真珠の輝きの影に隠れた限りなく深い闇。「真珠と大航海時代」
なんとなーく読み始めて闇の深さに泣いた、そんな本である。
16世紀は真珠交易の時代で、大航海時代に新たに進出した海域での真珠の大量採取が行われていた、という話なのだが、大航海時代のお約束として奴隷や強制布教などヨーロッパ史の闇が絡む。わりと胸糞な記述もあるので、勉強にはなるがあまり楽しくは読めない。
真珠と大航海時代: 「海の宝石」の産業とグローバル市場 - 山田 篤美
そもそも真珠が大量に採れる海域というのが世界でも限られていて、五箇所しかないという。スペインとポルトガルが抑えたのは、そのうち三ヶ所。スペインがカリブ海、ポルトガルがペルシャ湾とインド洋。後発のイギリスやオランダは彼らほど独占は出来なかった。
ちなみに残りは中国のトンキンと日本の西日本で、ヨーロッパ列強では支配出来なかった。これは距離的に遠すぎたことや、現地政府が強固で割り込みが出来なかったことなどが関係していると思われる。
で、真珠採取のやり方なのだが、文化レベルが当事のヨーロッパから見てそれほど高くなかったカリブ海では、単純に武力制圧をして人狩りで集めた労働者を脅して海に潜らせて貝を取らせる方法。酷使しすぎて人が死んでもお構いなしで、原住民がほぼ死に絶えるような状態になってもアフリカから奴隷を投入して貝が枯渇しそうに成るくらいまで取らせる。
真珠が高く売れるのに対し奴隷の値段はさほど高くないので、こういう無茶が出来たのである。そうして運ばれた真珠が16世紀以降のきらびやかなジュエリーとして残されている。
なんていうか…真珠を身に着けた貴婦人の肖像画や王家のジュエリーを見る目が変わりそうな話である…。
対して、ペルシャ湾やインドは文化レベルも高い。そうするとポルトガルのとった戦略は「まず布教」である。キリスト教を布教して、「愛を持って接する」ことで信頼を勝ち得て都合の良い労働者を確保する。天国に行けるからと真珠を喜捨させる。
現地のイスラム教徒など別の宗教を信仰する勢力との軋轢も生まれるが、そこは植民地に武装した戦力を置いておくことで解決する。
日本の場合も似た感じで布教はされていたのだが、統一政府があり、布教を禁止出来たことが大きかった。また多民族国家でも無かったため、ある部族だけ離反するという状況でもなかった。
スペインやポルトガルは、こうして他国に先んじて進出した先で、真珠の産地を押さえて莫大な富を手にしていたわけだ。
一級品の真珠はヨーロッパに送り、二級品の真珠はインドや中国に売りつけるというグローバル交易のやり方なども、まぁ奴隷よりはマシかなと思うけどそれにしてもいやらしいやり方である…。
大航海時代は本当に、人間の闇を覗き込むような時代だなぁとしみじみ思うのであった。
16世紀は真珠交易の時代で、大航海時代に新たに進出した海域での真珠の大量採取が行われていた、という話なのだが、大航海時代のお約束として奴隷や強制布教などヨーロッパ史の闇が絡む。わりと胸糞な記述もあるので、勉強にはなるがあまり楽しくは読めない。
真珠と大航海時代: 「海の宝石」の産業とグローバル市場 - 山田 篤美
そもそも真珠が大量に採れる海域というのが世界でも限られていて、五箇所しかないという。スペインとポルトガルが抑えたのは、そのうち三ヶ所。スペインがカリブ海、ポルトガルがペルシャ湾とインド洋。後発のイギリスやオランダは彼らほど独占は出来なかった。
ちなみに残りは中国のトンキンと日本の西日本で、ヨーロッパ列強では支配出来なかった。これは距離的に遠すぎたことや、現地政府が強固で割り込みが出来なかったことなどが関係していると思われる。
で、真珠採取のやり方なのだが、文化レベルが当事のヨーロッパから見てそれほど高くなかったカリブ海では、単純に武力制圧をして人狩りで集めた労働者を脅して海に潜らせて貝を取らせる方法。酷使しすぎて人が死んでもお構いなしで、原住民がほぼ死に絶えるような状態になってもアフリカから奴隷を投入して貝が枯渇しそうに成るくらいまで取らせる。
真珠が高く売れるのに対し奴隷の値段はさほど高くないので、こういう無茶が出来たのである。そうして運ばれた真珠が16世紀以降のきらびやかなジュエリーとして残されている。
なんていうか…真珠を身に着けた貴婦人の肖像画や王家のジュエリーを見る目が変わりそうな話である…。
対して、ペルシャ湾やインドは文化レベルも高い。そうするとポルトガルのとった戦略は「まず布教」である。キリスト教を布教して、「愛を持って接する」ことで信頼を勝ち得て都合の良い労働者を確保する。天国に行けるからと真珠を喜捨させる。
現地のイスラム教徒など別の宗教を信仰する勢力との軋轢も生まれるが、そこは植民地に武装した戦力を置いておくことで解決する。
日本の場合も似た感じで布教はされていたのだが、統一政府があり、布教を禁止出来たことが大きかった。また多民族国家でも無かったため、ある部族だけ離反するという状況でもなかった。
スペインやポルトガルは、こうして他国に先んじて進出した先で、真珠の産地を押さえて莫大な富を手にしていたわけだ。
一級品の真珠はヨーロッパに送り、二級品の真珠はインドや中国に売りつけるというグローバル交易のやり方なども、まぁ奴隷よりはマシかなと思うけどそれにしてもいやらしいやり方である…。
大航海時代は本当に、人間の闇を覗き込むような時代だなぁとしみじみ思うのであった。