200万年前のグリーンランドは本当に緑の島だった。環境DNAから探る古代の生物たち

グリーンランドというと現代では氷の世界だが、気候変動で温暖になっているため氷は解けつつあるという。
で、全部溶けたらどうなるのか? という話だが、実際に200万年前には全部氷が溶け、南の方にしか住んでいなかった生物が北上してきていたという。北極圏の生き物から温帯の生物まで入り混じった不思議な生態系が作られていたのだ。

200万年前のグリーンランド北部に想像を超えた豊かな生態系
https://www.natureasia.com/ja-jp/ndigest/v20/n3/200%E4%B8%87%E5%B9%B4%E5%89%8D%E3%81%AE%E3%82%B0%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%B3%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%89%E5%8C%97%E9%83%A8%E3%81%AB%E6%83%B3%E5%83%8F%E3%82%92%E8%B6%85%E3%81%88%E3%81%9F%E8%B1%8A%E3%81%8B%E3%81%AA%E7%94%9F%E6%85%8B%E7%B3%BB/119645

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元論文
A 2-million-year-old ecosystem in Greenland uncovered by environmental DNA
https://www.nature.com/articles/s41586-022-05453-y

環境DNA(eDNA)については、以前書いた以下の記事を参照。
土壌や水の中に紛れ込んで残っているDNAの切れ端を解読して、データベースに登録されている現代の生物の塩基配列と突き合わせてどの生物の系統になるかを調べるというものだ。これはPCなどコンピュータの性能が上がり、生物のDNAがフル解析されてデータベース登録数が増えてきた今だからこそできる研究方法になる。

ネス湖のネッシーの正体は巨大ウナギ! という報道→実は元の報道はちょっと違う
https://55096962.seesaa.net/article/201909article_6.html

論文の中で「この生物は原生生物のxxの系統と考えられる」というような書き方が出てくるのは、たとえば、検出されたDNAが現代のシカによく似ているけれどシカではなかった場合、「絶滅したシカの近縁種だろう」と判別しているからだ。200万年前の種なので、当然、現代の種とはDNAが違っている。人間で考えると分かりやすいが、200万年前の人間はアウストラロピテクスとかである。なお、化石が見つかっているわけではなくDNAの切れ端だけなので、系統は分かるが、姿などは分からない。

さて、この論文の中で調査されている「ピアリーランド」はグリンランドの中でも北端。写真などは検索すれば出てくるが、一面真っ白で分厚い雪原に覆われた場所だ。ここが緑豊かな場所で、マストドンやカリブーといった大型の草食動物が闊歩するほど緑にあふれていた時期があったのだという。さらに海鳥や藻、なんとサンゴの仲間の痕跡まで出ているという。

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つまりは、今後、継続して地球の平均気温が上がり続けた場合はグリーンランドは再び緑の島に戻り、現在住んでいる北極圏の生物に加えて温帯の生物も北上してきて、生物の楽園となる。(逆に現在の温帯部分は熱帯と化しているかもしれない)
この現象が200万年前だけ起きたわけではないことは、別の研究からも示唆されている。

陸の氷、全部抜く。およそ40万年前、グリーンランドの氷床が全部溶けていた
https://55096962.seesaa.net/article/490882580.html


地球上の氷が全部溶けてしまうと、世界は大きく姿を変える。
我々人間は既存の都市を捨てるハメになるかもしれないが、生物全体で見れば、生き残るものは生き残り、種は続いていくのだろうと思える。
というか何十年とか何百年の単位で見れば、今起きている変化など、些細なものなのかもしれないなぁと改めて思った次第。