リビア砂漠で見つかる謎の土器、サハラが乾燥化する以前のウッドオイル製造器の可能性
何かを調べていたら全然別の論文が出てきたけど、エジプトのだったからとりあえず読んでみた。(いつもの)
リビア砂漠で大量に見つかる先王朝時代の謎土器について、「かつて砂漠がまだサバンナで、木材があった頃に木片を蒸し焼きにしてオイル作ってたツボなのでは」と述べて再現実験をしている話だった。
Pharaonic Pyrolysis - Activity in the Libyan Desert -Interpretation of a Dyadic Ceramic
https://d-nb.info/1233233637/34
発見されている土器はこんな感じで砂に埋もれていて、何かの工房跡っぽい感じになっている。
ナイル渓谷より西、エジプトとリビアの間のグレート・サンド・シーと呼ばれる砂漠地帯で主に見つかっていて、この辺りは古王国時代には石材や鉱物など資源を求めて歴代ファラオたちが遠征隊を繰り出していた場所。

で、この土器なにが謎かというと、いくつかのパーツに分かれていて、輪っか状のものがセットになっていること。
確かにこれは何の土器なのか分かりづらい。名前のヒエログリフ記載されてるものがあるなど、依頼主がいて組織的に生産されていたことは分かるものの、最近まで「オイルランプ…かも??」みたいな扱いだったようだ。

それが、「オイルランプじゃなくてオイル製造用の容器っぽいよ。再現実験してみたらできたよ」って話になったのが、この論文。
やり方はこうで、ツボ全体を粘土などで覆って熱が逃げないようにして、周囲に木材積み上げてそのまま蒸し焼きにするらしい。


こんなんでオイルが取れるのか?? という話だが、中学生向けの理科の実験で、割り箸を試験管で蒸し焼きにしてオイル取ってるやつがあったので、おそらく基本的なしくみはこれと同じ。木材から出たガスが急速に冷えると、どろりとしたウッドオイルが抽出される。
https://www2.nhk.or.jp/school/movie/clip.cgi?das_id=D0005401203_00000

これは、なるほどなーと思った。
サハラが乾燥化した現状では使い道が分からない、だけど先王朝時代のまだ乾燥化が進みきっておらず木が残っていた時代なら意味がわかる品。出土しなくなった理由も、完全に砂漠化して木材がなくなり、人もいなくなったからだとすれば納得はいく。
使われた木材は、かつてサハラに生えていたアカシアやタマリンドの仲間ではないか、とのこと。
あと、このオイルは香油や防腐処理に使われたはずなのだが、もしかしたら初期のミイラ作りで塗られていた樹脂もここから来ているのかもしれない。だとすれば、ナイルの民が砂漠の民だった頃からの伝統を引き継いだものがミイラ作りだった可能性もあり、歴史の繋がりが面白いなぁと思う。
****
あとおまけ
最近読んでたべつの本でたまたま見つけた、サハラの乾燥化と遺跡の変遷。

乾燥化がかなり進んだあとも、グレート・サンド・シーのあたりにはしぶとく遺跡が出現し続けているんだけど、もしかしたら最後までオアシス近辺に残っていた木材を資源として使うためだったのかなぁと思った。
リビア砂漠で大量に見つかる先王朝時代の謎土器について、「かつて砂漠がまだサバンナで、木材があった頃に木片を蒸し焼きにしてオイル作ってたツボなのでは」と述べて再現実験をしている話だった。
Pharaonic Pyrolysis - Activity in the Libyan Desert -Interpretation of a Dyadic Ceramic
https://d-nb.info/1233233637/34
発見されている土器はこんな感じで砂に埋もれていて、何かの工房跡っぽい感じになっている。
ナイル渓谷より西、エジプトとリビアの間のグレート・サンド・シーと呼ばれる砂漠地帯で主に見つかっていて、この辺りは古王国時代には石材や鉱物など資源を求めて歴代ファラオたちが遠征隊を繰り出していた場所。

で、この土器なにが謎かというと、いくつかのパーツに分かれていて、輪っか状のものがセットになっていること。
確かにこれは何の土器なのか分かりづらい。名前のヒエログリフ記載されてるものがあるなど、依頼主がいて組織的に生産されていたことは分かるものの、最近まで「オイルランプ…かも??」みたいな扱いだったようだ。

それが、「オイルランプじゃなくてオイル製造用の容器っぽいよ。再現実験してみたらできたよ」って話になったのが、この論文。
やり方はこうで、ツボ全体を粘土などで覆って熱が逃げないようにして、周囲に木材積み上げてそのまま蒸し焼きにするらしい。


こんなんでオイルが取れるのか?? という話だが、中学生向けの理科の実験で、割り箸を試験管で蒸し焼きにしてオイル取ってるやつがあったので、おそらく基本的なしくみはこれと同じ。木材から出たガスが急速に冷えると、どろりとしたウッドオイルが抽出される。
https://www2.nhk.or.jp/school/movie/clip.cgi?das_id=D0005401203_00000

これは、なるほどなーと思った。
サハラが乾燥化した現状では使い道が分からない、だけど先王朝時代のまだ乾燥化が進みきっておらず木が残っていた時代なら意味がわかる品。出土しなくなった理由も、完全に砂漠化して木材がなくなり、人もいなくなったからだとすれば納得はいく。
使われた木材は、かつてサハラに生えていたアカシアやタマリンドの仲間ではないか、とのこと。
あと、このオイルは香油や防腐処理に使われたはずなのだが、もしかしたら初期のミイラ作りで塗られていた樹脂もここから来ているのかもしれない。だとすれば、ナイルの民が砂漠の民だった頃からの伝統を引き継いだものがミイラ作りだった可能性もあり、歴史の繋がりが面白いなぁと思う。
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あとおまけ
最近読んでたべつの本でたまたま見つけた、サハラの乾燥化と遺跡の変遷。

乾燥化がかなり進んだあとも、グレート・サンド・シーのあたりにはしぶとく遺跡が出現し続けているんだけど、もしかしたら最後までオアシス近辺に残っていた木材を資源として使うためだったのかなぁと思った。