and-Pallas-2001_fig4_349886949

エジプトの西方砂漠にあるオアシスの水も、この帯水層から来ている。
地下に溜まった水は、2万年くらいかけてゆっくりと海に向かって流れ続けている。現在では雨はほとんど降らないから追加されることもないのだが、溜まっている量がかなり多いので、まだまだ無くなりはしないのである。

https://www.jccme.or.jp/11/pdf/2022-06/josei03.pdf
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そこでエジプトさんは、最近では、この水を汲み上げて農業しちゃえ! とばかり、センターピボット農法で砂漠に畑を作っている。
だが、帯水層があるのはエジプトだけではない。というか、地下でつながっていてるので、他の国でも同様に汲み上げると、地下水の枯渇が早まってしまう。

ナイル側が国際河川であるのと同じように、地下水も国際的な資源となっていて、各国争奪戦になる可能性がある。
(というか、既になりはじめている)

これはなかなかキッツいな…という感じである。

ちなみに、実際に地下水を組み上げすぎて枯渇したのがサウジアラビア。水がなく、野菜などが作れなかったため地下水で農業をとしてたのだが、使いまくって数十年で枯渇した。
そのサウジアラビアに現在、地下水で栽培した野菜を輸出しているのがエジプトなわけなので、お金持ちが他国の水をお金で買って消費しているというわけだ。


地下水は、言ってみれば化石資源の一種で「化石水」とも呼ばれている。いったん枯渇すれば、また気候変動が起きるずっと未来にしか補充はされない。再生不可能な資源の一つになる。
ヌビア砂岩帯水層はサウジアラビアの地下水よりは溜めている量が多そうだが、周辺の数カ国でまとめて数十年も汲み上げ続ければ、いずれは枯渇する可能が高い。
いまいま水が切実に足りない状態では手を出さざるを得ないのは分かるが、果たして、この水を使い尽くしてしまった時に何が起きるのか。
サウジアラビアは石油マネーがあるので他国の水も買えたが、北アフリカ諸国にそれが出来るのかというと…。

いずれ増えすぎた人口を支えきれなくなって訪れる破局の時は薄々見えているが、他国のことなのでどうしようもない。



なお、エジプト神話の世界観では、地下には原初の水ヌンが広がっているとされていた。
世界はヌンから生まれてきたのである。
そして、そのヌンを「呑むもの」とされているのは、混沌の蛇アペピとされていた。

どうやら現代世界においては、皮肉にも、創生神に創られたヒトが世界に破滅をもたらす大蛇の同類になってしまっているらしい。