エジプト神話における神々の誕生日設定とは。/誕生日=守護する日

神様に誕生日が設定されている神話は、あまりみかけない。しかしエジプト神話では、一部の神々の誕生日が暦と密接に結びついていた。
たとえば太陽神ラーの場合、「メスト・レー(ラーの誕生)」という月名がある。これは夏至を含む真夏の時期で、太陽が最も高くなる日=ラーの誕生日、と設定した思想があったのだと思われる。

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カレンダー
http://www.moonover.jp/bekkan/today/12.htm

しかし、太陽神ラーの誕生日とされる日はもう2つある。
一つは元旦で、古代エジプトはナイルの増水開始を一年の始まりとしていたため、だいたい7月半ば頃にくる。夏至とは1ヶ月ほどずれている。

もう一つは冬至で、ラーが老いて光が弱まったのち、母なる天の女神ヌトの体を通り抜けて新たに誕生する、という思想から、冬至は太陽の再生と復活の区切りとされている。

なんと三つも誕生日候補があるのだが、エジプト神話は地域や時代ごとに採用している教義が異なるのでそういうものである。
古代エジプトの歴史は三千年あるが、メジャーな神様はその初期から存在しており、三千年の信仰暦があるので、そりゃ途中で教義が変わっても仕方ないというものである。


また、誕生日の指定がある神としては、「イシスの息子ホルス」の1/6または1/7というものがある。
聖母子像は息子ホルスを抱くイシス女神の姿を元に作られたテンプレなのだが、「神の子」であるホルスの誕生日が1/6だったことから、エジプトでの当初のキリストの誕生日=クリスマスも(現在のグレゴリオ暦で)1/6と設定されていたという。

これは現在でもコプト教のクリスマスの日付として採用されている。ちなみにコプト暦は基本、ユリウス暦になっており、現在ではグレゴリオ暦より13日進んでいることになる。1/6から13日引くと12/25頃になるので、古代には現代のクリスマスと重なっていたことになる。


ちなみにホルス神にはもうひとつ誕生日の候補がある。
これは、天の女神ヌトと地の神ゲブの五人の子供たちが、一年の終わりに付け足された予備の五日間で生まれたという神話にちなむ。
古代エジプトの暦は30日x12ヶ月+5日(予備日)となっており、一年の終わりの五日がそれぞれ、オシリス、セト、ホルス(大ホルス)、イシス、ネフティスの誕生日になっている。
一年の始まりは、ナイルの増水の起きる夏、7/19ごろのため、そこから逆算して5日間がそれぞれの誕生日となる。


これらメジャーな神々以外は、誕生日がはっきりしていないが、おおよそ「その神の祭りのあるシーズンが誕生日」と設定されていると思われる。神の誕生日=その神の守護する日 という思想があったようだからだ。また、豊穣の神などは実りの季節に誕生日が設定されており、穀物を捧げる=誕生日の贈り物、のようになっていた可能性もある。ただし、祭りに関する記録がそれほど大量に残っているわけでもないので良くわからないことも多い。

なお、有名な神の誕生日と重なっていない日にも、360日すべてに守護神というか担当する神がいる。(残り5日は先に上げた天と地の子供たちが担当)
これは、「夜空の一周360度」の概念と関係している。

一周の角度はなぜ360度になったのか。という話を古代エジプトの棺窓から
https://55096962.seesaa.net/article/201901article_11.html

10日ごとに入れ替わる星の組み合わせ「デカン」が、それぞれの週を守護する担当の星(神)たちとなっている。
1ヶ月が3週間なので、デカンは1年ぶん36組設定されている。
またこれ以外にも、昼と夜をそれぞれ12時間ごとに等分し、それぞれの時間ごとに「昼の○時間目=xx神」というような時間担当の神もいた。

これら時間や日ごとの神々の上位に、その日が誕生日のえらい神様が守護担当につく。という感じで、サポートの空白がないのだ。エジプト神話の神々のシフト制は、実によく出来ていると言えるかもしれない。