古代エジプトと亜麻の服 ~「涼しい服」は文明のたまもの

古代エジプト人は、亜麻の服を来ていた。
というのはよく知られていると思う。古代人イラストなんかに出てくるのも、ほぼ亜麻布(リネン)の服である。

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*出土例
古代エジプトの服飾・縫製事情 ~古代人の型の取り方
https://55096962.seesaa.net/article/202103article_9.html

亜麻はエジプト周辺の東地中海沿岸から中東付近が原産の草で、現在でもエジプト周辺で布の材料として栽培されている。

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獣皮や羊毛など他の材料の服があまり出てこないことから、「獣皮を着るのはタブーだったのでは?」的なことが書かれている本もあるのだが、ぶっちゃけ、亜麻布の服が着られていたのは 暑いから という理由が大きい。そんなもんエジプトの気候みれば分かるんである。

 暑いけど裸でいるのはマズい。何か纏いたい。→薄くて涼しいもの→亜麻布

これは、同じく「手間をかける」衣装としての、樹皮繊維や羊毛(ウール)が採用されなかったことの理由でもある。
たとえば近隣のメソポタミアでは、羊毛モコモコの腰布「カウナケス」が権威の象徴であった。これはエジプトでは着られない。暑いから。冬場なら着られるかもだが、その場合は上半身も上着着ないと逆に寒い。

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亜麻を育てて布を作るのは大変だ。なので初期には、亜麻の服は貴人だけのものだったはずで、貴重だったからこそ墓にも入れられた。亜麻布は文明のたまものであり、同時に、身分差を資格的に表現するためのツールでもあったと考えられている。


なお、近隣の遺跡だと、面白いもので「樹皮製の服」というのも発見されている。
服の材料は、その場所ごとに違う。そしてそれぞれに、人々の苦労のほどが伺えて面白い。

石器時代の人々は何を着ていたか。チャタル・ホユックから発見された布の材料は意外なものだった
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