誰も読めない暗号文を解読してみたら…。スコットランド女王メアリーの暗号文書が発見される
スコットランド女王メアリー、16世紀に生きた人物。
同時代にイングランド女王エリザベスがおり、血統的にメアリーもイングランド女王たる資格を持っていたためエリザベスを廃して自らが玉座につこうと画策したこともある人物。(結局はそれが原因で処刑されてしまう)
二人の女王のライバル関係をテーマにした映画も近年公開されていたが、彼女をどう描くかは作家の好みによって大きく変わる。
自分の解釈では、メアリーは「生まれつきの高貴な血筋だけあって感情的でわがままな女性」。出来るだけ公平な見方をしようとすれば、エリザベスのほうは亡命してきたメアリーを限界まで我慢して養っていたようにも思える。
そんな彼女が、イングランドで幽閉されていた時代にフランス(最初の夫の国である)に向けて送っていた数々の手紙が発見された。
それもフランス国立図書館が公開していたデジタルデータの中に普通に紛れ込んでいたというから驚きだ。
誰も読めず、最初はメアリーのものだともわからなかったという。
100年ぶりの大発見 数奇な人生を歩んだメアリーの暗号を解く
https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/23/021000071/?P=1
この件で、記事内でも少し触れられている論文はこちらである。解読の詳しい手法が載っている。
Deciphering Mary Stuart’s lost letters from 1578-1584
https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/01611194.2022.2160677?src=
解読された手紙は57通あり、ほとんどが駐英フランス大使のミシェル・ド・カステルノー宛、2通はヘンリー三世のスコットランドへの使者、ド・ラ・モテ=フェネロン宛のものだという。興味深いことに、手紙にはすべて暗号で月日が記載されておれ、解読されたことによってメアリーが幽閉中にいつどんな手紙を出したかが事細かに追えるようになった。
つまりは、これまであまり資料の無かった期間も含め、処刑に至るまでの日々がより鮮明になったということだ。
一部は解読後の文章がすでに知られているものだったらしいのだが、残りは全く知られていないもの。
16世紀のイングランド史やスコットランド史をやってる人たち、突然の大量の史料供給で溺れてないといいけどね…。
暗号は念入りに作られており、もとの文章をぱっと見るだけだと何語かすらも分からない。実際、これは解読されるまではイタリア語として分類されていたそうだ。
これを、元言語を仮定して、どの記号がどのアルファベットに該当するか当てはめて膨大な量のパターンを試行する。
意味のある単語が出現したのがフランス語で、ここから記号とアルファベットの突き合わせが進んだ。
で、単純にアルファベットを記号に置き換えるだけではなく、人物名や地名の一部なども専用の記号を設定して置き換える。
こうして解読して出来上がった表がこういう感じだ。一つのアルファベットを複数の記号に置き換えているのは、文字の出現率や並びのパターンで解読されることを防ぐためだろう。ずいぶんと洗練されたやり方だが、暗号対応表がないと解読がキツい。
実際、これらの手紙の一部は、暗号表や解読後の平文の手紙がフランス大使館から流出することでエリザベス1世の陣営にもバレてしまったといわれる。パスワードを複雑にしすぎると覚えられずにパスワードをメモに書いちゃう奴が出て結局意味がなくなる、現代と同セキュリティホールである。
そして、こんなヤバめの機密文書を処分もせずに現代まで残しちゃったのはどういうことなのフランス大使館(笑)
謎も残るが、そのへんはきっとこれから中世史学者が頑張って本にしてくれるに違いない。お待ちしておりますよ。
同時代にイングランド女王エリザベスがおり、血統的にメアリーもイングランド女王たる資格を持っていたためエリザベスを廃して自らが玉座につこうと画策したこともある人物。(結局はそれが原因で処刑されてしまう)
二人の女王のライバル関係をテーマにした映画も近年公開されていたが、彼女をどう描くかは作家の好みによって大きく変わる。
自分の解釈では、メアリーは「生まれつきの高貴な血筋だけあって感情的でわがままな女性」。出来るだけ公平な見方をしようとすれば、エリザベスのほうは亡命してきたメアリーを限界まで我慢して養っていたようにも思える。
そんな彼女が、イングランドで幽閉されていた時代にフランス(最初の夫の国である)に向けて送っていた数々の手紙が発見された。
それもフランス国立図書館が公開していたデジタルデータの中に普通に紛れ込んでいたというから驚きだ。
誰も読めず、最初はメアリーのものだともわからなかったという。
100年ぶりの大発見 数奇な人生を歩んだメアリーの暗号を解く
https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/23/021000071/?P=1
この件で、記事内でも少し触れられている論文はこちらである。解読の詳しい手法が載っている。
Deciphering Mary Stuart’s lost letters from 1578-1584
https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/01611194.2022.2160677?src=
解読された手紙は57通あり、ほとんどが駐英フランス大使のミシェル・ド・カステルノー宛、2通はヘンリー三世のスコットランドへの使者、ド・ラ・モテ=フェネロン宛のものだという。興味深いことに、手紙にはすべて暗号で月日が記載されておれ、解読されたことによってメアリーが幽閉中にいつどんな手紙を出したかが事細かに追えるようになった。
つまりは、これまであまり資料の無かった期間も含め、処刑に至るまでの日々がより鮮明になったということだ。
一部は解読後の文章がすでに知られているものだったらしいのだが、残りは全く知られていないもの。
16世紀のイングランド史やスコットランド史をやってる人たち、突然の大量の史料供給で溺れてないといいけどね…。
暗号は念入りに作られており、もとの文章をぱっと見るだけだと何語かすらも分からない。実際、これは解読されるまではイタリア語として分類されていたそうだ。
これを、元言語を仮定して、どの記号がどのアルファベットに該当するか当てはめて膨大な量のパターンを試行する。
意味のある単語が出現したのがフランス語で、ここから記号とアルファベットの突き合わせが進んだ。
で、単純にアルファベットを記号に置き換えるだけではなく、人物名や地名の一部なども専用の記号を設定して置き換える。
こうして解読して出来上がった表がこういう感じだ。一つのアルファベットを複数の記号に置き換えているのは、文字の出現率や並びのパターンで解読されることを防ぐためだろう。ずいぶんと洗練されたやり方だが、暗号対応表がないと解読がキツい。
実際、これらの手紙の一部は、暗号表や解読後の平文の手紙がフランス大使館から流出することでエリザベス1世の陣営にもバレてしまったといわれる。パスワードを複雑にしすぎると覚えられずにパスワードをメモに書いちゃう奴が出て結局意味がなくなる、現代と同セキュリティホールである。
そして、こんなヤバめの機密文書を処分もせずに現代まで残しちゃったのはどういうことなのフランス大使館(笑)
謎も残るが、そのへんはきっとこれから中世史学者が頑張って本にしてくれるに違いない。お待ちしておりますよ。