最近流行り(・・・)の遺物返還。アメリカからエジプトへ「緑の棺」が返還される

ここ数年でやたら目につくようになった、エジプトで盗掘された遺物の返還劇。
今回はヒューストン自然科学博物館で展示されていた「緑の棺」が違法に持ち出されたものと発覚、エジプトへ返還されることになった。末期王朝時代の神官、アンク・エン・マアト(Ankhenmaat)のもので、おそらく15年前ごろにアブ・シールあたりで盗掘されたものだろうという。

Egypt repatriates looted ancient Green Coffin sarcophagus from US
https://www.aljazeera.com/news/2023/1/2/egypt-repatriates-looted-ancient-green-coffin-sarcophagus-from-us

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アブ・シールといえば、2011年の政変以降ものすごい勢いで盗掘されまくっていることが発覚した地域。棺や装飾品だけ巻き上げてミイラは砂漠に捨てていくので、砂漠が骨だらけになっているという衝撃的な写真が公開されて世の中の学者やマニアに絶望を与えたこともあった。
そうして中身を捨てて奪った棺の一つかもしれない、ということだ。

Blood & Gold: Children Dying As Egypt's Treasures Are Looted
https://www.livescience.com/55687-children-dying-in-egypt-looting.html

※リンク先の記事に、無惨に盗掘された砂漠や、破壊されたミイラの写真などがある。

しかもこのニュース、どうして発覚したかというと、「メトロポリタン美術館に金の棺を売ったのと同じ組織が関与してたから」だという。
2019年に返還された時のニュースは、ここでも取り上げていた。

メトロポリタン美術館、詐欺に遭う。
https://55096962.seesaa.net/article/201902article_23.html

つまりは組織側の取引履歴から追いかけて見つけたわけで、展示してる美術館・博物館側は遺物の来歴をチェックしていない or チェック出来ない ということである。これはなかなか衝撃的な事実。遺物って世紀に持ち出されているか、とか、いつどこで発掘されたのか、とか、誰が寄付したのか、といった来歴があるのが普通なんだけど、それをチェックしていないか、来歴不明でも特に気にしていない。
出された品が本物か偽物か、いつの時代のものかしか見ていない…。

これの何がまずいかというと、「買うやつがいるから盗掘する」という風潮を助長してしまっているところ。またはテロ組織などに不正に大金を流してしまっているところ。なんかもうツッコミどころが多すぎて頭を抱える。
ISを倒す名目で大金投入して軍隊投入してたアメリカさんのお膝元で、博物館や個人コレクターがそのテロ組織に遺物購入の名目で資金を渡してた可能性もあるとか、灯台下暗しとはこのこと。

最近やたらニュースになってる遺物の不正取引の発覚や返還劇、コレクターや博物館のリテラシーが上がったわけではなさそう、というのが辛い。なんかまだ他にも隠れてる業者はいそうなんだよなあ。どうなることやら。