知恵の象徴とされるフクロウ、実は知能はそれほど高くない。鳥類の脳と進化のサイエンス
フクロウといえば、ギリシャ神話では女神アテナのお使いとされ、知恵の象徴として扱われることの多い鳥である。
しかし現実世界では、「賢い鳥」といえばカラスやオウムの仲間で、フクロウがランキングに上がることはない。かの鳥が「賢い」とされるのは、主に神話伝承の世界なのだ。
先に内容をまとめてしまうと、以下のような内容になる。
●フクロウの頭は大きいが、ほぼ目のスペースに費やしている。脳も視覚情報の処理に使っている。
●思考や認知といった部分の能力は、それほど高くない
●フクロウやタカ、ハヤブサなど体格がよく、結果として頭も大きくなっている鳥たちは、狩猟特化で体を強化して、脳の多くを運動能力の維持に使っている。
つまりは脳筋
そう、まさかの脳筋である。
Bird Brain Evolution
https://www.americanscientist.org/article/bird-brain-evolution
※鳥類の脳の進化についての記事
Are Owls Smart? (Comprehensive Answer)
https://birdfact.com/articles/are-owls-smart
※こちらはフクロウにまつわる神話に詳しい
日経サイエンス別冊227
鳥のサイエンス
https://www.nikkei-science.com/sci_book/bessatu/51227.html
※日本語記事をまとめたムック本
最近の研究では、カラスやオウムは脳のサイズのわりにニューロンが密集していて、そのために「賢い」のだと分かっていているのだという。
鏡に映る自分の姿を認識する、数を数える、道具を使う、パズルをとく、といった知能は、既に多く研究されている。しかし、鳥の種類によってその能力は大きく異なっている。
「鳥の知能」には、実は種類ごとの差があるのだ。
たとえば、暗がりで目の前を高速でよぎる小動物を、一瞬の情報から特徴や方向、距離などを瞬時に判断できるような視覚情報の処理能力も、脳の働きには違いない。
そしてどうやらフクロウは、人間基準の認知能力という意味での「賢さ」ではなく、運動能力と結びついた動体視力や身体能力などのほうに進化の労力を傾けた、正しく「脳筋的な賢さ」を持つ方向の鳥のようなのだ。
↑脳の大きさ比較。赤い線のある鳥が大きめ。この中でも、フクロウはタカなどと同じく、運動能力、特に視覚情報の処理に脳リソースを振り分けた種類となる。つまり神話で「フクロウが知能のありそうな眼差しでじっと見つめてくる」というのは正解なのだが、見つめたあとの情報処理としては「襲って食える獲物かどうか」とか「お肉おいしそう」とかである可能性が高い。
とはいえ、それで生存競争に勝てているのだから、本人たちからすれば「何か問題が?」と言うに違いない。
鳥類は、人間よりはるか以前から栄えてきた、今も栄え続けている存在だ。
人間よりはるかに優れた肺機能や身体能力と、体のサイズのわりに長い寿命を持ち、行動力や適応力、繁殖能力で世界中に広がっている。人間からすると「鳥頭」に思えるところもありつつ、「侮れない」と思える時もある。
知能の進化の方向性を一方向に絞らず、様々な可能性を模索して、脳筋特化の種類さえ生み出す多様性こそ、鳥類の強みなのかもしれない。
しかし現実世界では、「賢い鳥」といえばカラスやオウムの仲間で、フクロウがランキングに上がることはない。かの鳥が「賢い」とされるのは、主に神話伝承の世界なのだ。
先に内容をまとめてしまうと、以下のような内容になる。
●フクロウの頭は大きいが、ほぼ目のスペースに費やしている。脳も視覚情報の処理に使っている。
●思考や認知といった部分の能力は、それほど高くない
●フクロウやタカ、ハヤブサなど体格がよく、結果として頭も大きくなっている鳥たちは、狩猟特化で体を強化して、脳の多くを運動能力の維持に使っている。
つまりは脳筋
そう、まさかの脳筋である。
Bird Brain Evolution
https://www.americanscientist.org/article/bird-brain-evolution
※鳥類の脳の進化についての記事
Are Owls Smart? (Comprehensive Answer)
https://birdfact.com/articles/are-owls-smart
※こちらはフクロウにまつわる神話に詳しい
日経サイエンス別冊227
鳥のサイエンス
https://www.nikkei-science.com/sci_book/bessatu/51227.html
※日本語記事をまとめたムック本
最近の研究では、カラスやオウムは脳のサイズのわりにニューロンが密集していて、そのために「賢い」のだと分かっていているのだという。
鏡に映る自分の姿を認識する、数を数える、道具を使う、パズルをとく、といった知能は、既に多く研究されている。しかし、鳥の種類によってその能力は大きく異なっている。
「鳥の知能」には、実は種類ごとの差があるのだ。
たとえば、暗がりで目の前を高速でよぎる小動物を、一瞬の情報から特徴や方向、距離などを瞬時に判断できるような視覚情報の処理能力も、脳の働きには違いない。
そしてどうやらフクロウは、人間基準の認知能力という意味での「賢さ」ではなく、運動能力と結びついた動体視力や身体能力などのほうに進化の労力を傾けた、正しく「脳筋的な賢さ」を持つ方向の鳥のようなのだ。
↑脳の大きさ比較。赤い線のある鳥が大きめ。この中でも、フクロウはタカなどと同じく、運動能力、特に視覚情報の処理に脳リソースを振り分けた種類となる。つまり神話で「フクロウが知能のありそうな眼差しでじっと見つめてくる」というのは正解なのだが、見つめたあとの情報処理としては「襲って食える獲物かどうか」とか「お肉おいしそう」とかである可能性が高い。
"Research delving into the finer partitioning of the owl brain shows its size is due in large part to expansion of brain regions dealing with visual acuity rather than higher reasoning."
とはいえ、それで生存競争に勝てているのだから、本人たちからすれば「何か問題が?」と言うに違いない。
鳥類は、人間よりはるか以前から栄えてきた、今も栄え続けている存在だ。
人間よりはるかに優れた肺機能や身体能力と、体のサイズのわりに長い寿命を持ち、行動力や適応力、繁殖能力で世界中に広がっている。人間からすると「鳥頭」に思えるところもありつつ、「侮れない」と思える時もある。
知能の進化の方向性を一方向に絞らず、様々な可能性を模索して、脳筋特化の種類さえ生み出す多様性こそ、鳥類の強みなのかもしれない。