温暖化と「御神渡り」、実は定期的に起きるようになったのは最近ではという話

平成に入ってから、諏訪神社の「御神渡り」が起きなくなった、という話が定期的にニュースになる。
温暖化によって湖が凍りつかなくなったからだ、という話なのだが、平安時代も温暖な時代で、現代の気温と同じかそれ以上だったと言われている。ということは平安時代も御神渡りはほとんど起きなかったのではないかと思う。

参考: これまでの気温変化めやす
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https://ieei.or.jp/2020/10/expl201012/

ただ、諏訪神社の記録がたったの570年分しかないので、過去どうだったか分からない。
…そう、気候変動を読み解くには、500年分では短すぎるのだ。というか逆に、この570年分しかないのは、御神渡りが定期的に起き始めたのがちょうど室町時代くらいだったからなのでは?という感じもする。

御神渡りは503回 記録を再整理し確認 諏訪市の八剱神社
https://www.asahi.com/articles/ASQ1K72TCQ1KUOOB002.html
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もう一度グラフのほう見てもらいたいのだが、室町時代はいちばん気温の高い時期でも現代より低く、寒冷な気候が江戸まで続く。
気温が高くなっていくのは明治以降。

リンクしたニュース記事には『「明けの海」は1843年までの400年間で27回しか記録されていないが、昭和以降の95年間で39回。温暖化や湖の環境変化が原因に挙げられている。』とあるが、記録がつけられ始める室町以前の時代、奈良時代から鎌倉時代あたりまでは一時的な寒冷化を除くとおおむね温暖な時代が続くため、毎年必ず起きるものではなく、現代同様に定例行事ではなかった可能性が高い。

時々しか起きない神秘的な現象ではあったかもしれないが、毎年記録をとるほど定期的に起きるようになったのは室町からで、現在は、それ以前の状態に戻っただけ、と言えるのではないか。



この事例でも思うのだが、地球規模の気候変化に対して500年の記録だと短すぎるのだ。あまり指標にならないっていうか、全体が見えないというか。気温の上下の1サイクルにも満たない。せめて1000年からじゃないと…。

というわけで、平安時代の諏訪神様は凍った湖はあんまり渡ってなかった可能性が高そう。というお話。