キクラデス諸島の像はカラフルだった。東地中海世界の彫像、色の世界

キクラデス諸島とは、ギリシャ沖合あたり、場所的にギリシャ本土とクレタ島の中間に点在する島々の総称だ。
ここらは青銅器時代の紀元前3200~1050年頃に独特の文化が栄えていた。同じ東地中海でミノア文明がクレタ島に栄える以前から存在した古い文明であり、のっぺりとした大理石像で有名である。

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ここの像は現代芸術にも似たシンプルで洗練されたスタイルが目を引く。
しかし像といえば顔なのに、どうして目も口もないような像を作ったんだろうなとは思っていた。
その謎がついに明らかに…。

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顔はあった。
ただし彫刻ではなくペイントしていたので見えなくなっているだけだった。

これが
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元はこういう感じ
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実は、見えなくなっているだけでいろんな模様がうっすら痕跡を残しているのだという…。
かつてはカラフルだったし、なんかこう、脱力系の顔が描かれていたのだ。これは知りたくなかった事実。「マジか…」いやマジか。

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Reconstruction of a marble Cycladic Figure of the Spedos group
https://www.metmuseum.org/art/collection/search/853785

※サイズ感などがわかりやすい

CYCLADIC THEMES
https://cycladic.gr/en/page/techni

※真ん中あたりに復元の動画がある

キクラデスの彫像に顔がない理由がまさか硬い大理石で作っててリカバリが効かないから、失敗しやすい顔の細かいパーツは絵の具で描いちゃえっていう思考の結果だとは思ってもみなかった…。いやある意味で正しいし、頭いいなとも思うんだけど。

最近、ギリシャ彫刻についても元の色が復元されて、古代にはこんな感じでカラフルだったことが分かってきている。その延長でのキクラデス彫刻の復元なのだが、なんていうかうん、ちょっとイメージ変わりすぎて心の整理が。

というわけで、スタイリッシュで現代的な彫刻だと思っていたのは、単なる現代人の思い込みと勘違いだったのであった。古代人の感性に追いつくには、まだまだ精進が必要なようです。