登山中の事故に見せかけて殺人はできるのか。登山部が教える「確実な殺し方」
いきなり物騒な話だが、まじめに聞いてほしい。
登山中の事故に見せかけて殺人、というのは現実的にはほぼ無理である。
最近読んだマンガで、「最近登山にハマったんだー」と言ってる女性の登る山を聞き出して、その山で殺人に及ぶ、というシチュエーションがあったのだが、いやいや無理っしょ。と思い切り突っ込んでしまった。
・山道の上り下りには体力が必要、殺人の前に自分が遭難しないだけの体力とスキルが必要
・初心者の登る山なら多少は道も楽だが、そういう山は平日でも人通りが多い
・凶行に及べるタイミングが無い
・突き落として死ぬくらいの崖や危険な道がある山は初心者向けではない
・つまり犯人も初心者以上の登山スキルがないと生還できない
・そもそもキツい山道を上り下りして、なお人を付き落とせるだけの体力が残っているということは、かなりタフでなければならない
・さらに被害者より先に犯行予定現場に到達していなければならない
= 体力めっちゃ要る
山登りはかなりキツい運動の一つである。コースによってはマラソンよりもキツイ。荷物(最低でも水と食料)を担いで、坂道を何時間も登り続けるシチュエーションを考えてみてほしい。ただ単に体力がある、とか、筋肉がある、とかだけではダメで、長時間の負荷に耐える訓練が必要になる。
ちょっと思いついた程度で犯行に及べる場所ではないのだ。
だから、もし山で殺人をしたい場合は、以下が必要になる。
・登山できる体力をつけ、山登りの訓練をする。靴などの装備を揃える
・ターゲットの登る山と山行予定を入手する
・山の地形がわかってないとだめなので、事前に予行登山を行う
これらの条件を満たしてなお怪しまれず、なおかつ確実に殺人を成功させたい場合、一番てっとり早い条件は、以下になる。
・一緒に登る
これしかない。
…というか、山の中で「待ち伏せして」殺人に及ぶ、というのは、実際あまり現実的ではない。
なぜなら、登山口は決まっており、そこにアクセスする方法も、公共のバスかレンタカー、タクシーなど、いずれにしても誰かに知られる/見られている方法しかないからだ。レンタカーでさえ、登山口の駐車場は決められており、だいたい数台とか10台とかなので、どの車がいつ頃からあったか他の登山者が見てて覚えてるのである。(なので数日停めっぱなしの車があった場合など、「持ち主が遭難してるのでは」と通報が入ったりする)
平日のマイナーな山などで、首尾よく誰にも見られずに山に入れたとして、ターゲットより先に犯行現場まで登りきり、場合によっては何時間も山の中で虫にたかられながら待つのは、なかなかの修行である。オススメできない(笑)
それよりは、一緒に登って任意の場所でスキをついたほうがいい。それならタイミングもずれないし、待ち時間もない。
第一発見者になるのが嫌とかであり、なおかつ遺体の発見を遅らせたいのであれば、自分がマッパー(地図を持って道順を確認する)をやればいいのだ。で、本来の予定とは違う道にわざと入り、見つかりにくい場所で殺人に及ぶ。
そして自分だけ正規の道に戻って下山し、「山頂までは一緒に行ったが帰り道でバラバラになりはぐれた」ということにすればいい。
実際、こういうシチュエーションは経験値の浅いパーティーだと、よくある。下り道で、歩くのが早いメンバーが、遅いメンバーをおいてけぼりにしてしまうケースだ。で、はぐれたメンバーが途中でバテて山小屋の人に救助されてるとか、数時間遅れで下にいる仲間に合流するとか、運が悪いと途中で滑落していて大事になってることもある。
ちなみに、登山中の事故で見つからないケースの大半は、「どの道を辿ったかわからない」=「探す所がわからない」から、である。
要は登山計画書の提出をどこにもしておらず、家族にも「xx山にいく」みたいなアバウトな情報しか残していない場合だ。登山アプリなどで山行予定を提出できる昨今、詳しい道順をどこかに残していれば、崖から転落していてもだいたい見つかる。
というか、人一人が滑落すると、その体積と重量で山肌が削れたり落ち葉がめくれたり跡が残るし、捜索隊も危険箇所はだいたい目星をつけて来る。
見つからないとすれば、大幅に道を間違えて本来の道筋から離れすぎてしまって「道迷い」のケースだと思う。
なので、遺体が腐って死因が分からなくなるのを期待するなら、人工的に道迷いを引き起こす、つまり自分がマッパーになって誤った道に引き込むのが必要となる。
…もっとも、「自分だけは」生還しなくてはならないので、誤った道から予定ルートに復帰できるだけの登山スキルは必要になるのだが。
まとめると、リアルで考える「確実な山の殺人シチュエーション」に必要なものは
・登山スキルつける
・ターゲットと一緒に登る
・登山の主導権を自分が握る
以上! 準備たいへん!! 普通にどっかの絶景ポイントとかに呼び出して突き落とすほうが早い!(笑)
登山中の事故に見せかけた殺人は…オススメしません…。
なお逆の立場として、殺される側から見れば、
山は 信頼の置けない相手と登ってはいけない
これ。
最近だとSNSで登山仲間つのってて、オフ会のノリで見ず知らずの人と山に登ってるパーティーもあるようだが、私にはとても無理だ。テントで寝首をかかれるかもしれないし、崖で豹変するかもしれない。異性の場合、何か下心があるかもしれない。それを抜いても、そもそも山という「トラブルなどで命がけの場面が有り得る」というフィールドに、信頼出来ない他人をお供にする気がしれない。せめて冒険者ギルドが身元保証してくれるぐらいじゃないと…。
