マヤ人のお塩生産力はどのくらい? 文明を支えた「塩」の力とは
古典期マヤ(いちばん人多くて栄えてた時代)の塩の生産についての論文が出ていたので、ざっくり読んでみた。
この遺跡はベリーズの南、カリブ海に面したところにある。もともと海辺にあり、現在は海水面の上昇とともに沈んでしまっている場所になる。
Household salt production by the Late Classic Maya: underwater excavations at Ta'ab Nuk Na
https://www.cambridge.org/core/journals/antiquity/article/household-salt-production-by-the-late-classic-maya-underwater-excavations-at-taab-nuk-na/0A7EFD99066A77E22EBB6B144C853EDF

ここは、いわば近隣のマヤ都市に塩を供給するための海辺の製塩所だったと考えられており、
・つぼに海水を入れて炊く
・塩田に海水を撒いて蒸発させる
という方法で塩の生産をしていたらしい。雨季と乾季のある地方なので、主に乾季にフルタイム労働していたのだろうとのこと。乾季だと海水の蒸発も早いので効率的だったのだそうだ。(もしかしたら年間通して活動していた可能性もあるらしい)
で、興味深いのは生産量。
大規模な工場ではなく、各ご家庭が作っているようなレベルでもかなりの量の塩を生産出来たらしい。
遺跡と同じ方法で塩を生産して、2 日間で 113.4kg の塩が出来る。
乾季は4ヶ月、週6日の労働で5,443kg
10家族で生産をすると54,432kg
ちなみに人間が生きるのに必要な塩の量は1人あたり1日6gなので、約24,000人分/年 が確保出来たことになる。
海辺にホームメイドで塩作る人が10家族いれば、近隣の都市に塩が行き渡るのかぁ…けっこう効率いいな…という感じ。
なお、以前の論文で、この塩は「通貨代わりにも使われていたのでは」というのがあった。
塩を生産するのは大変だけど、もしかしたら、当時としてはすっごい儲かる職業だったのかもしれない。
古代マヤでは塩も貨幣代わりに使われていたのでは? という話
https://55096962.seesaa.net/article/202103article_20.html
で、このマヤの資料がなんで気になるかというと、古代エジプトの塩生産に関する資料がどこにもないからなのだ…。
ピラミッドを作るためには、大量のガテン系労働者が必要。つまりは大量の塩が必要。塩ないと人間バテちゃって動けない。
大ピラミッド作る時に集めた大量の労働者のために塩を供給する専門の物流ルートは絶対あったはずなのだが、誰もそれを調べてないっぽくて論文出て来ないのだ。
ピラミッドに続く塩の道を探して…
https://55096962.seesaa.net/article/201511article_11.html
古代エジプト人が利用した塩の情報: ピラミッドに続く塩の道
https://55096962.seesaa.net/article/201511article_14.html
エジブトは北部で海に面しているので。ナイルデルタなら製塩は出来る。
マヤのように木材は豊富ではないが、雨季はない。一年中カラッカラなので、おそらく塩田方式で水を蒸発させるのがメインの作り方をしていたのだと思う。
揚げ浜式でやれば、けっこう効率的に塩は作れそうな気がする。
参考: 揚げ浜式
https://enden.jp/making_salt/
とりあえずなんか、大規模な遺跡なくても1万人分くらいなら塩作れそうだなってわかったので、自分の中での疑問が一つ解消したかなって感じですわ!
この遺跡はベリーズの南、カリブ海に面したところにある。もともと海辺にあり、現在は海水面の上昇とともに沈んでしまっている場所になる。
Household salt production by the Late Classic Maya: underwater excavations at Ta'ab Nuk Na
https://www.cambridge.org/core/journals/antiquity/article/household-salt-production-by-the-late-classic-maya-underwater-excavations-at-taab-nuk-na/0A7EFD99066A77E22EBB6B144C853EDF

ここは、いわば近隣のマヤ都市に塩を供給するための海辺の製塩所だったと考えられており、
・つぼに海水を入れて炊く
・塩田に海水を撒いて蒸発させる
という方法で塩の生産をしていたらしい。雨季と乾季のある地方なので、主に乾季にフルタイム労働していたのだろうとのこと。乾季だと海水の蒸発も早いので効率的だったのだそうだ。(もしかしたら年間通して活動していた可能性もあるらしい)
で、興味深いのは生産量。
大規模な工場ではなく、各ご家庭が作っているようなレベルでもかなりの量の塩を生産出来たらしい。
One family studied at Sacapulas produced 113.4kg of salt in two days (Reina & Monaghan Reference Reina and Monaghan1981). Working six days a week, the family could make 340kg, or 5443kg of salt in the four-month dry season. The Sacapulas salt works had 50 kitchens in operation simultaneously during the twentieth century. Applying these figures to the Paynes Creek Salt Works, assuming 10 kitchens were in simultaneous use, salt yields would have been 3400kg per week, or 54 432kg during the four-month dry season (McKillop & Aoyama Reference McKillop and Aoyama2018; McKillop Reference McKillop2019, Reference McKillop2021). Estimating consumption of 6g of salt per person per day (or 2.3kg annually) (Adshead Reference Adshead1992: 191), 10 kitchens could have provided enough dietary salt for 24 000 people.
遺跡と同じ方法で塩を生産して、2 日間で 113.4kg の塩が出来る。
乾季は4ヶ月、週6日の労働で5,443kg
10家族で生産をすると54,432kg
ちなみに人間が生きるのに必要な塩の量は1人あたり1日6gなので、約24,000人分/年 が確保出来たことになる。
海辺にホームメイドで塩作る人が10家族いれば、近隣の都市に塩が行き渡るのかぁ…けっこう効率いいな…という感じ。
なお、以前の論文で、この塩は「通貨代わりにも使われていたのでは」というのがあった。
塩を生産するのは大変だけど、もしかしたら、当時としてはすっごい儲かる職業だったのかもしれない。
古代マヤでは塩も貨幣代わりに使われていたのでは? という話
https://55096962.seesaa.net/article/202103article_20.html
で、このマヤの資料がなんで気になるかというと、古代エジプトの塩生産に関する資料がどこにもないからなのだ…。
ピラミッドを作るためには、大量のガテン系労働者が必要。つまりは大量の塩が必要。塩ないと人間バテちゃって動けない。
大ピラミッド作る時に集めた大量の労働者のために塩を供給する専門の物流ルートは絶対あったはずなのだが、誰もそれを調べてないっぽくて論文出て来ないのだ。
ピラミッドに続く塩の道を探して…
https://55096962.seesaa.net/article/201511article_11.html
古代エジプト人が利用した塩の情報: ピラミッドに続く塩の道
https://55096962.seesaa.net/article/201511article_14.html
エジブトは北部で海に面しているので。ナイルデルタなら製塩は出来る。
マヤのように木材は豊富ではないが、雨季はない。一年中カラッカラなので、おそらく塩田方式で水を蒸発させるのがメインの作り方をしていたのだと思う。
揚げ浜式でやれば、けっこう効率的に塩は作れそうな気がする。
参考: 揚げ浜式
https://enden.jp/making_salt/
とりあえずなんか、大規模な遺跡なくても1万人分くらいなら塩作れそうだなってわかったので、自分の中での疑問が一つ解消したかなって感じですわ!