パキスタンの豪雨被害でモヘンジョ・ダロが被害を受ける。

大雨被害が報道されているパキスタン。実はモヘンジョ・ダロなどインダス文明の遺跡の多くはインドではなくパキスタン側にある。
被害出てるんじゃないかなと思って調べてみたら、やっぱり…という感じだった。


洪水でモヘンジョダロの壁損壊 パキスタン世界遺産、国連支援
https://www.sakigake.jp/news/article/20220910CO0017/

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Record rains in Pakistan damage Mohenjo Daro archaeological site
https://www.msn.com/en-us/news/world/record-rains-in-pakistan-damage-mohenjo-daro-archaeological-site/ar-AA11B0zH

英語版の記事のほうが詳しい。
モヘンジョ・ダロがあるのはパキスタン南部のシンド州で、1週間に1,400ミリ以上(つまり1日平均で200ミリ以上)の猛烈な雨が降り注ぎ、遺跡の日干しレンガ部分が溶けてしまったようなのだ。

映像で見るならこちら。崩れてしまった部分と、その部分を修復している状況を見ることが出来る。
まあこれはしょうがないよな、レンガ造りだもんな…という感じ。

Mohenjo Daro: Damage done by recent heavy rainfall - BBC URDU
https://www.youtube.com/watch?v=CsA3t-shN_s

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さて、ここまではニュースの内容となるのだが、では当時ここに住んでいた人たちは、豪雨を想定していなかったのか。という部分がポイントである。
実はインダス文明の遺跡には、豪雨を想定して石材で町を作っている遺跡と、雨があまり降らないことを想定して日干レンガで町を作っている遺跡がある。

一口にインダス文明といっても、かなり広範囲に遺跡が散らばっていて、それらがゆるやかに繋がっているネットワークが文明の実体とされている。そのため、遺跡の構造にもかなりの地域差がある。モヘンジョ・ダロが有名なので日干レンガのイメージが強いが、一事例に過ぎない。
町を構成している材質からして、このへん昔は雨が少なかったのだろうと思われる。それが気候変動で雨が降るようになり、保存が難しくなっているわけだ。
もし今後も雨が続くのであれば、遺跡に屋根をかけるなどして保存しなくてはならないだろう。

ちなみに現在の有力な説では、インダス文明の衰退は、気候変動によって雨が降らなくなったことで都市の多くが放棄され、中心地が移動していったことが原因だとされている。再び気候変動によって雨の降る範囲が変わろうとしているのなら、それはそれで、数千年の歴史の中では「あるある」な事象と言えるのかもしれない。

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参考までに、最近のインダス文明本で面白かったやつ

インダス文明の謎: 古代文明神話を見直す (学術選書) - 長田 俊樹
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インダスの考古学 (世界の考古学) - 近藤 英夫
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インダス文明 文明社会のダイナミズムを探る - 上杉 彰紀
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