ブルーチーズを食べると変な夢を見るか? →科学的エビデンスのない都市伝説だった
英国のブルーチーズ、スティルトン。食べると変な夢を見る、とネットで話題になってるのを見かけたことがあり、その時は「ふーん」で流していた。てっきりカビが幻覚作用でも持ってるんだろう、くらいに考えていたのだが…ふと気になってちゃんと調べてみたところ、話が全然違っていた。
結論から言うと、近年話題になっている「ブルーチーズと夢」の話は、販促用に流布された噂だった。

最近出回っているこの話では、「実験で実証された」のような話が書かれているのだが、誰の何の論文でどう検証されたのか具体的に出て来ない。まずそこから探したのだが、そもそもの出どころを追っていくと、British Cheese Boardという組織(現在は解体済)が2005年に販促目的で出した査読なし論文にたどり着いた。
この論文は「Sweet dreams are made of cheese」というタイトルだが、Unpublished documentで、おそらく会報や販促冊子のみで公開された。つまりは学術的に出版されて他の学者の精査を受けたわけではない。
ただし、他論文での引用などで一部の内容はわかる。それによると、「チェダーチーズを食べれば有名人の夢が見られる」「ブルーチーズを食べると鮮明な夢が見られる」といった内容だったようだ。
晩酌のお供にチーズを食べよう! というわけである。
これが、日本のネットなどで流布している「ブルーチーズで奇妙な夢」の噂に付加された、「そういう研究論文が出ている」「証明されている」という最もらしい権威付けの正体と思われるものだ。
わかっちゃうと「あーーーうん…よくあるやつね…」って脱力する話であった。
※概要的な話は、以下で追える。上記の2005年の太鼓持ち論文の話は2本目のほうに出てくる
Do students really eat that badly?
https://www.bbc.com/future/article/20211117-does-cheese-really-give-you-vivid-dreams
Dreams of the Rarebit Fiend: food and diet as instigators of bizarre and disturbing dreams
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4330685/#B6
食べ物が夢に関連すると考えている人はだいたい15%くらいで、古来からの迷信の一種でもあるらしい。
(夢は見た本人にしかわからないので、夢の内容については自己申告となり研究は出来ない。)
でも、チーズを食べて実際に奇妙な夢を見たんだ! という人はいるかもしれない。
だとすれば、それは、
・寝る前に重たい食事をしたことによる消化不良で睡眠が浅かった
・チーズを食べると奇妙な夢を見る、と信じていたことによるプラシボ効果
の可能性が高いという。
少なくとも現在では、食べ物の種類と夢の内容の因果関係は明確には認められていない。(査読に通った論文は存在しない)
しかし、ストレスや血糖値の変化による睡眠コンディションの変化はある程度認められている。すなわち、「ストレスフルな生活で深夜や寝る前に重たい食事」→「睡眠が浅く夢を見やすくなる」→「いつもと違う夢を見て、その原因を食べ物に結びつける」という流れで説明出来る。
ちなみに、人間は眠っている間にたくさんの夢を見るが、覚えているのは「目覚める直前に最後に見た夢」だけだとされている。
眠りは基本的に、深くなったり浅くなったりを波のように繰り返すが、レム睡眠という浅い睡眠の状態の波が最後に来た時の内容しか意識できない。
食事を早い時間にとっていれば、食べたものは寝てる時間の早い段階で消化されきってしまうので、たとえ変な夢を見てたとしても目覚めた時には覚えていない。変な夢を見たとして、それが食事に関連するのは、遅い時間に食事をとった場合のみである。「深夜に食事をとったことによる消化不良や血糖値の変化」が原因だとする説は妥当だと思う。
というわけで、これからブルーチーズを食べる人は、変な夢を見ることを恐れなくていい。
ただし、健康のためにも、良い睡眠のためにも、夜遅い時間や寝る直前には食事をしないことをお勧めする。
結論から言うと、近年話題になっている「ブルーチーズと夢」の話は、販促用に流布された噂だった。

最近出回っているこの話では、「実験で実証された」のような話が書かれているのだが、誰の何の論文でどう検証されたのか具体的に出て来ない。まずそこから探したのだが、そもそもの出どころを追っていくと、British Cheese Boardという組織(現在は解体済)が2005年に販促目的で出した査読なし論文にたどり着いた。
この論文は「Sweet dreams are made of cheese」というタイトルだが、Unpublished documentで、おそらく会報や販促冊子のみで公開された。つまりは学術的に出版されて他の学者の精査を受けたわけではない。
ただし、他論文での引用などで一部の内容はわかる。それによると、「チェダーチーズを食べれば有名人の夢が見られる」「ブルーチーズを食べると鮮明な夢が見られる」といった内容だったようだ。
晩酌のお供にチーズを食べよう! というわけである。
これが、日本のネットなどで流布している「ブルーチーズで奇妙な夢」の噂に付加された、「そういう研究論文が出ている」「証明されている」という最もらしい権威付けの正体と思われるものだ。
わかっちゃうと「あーーーうん…よくあるやつね…」って脱力する話であった。
※概要的な話は、以下で追える。上記の2005年の太鼓持ち論文の話は2本目のほうに出てくる
Do students really eat that badly?
https://www.bbc.com/future/article/20211117-does-cheese-really-give-you-vivid-dreams
Dreams of the Rarebit Fiend: food and diet as instigators of bizarre and disturbing dreams
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4330685/#B6
食べ物が夢に関連すると考えている人はだいたい15%くらいで、古来からの迷信の一種でもあるらしい。
(夢は見た本人にしかわからないので、夢の内容については自己申告となり研究は出来ない。)
でも、チーズを食べて実際に奇妙な夢を見たんだ! という人はいるかもしれない。
だとすれば、それは、
・寝る前に重たい食事をしたことによる消化不良で睡眠が浅かった
・チーズを食べると奇妙な夢を見る、と信じていたことによるプラシボ効果
の可能性が高いという。
少なくとも現在では、食べ物の種類と夢の内容の因果関係は明確には認められていない。(査読に通った論文は存在しない)
しかし、ストレスや血糖値の変化による睡眠コンディションの変化はある程度認められている。すなわち、「ストレスフルな生活で深夜や寝る前に重たい食事」→「睡眠が浅く夢を見やすくなる」→「いつもと違う夢を見て、その原因を食べ物に結びつける」という流れで説明出来る。
ちなみに、人間は眠っている間にたくさんの夢を見るが、覚えているのは「目覚める直前に最後に見た夢」だけだとされている。
眠りは基本的に、深くなったり浅くなったりを波のように繰り返すが、レム睡眠という浅い睡眠の状態の波が最後に来た時の内容しか意識できない。
食事を早い時間にとっていれば、食べたものは寝てる時間の早い段階で消化されきってしまうので、たとえ変な夢を見てたとしても目覚めた時には覚えていない。変な夢を見たとして、それが食事に関連するのは、遅い時間に食事をとった場合のみである。「深夜に食事をとったことによる消化不良や血糖値の変化」が原因だとする説は妥当だと思う。
というわけで、これからブルーチーズを食べる人は、変な夢を見ることを恐れなくていい。
ただし、健康のためにも、良い睡眠のためにも、夜遅い時間や寝る直前には食事をしないことをお勧めする。