(ネタバレあり)映画「ジュラシック・ワールド」を見て来た―というわけで、”イナゴ映画”として批評するよ!

「ジュラシック・ワールド」シリーズ最新作かつシリーズのフィナーレという「新たなる支配者」を見てきた。
この映画は、かつて大ヒットとしたジュラシック・パークシリーズの系譜に繋がるもので、現代に蘇らせた恐竜がテーマパークからうっかり逃げ出しちゃって野生化、今では世界中に存在する…という設定で展開されている。

公式サイト
https://www.jurassicworld.jp/
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まぁ誰が新たな支配者なのか全然わからなかったのは置いといて、見に行く前にレビューを見ていたら「実質イナゴ映画じゃん」とあったので見に行ったわけですが…

 マジでイナゴが〆を持っていった

そんでもって、恐竜との共存は示唆されているのに、イナゴ(正確にはトビバッタ系)とは共存出来ないという結論に達する。恐竜ageのために何故かバッタがsageに使われている謎。そこは…そこは納得がいかないんじゃよ…!

というわけで、バッタマニアとしての魂の叫びをここに書き記しておきたいと思う。


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■野生に帰ったバッタは孤独相に戻るだけでは?

前提としてバッタは群れを嫌い、成虫の間は繁殖以外では仲間とは距離を置く生態だ。特に群生相を作るトビバッタ系などはそう。
だが、幼生のうちに混雑を経験させると、群れで動く群生相に変化することが知られている。(=いわゆる蝗害の発生)
なので、逃げ出したバッタが群れを作って畑を荒らし回っていたのは、もともと研究室で敢えて密集した状態で繁殖させて群生相として成長させたのだと思うが、研究室の外の広い世界に放たれれば、その時点で群れでいる理由は無くなる。

目の前に広大な穀倉地帯が広がっているのなら、そのうち群れがバラけて次世代からは孤独相に戻るはずなのだ。次世代以降も群れになってる理由が分からないし、群れのまま無限増殖すると考えられているのもよくわからなかった。遺伝子操作に失敗した、みたいな話になっていたが、ベースになっているのは現代のバッタの行動パターンのはずなので、逆にそこのパターンを遺伝的に全く別物に書き換えるくらいしないとあの危機的な現象は発生しないと思う。

なんか物語上のご都合主義のために現実世界のバッタと全然違うなぁ…とモニョモニョした。



■巨大バッタがひたすら「気持ち悪い」と登場人物にDisられる

バッタをケージから掴みだす時に嫌がったり、床に落ちてるバッタの死体を「うぇっ気持ち悪い」みたいに言ったり、何度もDisられてるのが解せない。それは世の中の昆虫好きにケンカ売ってるのでは(#^ω^) 
いや、てか、人間なんかよりずっと昔から生きてる生命の大先輩なんスけど。なんで恐竜は人間襲ったり食ったりしてても「知性はある」とか「信頼関係があれば共存出来る」みたいな扱いになってて、バッタは悪役なんですかねぇ…。



■そもそも外に放たれたバッタどこで繁殖してるん

大量発生するトビバッタなどは、実は繁殖条件がかなりシビア。(なので条件が一致してしまうと爆発的に増えるが、恵まれない条件だとほとんど生き残らないこともある)
かつて北米に実在していた巨大かつ大量発生する「最強のトビバッタ」、ロッキートビバッタは、繁殖地を開拓されたことでアッサリ全滅してしまったとされている。遺伝子操作された巨大バッタたちも所詮ベースはそのへんにいるトビバッタのはずなので、気温が高い場所、かつ湿った砂地が無いと産卵しないと思われる。そんな適地って世界のどこにでもあるわけではないので、世界中でバッタが増殖! みたいな状態になっているのはファンタジーすぎるかな…と思った。

ていうか現代の大量発生バッタも、サバクトビバッタだと雨が降りすぎる地域や高い山を越えられないし、トノサマバッタも食草のある地域を移動出来ないからね。
映画の中の世界はどうも、遺伝子いじれば恐竜だろうが昆虫だろうが繁殖力が爆発的に上がるという謎設定があるらしい。一番肝心なところがバグってる謎の遺伝子操作技術ってどうなの。



