エジプト中部・アシウトからビザンツの修道院と古代エジプトの墓が見つかる。時代を越えた聖域のありか

何の変哲もない発見に見せかけて、これぞエジプトらしさだなあというのがあったのでメモ代わりに書いておく。
エジプト中部、アシウトにあるメイル遺跡で、上層からビザンツ時代のキリスト教会、下層から古代エジプトの末期王朝時代の墓所が見つかった、というニュースだ。

Byzantine and Late Period relics uncovered in Meir necropolis in Assiut
https://english.ahram.org.eg/News/500224.aspx

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これがなぜ面白いかというと、同じ場所で、古代エジプトからローマ支配時代へとシームレスに移行していることが分かるからだ。
ちなみにアシウトは古王国時代からの聖地であり、神話としては犬の姿を取るウプワウト神の聖地とされてきた。なのでメイル周辺は、「古代エジプトの古くからの墓所」というイメージが強い。

そこが末期王朝時代まで墓所として機能し、さらにローマ支配→ローマ東西分裂→ビザンツ(東ローマ)支配へと時代が変遷し、宗教がキリスト教に変わったあとも古来からの聖地、墓所として使われ続けていた、というのが面白い。
今回はコプト語で壁に書かれた6行ほどのテキストも見つかっているようなのだが、コプト語は古代エジプト語の後継言語なので、そこに住んでた住民も継続している。

時代を越え、宗教が変わっても人々の信仰を集め続ける聖なる土地。その歴史は3000年以上の長きに渡る。
この息の長さ、連続する歴史が数千年ぶんも一箇所で観測出来るという事象が、エジプトらしさなのだ。他の場所だと、間が数百年くらい人が住んでない時代があったり、オスマン時代の下層に古代の遺跡が埋もれてて間が抜けてたり、古代の墓の上に畑が出来てて今はもう聖地じゃなくなってたり、という感じで、「同じ住民による連続した歴史」っていうのがあまり無いので…。

というか、近代以前は人の集団って気候変動や政治によって移動するのが当たり前なので、数千年前からずーっと同じ人がすみ続けてる土地ってのも限られてくるのかと思う。

こういうエジプトらしさを感じる発見は大好きです。おかわりください。