ヒトは道具を使うがゆえにヒトではあらず。ホモ属以外の近縁種も道具を使っていた可能性が高まる

これはたぶん、これから盛り上がるだろうなー人類史の研究してる学者さん乙だなー。って思ったのでメモしておく。
かつては、現生人類の祖先の登場とともに使われ始めたと考えられてきた初期の石器が、実は現生人類につながらない他の近縁種でも作れて使われていた可能性が高くなったという話題である。

Did more than one ancient human relative use early stone tools?
https://www.science.org/content/article/one-ancient-human-relative-use-early-stone-tools

300万年前の「意外な」石器を発見、作者はヒト属でない可能性
https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/23/021300076/?P=1

こちらはパラントロプスという、割割には繋がらない別種のヒトの近縁種(ホミニン)である。
ガタイがよく、顎が発達していることから道具などは使わずに噛みつきで攻撃でき、食べ物も噛みちぎれたはずと考えられてきた。しかし今、彼らもまた道具を使えた可能性が示唆されている。
年代的に、そして場所的に、彼らが使ったかもしれない道具が発見されているからだ。

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アフリカで発見される初期の石器の一つ、オルドワン石器はこういう形状。
初期の人類が使ったものではとされてきたが、もしかしたらこれこそ、類人猿の石器なのかもしれない。というか、ここから発展させることが出来たか、そうならなかったかが、現生人類に繋がるホモ属と他の近縁種の違いだった可能性も出てくる。

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もしホモ属以外も石器を作れたことになると、どうなるか。
今まで「石器=ホモ属」だったので、石器が見つかったらそこにホモ属がいたのだと無条件に仮定していたものが崩れる。つまりは石器が出てきたことをもってホモ属の移住や拡大を語れなくなってしまう。
たとえばアラビア半島から石器の出土や、南アメリカから発掘される石器めいたものが、ヒトの進出の証拠にならなくなってしまうのである。

これはなかなかにカオス。ネアンデルタールも石器作れたしある程度の文化を持ってた、ってわかった時点で、「じゃあヒトは何が優れてたの、なんで生き残れたの」ってのが分からなくなってたんだけど、その前段階として、同じように道具を使えてたのにアウストラロピテクス・アファレンシスやパラントロプスがいなくなっちゃったの何でなん? というのも分からなくなってしまうのだ。

…いや、ていうかマジこれ、ただの「運」で生き残ってたりしない…?
ていうか、知能とか道具の利用とか、実はあんま生存に関係ない要素だったりするのでは。サピエンス #とは


これからどっち方向に転がるかは分からないけど、とりあえず、専門家同士で学説で殴り合え―。
外野から眺めるのは楽しい。研究続報お待ちしてます。