ナイルの増水はエルニーニョ/ラニーニャで決まる。地球規模の気候とその変動の歴史
まず最初に、エル・ニーニョ現象、ラ・ニーニャ現象についての説明を見てほしい。
気象庁ページ

この現象について、異常気象と結びつけて語られることが多いのだが、実は違う。1万2千年前に一時的に発生しなくなり、その後、5千年前に再び発生するようになり、以降は2-7年おきに定期的に繰り返されている地球の営みの一つだ。
…というところまではいいのだが、発生頻度の研究にナイル川の水位が使われている、という話を読んで、ん?? と思ってしまった。
なぜナイル川なのかーー
実は、エル・ニーニョ現象の発生が青ナイルの水源に降る雨の量と連動している、という研究結果が数十年前に出ていたのだった。
これは「ほほう!」と思ってしまった。しかも面白いことに、この研究ではエジプトで長年に渡って記録され続けてきたナイロメーターの計測結果が使われている。
ナイロメーターというのは川岸に作られた階段状の施設のことで、毎年夏に起きるナイルの増水量を測るためのもの。古代エジプトの時代から使われていたが、残っている記録は7世紀なかばからだそうだ。しかしそれでも、1000年以上も毎年の川の水位を記録し続けた貴重なものになる。
1000 Years of El Niño on the Nile
http://eltahir.scripts.mit.edu/news/1000-years-el-ni%C3%B1o-nile
El Niño Southern Oscillation link to the Blue Nile River Basin hydrology
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1002/hyp.7367
これらのペーパー/論文に書かれている内容を補完すると、メカニズムはこうだ。
①エル・ニーニョが発生するとインド洋の南西モンスーンが弱くなる
②モンスーンが東方に移動する
③アフリカ大陸を渡るモンスーン・トラフ(北半球、南半球の貿易風が、ほぼ東西にのびる一線上で衝突し、収束している場所)が、エチオピア上空から南方へと移動する
④モンスーン・トラフで発生するはずだった雨雲の位置もずれるため、エチオピア高原の青ナイル水源に降る雨が減る
⑤ナイル川は青ナイルからの水量で60%ほどを占めるため、雨季に水源に雨が降らないと下流へ流れる量が減る
⑥下流のエジプトでは増水季になってもナイルの水位が上がらない状況が観測される
というわけで、エジプトで記録されたナイルの増水量は、そのときにエル・ニーニョが発生していたか、発生していたらどの程度の強さだったかを、ある程度予測できる材料になる。
結果、およそ1500年の間、水位が上がらない年は平均して5年に1度くらい発生し続けていたという。
ちなみにラ・ニーニャが発生した場合は、逆に大量の雨が降って増水しすぎる現象につながるという。
ナイルの恵みは、まさかの地球規模での気候変動につながっていたのだった。
古代人たちはメカニズムまでは知らなかったが、定期的に発生する「異常」に対して、精神的な面では宗教を、実利敵な面では灌漑や水路、ため池などの技術を発達させ、柔軟に対応してきた。それが出来たからこそ生き延びられた。
現代に生きる我々も、同じようになんとかして生き抜くことが求められている。かつての人々に出来たことが、より多くの知識を持っている現代人に出来ないとはとても言えない。
気候は年ごとに変動するもの、くらいの気持ちで強く生きていきたいものです。
気象庁ページ

この現象について、異常気象と結びつけて語られることが多いのだが、実は違う。1万2千年前に一時的に発生しなくなり、その後、5千年前に再び発生するようになり、以降は2-7年おきに定期的に繰り返されている地球の営みの一つだ。
…というところまではいいのだが、発生頻度の研究にナイル川の水位が使われている、という話を読んで、ん?? と思ってしまった。
なぜナイル川なのかーー
実は、エル・ニーニョ現象の発生が青ナイルの水源に降る雨の量と連動している、という研究結果が数十年前に出ていたのだった。
これは「ほほう!」と思ってしまった。しかも面白いことに、この研究ではエジプトで長年に渡って記録され続けてきたナイロメーターの計測結果が使われている。
ナイロメーターというのは川岸に作られた階段状の施設のことで、毎年夏に起きるナイルの増水量を測るためのもの。古代エジプトの時代から使われていたが、残っている記録は7世紀なかばからだそうだ。しかしそれでも、1000年以上も毎年の川の水位を記録し続けた貴重なものになる。
1000 Years of El Niño on the Nile
http://eltahir.scripts.mit.edu/news/1000-years-el-ni%C3%B1o-nile
El Niño Southern Oscillation link to the Blue Nile River Basin hydrology
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1002/hyp.7367
これらのペーパー/論文に書かれている内容を補完すると、メカニズムはこうだ。
①エル・ニーニョが発生するとインド洋の南西モンスーンが弱くなる
②モンスーンが東方に移動する
③アフリカ大陸を渡るモンスーン・トラフ(北半球、南半球の貿易風が、ほぼ東西にのびる一線上で衝突し、収束している場所)が、エチオピア上空から南方へと移動する
④モンスーン・トラフで発生するはずだった雨雲の位置もずれるため、エチオピア高原の青ナイル水源に降る雨が減る
⑤ナイル川は青ナイルからの水量で60%ほどを占めるため、雨季に水源に雨が降らないと下流へ流れる量が減る
⑥下流のエジプトでは増水季になってもナイルの水位が上がらない状況が観測される
というわけで、エジプトで記録されたナイルの増水量は、そのときにエル・ニーニョが発生していたか、発生していたらどの程度の強さだったかを、ある程度予測できる材料になる。
結果、およそ1500年の間、水位が上がらない年は平均して5年に1度くらい発生し続けていたという。
ちなみにラ・ニーニャが発生した場合は、逆に大量の雨が降って増水しすぎる現象につながるという。
ナイルの恵みは、まさかの地球規模での気候変動につながっていたのだった。
古代人たちはメカニズムまでは知らなかったが、定期的に発生する「異常」に対して、精神的な面では宗教を、実利敵な面では灌漑や水路、ため池などの技術を発達させ、柔軟に対応してきた。それが出来たからこそ生き延びられた。
現代に生きる我々も、同じようになんとかして生き抜くことが求められている。かつての人々に出来たことが、より多くの知識を持っている現代人に出来ないとはとても言えない。
気候は年ごとに変動するもの、くらいの気持ちで強く生きていきたいものです。