■巨大化したバッタは現代で生きられるのか

知っている人も多いと思うが、恐竜が生きていた時代の昆虫は巨大だった。
現代でも巨大なトンボが一部生き残っていたりするが、最大で20センチくらい。かつては、その3倍ものサイズの昆虫が我が物顔に飛び回っていた。
今作では、その巨大昆虫の遺伝子を現代の昆虫に組み込んで、何故か巨大なバッタを作ってしまう。

https://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/article/news/14/4702/
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しかし、巨大でも活動出来ていたのは、当時の酸素濃度が高かったからでもある。
古代サイズの昆虫は、まず現代では活動出来ないのではないかと思う…。

というか、もし仮に生き延びられたとしても、巨大化したサイズで小型と同じ動きはムリである。小回りの利くバッタの飛び方で群れをなして飛び回るなど出来るはずがない。空気抵抗ってやつがですね。あとそもそも長距離飛べるのか、重量的に…。大陸を渡るとか燃費の関係でムリだと思うんだが。


■そもそも巨大化したバッタをケージで飼えるのか

次に疑問だったのは、その巨大化したバッタをえっらい狭いケージで飼育してる上に、ケージ並べてある部屋も狭すぎること。
いや、てか、そのケージたぶん普通サイズのバッタ用だよね…。部屋もそうだよね…。
バッタのサイズ10倍くらいになってるんだからせめて10倍にしないと。ていうかバッタって飛び跳ねる生き物なんだけど、普通サイズのバッタでも一回の跳躍で20センチくらいいくよね。身体のサイズ10倍ってことは2mくらいいくのでは。ケージの中で飛び跳ねただけで壁に激突する環境は流石に…。


■バッタの持ち方が危なすぎる

ケージの中からバッタを掴みだす時の博士の手付きが! なんか実験用マウスでも抱いてるみたいだったんですけど!
バッタは普通サイズなら背中の固いところを持つのが正解、トノサマバッタくらいのデカいやつだと足で蹴られるのが痛いので長い脚の間接のところ抑えて持つのがベスト。そもそもあんな大人しくバッタが抱かれるわけない…。あの博士、普通なら足で蹴られてると思う。普通サイズのバッタでもかなり痛いのに、10倍サイズだとケガするレベル。


■バッタの飼育室に糞が落ちてないのがリアリティない

バッタが一日にどんだけUNKOすると思ってんの! 飼ったことないの!!!




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と、色々文句を言ってしまったが、以下だけは可能だと思う。

■バッタが食えない植物は作れるのか

正確には「食われづらい」植物は作れる。
トノサマバッタの場合、何故かオオムギを食べないという性質がある。これはオオムギに含まれる成分が成長を阻害するためで、コムギにオオムギの遺伝子を組み込めばトノサマバッタが避ける作物が作れる、という実験を日本の研究者がやっていたりする。
なのでここは資料見たんだな…とは思った。


あと以下もリアル。

■大量発生したバッタに火炎放射器で火をつけると、燃えながら飛び回って危ない

本当にそれやる人いたんだ、ってちょっと笑ってしまった。
映画みたいに窓突き破って逃げるバッタはいないと思うし、燃えながら何分も生存してるやつはいないと思うけど、火が付いたまま5秒生存してればその間に色んなものに延焼するので。ゴキブリに火を着けて事故った事例でも見てこような。



と、まあ、色々言いたいこともあり、バッタ映画としては納得いかない出来です!
恐竜映画としてはまあ…まあ…なのでは…って感じだけど、恐竜映画にしてはバッタが出すぎなんだよなあ。なんかシリーズ最終作ということで時間内に頑張って風呂敷畳んだ感はある、ただそのために欲張りセットを盛り込み過ぎたのかな、って感じの内容でした。

バッタがなぁ…もうちょっと頑張ってくれてたらなあ…。
CGの造形も動きも「何これ」って感じで虫好きにはオススメできない。バッタはもっと美しい生き物なんすよ、本当はね。


★バッタ研究の最新情報は、この本がオススメ

日本のバッタ研究者たちの本気。「バッタの大発生の謎と生態」
https://55096962.seesaa.net/article/489354397.html