エジプト・エスナ神殿(プトレマイオス朝に建造)から黄道十二宮の星座が特定される。

クリーニングが続けられていたエスナ神殿の星座図から、十二星座が特定されたそうだ。
これまでの経緯は過去記事を参照。

※2020年
エジプト・エスナの神殿をクリーニングしていたら新しい「星座の名前」が見つかった、という話

※2022年
エジプト・エスナ神殿のクリーニングが完了する。浮き彫りがキレイだ…

住宅地の中にぽつんと残った神殿で、天井部分は煤やホコリなどの汚れが分厚く張り付いていたものの、クリーニングしてみたらその汚れが保護してくれていたおかげでキレイに2000年以上前の浮き彫りが残されていたのだという。

エジプトでの報道

In Photos: Egypt’s first complete Zodiac uncovered in Luxor's Temple of Esna
https://english.ahram.org.eg/NewsContent/9/40/491999/Antiquities/Ancient-Egypt/In-Photos-Egypt%E2%80%99s-first-complete-Zodiac-uncovered-.aspx

発掘してるTubingen 大学のプレスリリース

Research team uncovers further ceiling paintings in the temple of Esna
https://uni-tuebingen.de/en/university/news-and-publications/press-releases/press-releases/article/research-team-uncovers-further-ceiling-paintings-in-the-temple-of-esna/

これがエジプト版の射手座。ケンタウロスが…魔改造されている?!!
星座は元々バビロニアの伝統で、それがギリシャ経由でエジプトに伝わった結果、こうなってしまったらしい。わざわざエジプト風にカスタマイズしたというわけだ。ていうかエジプトにも馬はいただろうに、馬+人じゃないという謎。羽生えてるし、よく見るとしっぽがサソリなんである。
これはもうエジプトの国技というやつだね。

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煤の下から蘇った謎生物。
このあたりの十二星座ではない連中は何者なのかまだよく分かっていない部分もある。おそらくデカンの守護者だろう、とされているが、デカンという単位の概念については、以下の過去記事を参照してほしい。要は地平線の下も含む360度の夜空を10度ずつ36の区切りにした、星のまとまり単位のことである。

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一周の角度はなぜ360度になったのか。という話を古代エジプトの棺窓から

十二星座の位置と名前はこちら。

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ぐるりと輪になるように描かれていて、先頭が「地平線のホルス」ことスフィンクス、次にくるのが乙女座。現在の乙女座は十二星座の6番目だが、古代エジプトの一年の始まりはナイルの増水の起こる7月末ごろだった。つまり乙女座の見える時期とだいたい一致する。
先頭のスフィンクスの真上あたりにしし座がいて、すぐ後ろに乙女座がいるという配置からして、一年の始まりやサイクルと関係していそうだ。

…という解釈であっているにしても、間に挟まってる十二星座以外の謎の生物の意味はさっぱりわからないのだが。



エジプトでは、星座がまとまった形で残っている遺跡は、ここエスナと、デンデラ神殿しかない。
プトレマイオス朝、ギリシャ文化とエジプト文化が融合した世界における星座の貴重な情報なのは間違いない。クリーニングも終わり、解釈など詳しい内容が出てくるのはこれからのはずなので、今後の研究に期待したい。