ナミブ砂漠のフェアリー・サークル、シロアリ説も否定。最後に残ったのは「植物界の水利権」

ナミブ砂漠には、植物が生えてこない丸い地面が点在しており、半世紀も前から色んな学説が出ては消えている状態で、どうやって出来るのかが謎のままとなっている。
そんな中、近年、一つずつ仮説が否定されていっている

まずはこれ、「有毒な植物が他の植物の成長を阻害している」説の否定。

妖精は砂漠に踊る。ナミブ砂漠に出来る謎の「フェアリー・サークル」、有毒植物説は否定される
https://55096962.seesaa.net/article/202106article_19.html

今回はシロアリによる食害説が否定されている。
2020年から2022年にかけて、フェアリーサークルのたくさんある地域で、サークルに仕掛けた測定器を使い、30分間隔で土壌水分量を記録したのだ。

*記事
Secrets of Namibia's fairy circles demystified: Plants self-organize
https://phys.org/news/2022-10-secrets-namibia-fairy-circles-demystified.html

*元論文
Plant water stress, not termite herbivory, causes Namibia’s fairy circles
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S1433831922000403?dgcid=author

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ナミブ砂漠では雨はほとんど降らないが、この観測中に2度ほど雨が降ったという。
で、重要なのは、降雨直後には、このサークル内部にも草が生えていた ということだ。
つまり、これまで存在した「有毒植物のせい」とか「地下から有毒ガスが上がってくる」というような、そもそも草が生えることの出来ない場所である、という説は否定される。

また、サークル内に生えた植物は、生えてから10日ほどで枯れてしまった ことから、根を食べる生き物がやってくる暇もない。シロアリの痕跡もなく、「植物が枯れるのは生物の活動によるものではない」と言うことが出来る。

では、なぜサークル内だけ草が枯れてしまうのか。

実は、サークル内部では、降雨後に急速に水分が失われていた。
サークルの周囲に生えている草が伸ばした根っこが水を吸い取りまくって、水分の空白地帯が生まれているため、そこであとから生えた草は育つことが出来ないのだという。
必死に根っこを伸ばしても、先行者有利で、サークルの周囲で群れになって水分集めまくってる集団に勝てない。これが植物界の水利権というやつですよ…。

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つまりは、イネ科の植物が結託して周囲から効率的に水分をかき集める過程で、水分が枯渇するスポットが定期的にできてしまう、という話なのだが、おそらくそれ以外にも複合的な要因(水を含みやすい土壌かどうか、など)はあると思われるので、今後の研究でさらに詳細が出てくることを待ちたい。

また、かつてフェアリーサークルの中にはユーフォルビアしか生えていない、という研究が出たことがあったが、水利権がサークルの出来るメカニズムだとすると、渇水の状態で最終的に生き残れるのがユーフォルビアだった、ということなのかもしれない。
そのあたりの過去研究振り返りもあるといいな。


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ちなみに、オーストラリアの「フェアリーサークル」のほうは発生メカニズムがある種の微生物によるものではないかというアタリがついている。
植物の種類や気象条件によって発生メカニズムが全然違う、というのは面白い。自然界にはまだまだたくさんの謎がある。知れば知るほど不思議が増えていく、この世界。

https://gigazine.net/news/20210420-plant-fairy-circle/