ヨルダン周遊(11) 余談:ヨルダンに見る「観光立国のあり方」

最初に書いた通り、ヨルダンは地理的には中東カテゴリに入る国だが石油が出ない。資源の少ない国である。
なので観光収入で外貨獲得をしている。これはエジプトと同じ。

そのヨルダンに見る、「観光客にいかにカネを落としてもらうか」という工夫の部分について考えてみたい。

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■空港に遊ぶ所がある。時間つぶせる。

観光でメシ食いたい国は、どこも「空港にカネをかけている」。ラウンジ以外でも、観光客向けのお高い施設を作るのはアリで、空港に温泉! とかは全然アリ。日本っぽい施設でもあるし。その意味で新千歳や成田のやつはうまくやってる。
あと、成田空港は古い空港なので、いい加減新しいの近くに作ってもいいのでは? と思った。まあ日本の場合、滑走路増やすのさえ過激派が反対運動などしていて面倒くさい状況なので面倒くさいのだろうが。

■インターネット環境の充実

インターネット環境は今の時代だと必須。ヨルダンの空港で観光客が買えるSimは一週間のスタンダードプランでかなり安い。
ビジターセンターなど主要な施設ではWi-fiもよく使えたし、フリーなのに早い。これは便利だなと思った。

■各国語で発信される観光情報

事前にホームページで検索できる情報が多い。これは個人旅行者には必須の条件。
それと現地では、京都のお寺みたいなノリで、各国語パンフレットが各施設に置かれており、観光案内所もわかり易い場所にあって情報アクセスがしやすかった。
その一方、住民たちはまぁエジプトと似た感じでだいたいガメツいというかチップの要求が激しいというか…。いい人は多かったんだけど。
エジプト人ほど呼び込みやつきまといがうるさくないのは◎


一方で、観光で儲けることに必死になりすぎて失敗しているのでは…という部分もある。


■オーバーツーリズム

ワディ・ラム自然保護区には大量のテント泊設備がある。観光客だけでなく地元のお金持ちもやってくるようだが、ちょっと事前警官壊しすぎなのでは? という感じもした。特にビジターセンターに近い場所、宿泊施設集まりすぎで灯りで空が光ってて「沙漠の夜空見えないんでは…」ってところもあった。

※村に近いほど水が使える、他の宿泊施設から離れたところほど不便で水もほぼ使えない。利便と環境のトレードオフではある


■一部アクティビティの値段が高すぎる、クオリティが追いついていない

ペトラ遺跡でやるペトラ・バイ・ナイトは、ショボイわりに高いと不評だ。でも一生に一度なら取り敢えず見ておくか、と出かけてみた…のだが、なんと期間限定で特別仕様の3Dマッピング、光と音のショーとかいうものに変わっていた。お値段は33ディルハム(7千円)! 夜の遺跡を歩いて30分ショー見てこのお値段、殿様商売もいいとこである。

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このショーが、やはり微妙なクオリティ。3Dマッピングの技術自体はすごいのだが、「…で?」という感じで、音楽が流れる中を光が乱舞するばかり、特にストーリー制もなく、それどころかそもそもペトラ遺跡すら関係ない(笑) ギリシャ文字が乱舞するやつとか、何したかったん。。て感じである。
エジプトのカルナック神殿でやってた音と光のショーなんかは、フォラオの時代に思いを馳せる的なテーマで作られていたから面白かったし値段も納得できたんだけどな、ヨルダンさんショーの作り方ちょっとヘタ。

同様のツッコミは、博物館のカネかかってそうな特殊展示やホテルのやってるアクティビティなどでも感じた。
まあ、それでもカネだす一見さんの旅行客が多いからやっていけてるんでしょうけど。

■やはり水まわりが弱い

そして、そもそものヨルダンの「水が足りない」という事情は、オーバーツーリズムの問題と絡んで問題があるなと思った。
シャワーの水が出ない時間帯があったり、トイレの水の勢いが弱すぎたり、そもそもシャワーほとんど使えない宿があったりと、直前に雨が降った時期のはずなのに水回りは制約があった。(たぶん高い宿に行けば水たっぷり使えるんだろうけど)

これは長期旅行する人には不利だと思う。空港で買えるSimのプランからしても、ヨルダンは一週間以内に駆け抜ける人が大半なのだと思う。長期旅行者を想定しづらい環境で、なので短期間で搾り取れるだけ搾り取る方向になっちゃってるのかも。



日本も今、観光による収入を増やそうとしている。
上記のようなヨルダンの事情から日本の場合を考えてみると、実は日本は現時点でも結構頑張ってるなと思った。首都圏の鉄道とか、京都など人気の都市の交通網や宿泊施設の部分。あと治安もいい。

足りないのは、空港などのデカい設備部分と、各国語での情報発信かなー。
てかせめて英語ホームページは作っといたほうがいいと思うんだよね地方の観光地も…。
一昔前はイマイチだったインターネット環境は、だいぶ改善されたかなと思う。

それと、全般的にもう少しあってもいいと思ったのは、観光客から意地でもむしり取るという意気込み。
これはエジプトやアイスランドなど観光立国を目指している国全般で感じることだが、効率的に、気持ちよく、まとまった金を払わせるシステムは非常に重要だ。たとえば大阪城半日観光英語ガイド2万円、遊覧船と昼食つき! みたいなお手軽パッケージとか。

最近は日本でも忍者ツアーみたいな外国人向けアクティビティが増えてきているように思うが、もっと増やせるはずだ。


というか、日本は観光資源が豊富だなとシミジミ思うのだ。
多い上に、地方にちらばっている。
短期旅行者と長期旅行者、どちらも想定できる。そして、多種多様なテーマ別の旅程が考えられる。

自然を楽しむ旅でも、サブカルなどの文化に特化してもいい。買い物、美食、歴史、いろんな楽しみ方がある。そして夏の沖縄にシュノーケリングしにきてもいいし、冬の北海道でスキーをしにきてもいい。幅が広い。
ホスト側がルートを想定してそこだけ手厚く、というのが難しい。

だから、せめて交通網の案内だけはわかりやすくしておくのはどうだろうと思った。それとタクシー。地方だとタクシーが使いづらい。
改めて、自分が外国人だったらと想定してみると、あまり海外からの観光客が来ない地域には、アクセスしづらいとか情報発信が弱いとか、それなりの理由があることに気づく。逆に言えば、そこさえクリアすれば地方都市でもインバウンド収入は見込めるのではないかと。

日本の観光地は多様性もあるし、発展できるポテンシャルはあると思うのだ。ぜひ…頑張ってほしい…。