ヨルダン周遊(9) 砂漠の岩絵を確かめにいく

ワディ・ラムには岩絵や碑文の残るスポットが何箇所かあるのだが、その中でも自分が絶対みたいと思っていたのはハザリ渓谷の岩絵だった。
ここの岩絵が最も古い時代のもので、有名だからだ。

まず、なぜここにだけ古い時代のものが残っているのか。という疑問があった。
ていうかこの場所は特別な場所なのか。

実際に行ってみると、そんなもやっとした疑問はすぐに解消された。

・岩が他より硬い(色や手触りが全然違う)
・渓谷が狭く、人ひとり入れるくらいの裂け目


→ここに古い時代の岩絵が残っているのは偶然と思われる。
 条件がよく、風化しなかっただけ。たぶん他の場所にも岩絵はあった

ハザリ渓谷の入り口はこんな感じで、かなり狭い。
そして黒っぽくなっているのが分かると思う。おそらく鉄分を含んだ岩で、ここの岩は他より硬い。

812501.png

渓谷の中に入ると、こんな感じになっている。
黒っぽい岩の表面に岩絵が残されている。風が当たらないので風化しづらい、これなら残るなと納得。

4675.png

逆に言えば、風通しのよい場所に刻まれた文字などは、すぐに風化してしまう環境だ。
宿の近くなどあちこちに現代人が刻んだ落書きなどもあったのだが、ほとんどがイイ感じに風化して消えようとしていた。

1158219.png


そしてもうひとつ大事なこと、この渓谷もペトラで見たシークと同じく、谷底を水が流れて出来ている。
谷の奥まで入っていくと、水が溜まっている場所が数か所。最近降ったという雨が溜まっているのだろう。ここに人が集まり、岩絵を書いたのは、日陰と水があり一休みできる環境だったからなのだ。

891463.png

で、「水が谷を削る」ということは、時代とともに谷は深くなっていく。
そう、だから古い時代の岩絵ほど、高い場所にあるのだ。

先史時代の最も古い岩絵とされるものは全て何故か頭上にあって、最初、「あんな高いとこどうやって…?」と思っていたのだが、少しずつ谷の高さが変化していったのだと分かった瞬間に納得した。この古い岩絵が描かれた時、砂漠には緑があり、野生ヤギであるアイベックスがこの谷の近くに生息していたのだろう。

5799251.png

古い岩絵がよく残っているのはちょうど頭上に岩が張り出しているあたりで、雨からも守られたんだろうなと思いながら見上げていた。


谷の出口には、この砂漠では珍しい木陰があり、谷の涼しい空気で火照った身体を癒やしてくれる。
今も昔もここは、旅人たちが一休みするのにちょうどいい避難所になっているのだった。

44889.png


北部のローマ時代の遺跡から始めたこの旅も、ようやく、砂漠の奥にある一万年以上前の壁画へとたどり着いた。
ここからはアンマンへと折り返し。この地から東の果ての国まで、かつての人類は数万年かけて進出していった。しかし現代ではほんの1-2日の距離である。


まとめ読みはこちら