まあそもそも、人気の山だとめっちゃ人いるし、そうじゃなくても夏山とかのハイシーズンは何かと人の目があるんで、危ないことは無いですけどねー。最近だと登山で知り合った人がストーカーしてくるとか、SNSで粘着してくるとかのほうが問題ですかね。
町は、山とは別の意味で怖い所なのです。(オチ)
****************
なお、ここに書いたのは一般人の登山、積雪なしの時期・日本国内を想定している。
同じ山でも積雪期や海外の4000mを越える高峰になると、アクセスは難しいが殺人自体は簡単になる。ザイルに故意に切れ込みを入れるだけなどでも、ほぼ確実に死ぬので…。
また、この記事は、登山中の事故を故意に引き起こせという意味で書いているのではない、念のため。あくまで「創作物に軽く山の殺人シチュエーションを出すのはあまりオススメしない(現実味がなくなるので)」ということが言いたい。
レジャー中の事故に見せかけて人を殺すにしても、他の、前提のハードルが低い種類にしておいたほうがいい。
登山中の事故に見せかけて殺人、というのは現実的にはほぼ無理である。
最近読んだマンガで、「最近登山にハマったんだー」と言ってる女性の登る山を聞き出して、その山で殺人に及ぶ、というシチュエーションがあったのだが、いやいや無理っしょ。と思い切り突っ込んでしまった。
・山道の上り下りには体力が必要、殺人の前に自分が遭難しないだけの体力とスキルが必要
・初心者の登る山なら多少は道も楽だが、そういう山は平日でも人通りが多い
・凶行に及べるタイミングが無い
・突き落として死ぬくらいの崖や危険な道がある山は初心者向けではない
・つまり犯人も初心者以上の登山スキルがないと生還できない
・そもそもキツい山道を上り下りして、なお人を付き落とせるだけの体力が残っているということは、かなりタフでなければならない
・さらに被害者より先に犯行予定現場に到達していなければならない
= 体力めっちゃ要る
山登りはかなりキツい運動の一つである。コースによってはマラソンよりもキツイ。荷物(最低でも水と食料)を担いで、坂道を何時間も登り続けるシチュエーションを考えてみてほしい。ただ単に体力がある、とか、筋肉がある、とかだけではダメで、長時間の負荷に耐える訓練が必要になる。
ちょっと思いついた程度で犯行に及べる場所ではないのだ。
だから、もし山で殺人をしたい場合は、以下が必要になる。
・登山できる体力をつけ、山登りの訓練をする。靴などの装備を揃える
・ターゲットの登る山と山行予定を入手する
・山の地形がわかってないとだめなので、事前に予行登山を行う
これらの条件を満たしてなお怪しまれず、なおかつ確実に殺人を成功させたい場合、一番てっとり早い条件は、以下になる。
・一緒に登る
これしかない。
…というか、山の中で「待ち伏せして」殺人に及ぶ、というのは、実際あまり現実的ではない。
なぜなら、登山口は決まっており、そこにアクセスする方法も、公共のバスかレンタカー、タクシーなど、いずれにしても誰かに知られる/見られている方法しかないからだ。レンタカーでさえ、登山口の駐車場は決められており、だいたい数台とか10台とかなので、どの車がいつ頃からあったか他の登山者が見てて覚えてるのである。(なので数日停めっぱなしの車があった場合など、「持ち主が遭難してるのでは」と通報が入ったりする)
平日のマイナーな山などで、首尾よく誰にも見られずに山に入れたとして、ターゲットより先に犯行現場まで登りきり、場合によっては何時間も山の中で虫にたかられながら待つのは、なかなかの修行である。オススメできない(笑)
それよりは、一緒に登って任意の場所でスキをついたほうがいい。それならタイミングもずれないし、待ち時間もない。
第一発見者になるのが嫌とかであり、なおかつ遺体の発見を遅らせたいのであれば、自分がマッパー(地図を持って道順を確認する)をやればいいのだ。で、本来の予定とは違う道にわざと入り、見つかりにくい場所で殺人に及ぶ。
そして自分だけ正規の道に戻って下山し、「山頂までは一緒に行ったが帰り道でバラバラになりはぐれた」ということにすればいい。
実際、こういうシチュエーションは経験値の浅いパーティーだと、よくある。下り道で、歩くのが早いメンバーが、遅いメンバーをおいてけぼりにしてしまうケースだ。で、はぐれたメンバーが途中でバテて山小屋の人に救助されてるとか、数時間遅れで下にいる仲間に合流するとか、運が悪いと途中で滑落していて大事になってることもある。
ちなみに、登山中の事故で見つからないケースの大半は、「どの道を辿ったかわからない」=「探す所がわからない」から、である。
要は登山計画書の提出をどこにもしておらず、家族にも「xx山にいく」みたいなアバウトな情報しか残していない場合だ。登山アプリなどで山行予定を提出できる昨今、詳しい道順をどこかに残していれば、崖から転落していてもだいたい見つかる。
というか、人一人が滑落すると、その体積と重量で山肌が削れたり落ち葉がめくれたり跡が残るし、捜索隊も危険箇所はだいたい目星をつけて来る。
見つからないとすれば、大幅に道を間違えて本来の道筋から離れすぎてしまって「道迷い」のケースだと思う。
なので、遺体が腐って死因が分からなくなるのを期待するなら、人工的に道迷いを引き起こす、つまり自分がマッパーになって誤った道に引き込むのが必要となる。
…もっとも、「自分だけは」生還しなくてはならないので、誤った道から予定ルートに復帰できるだけの登山スキルは必要になるのだが。
まとめると、リアルで考える「確実な山の殺人シチュエーション」に必要なものは
・登山スキルつける
・ターゲットと一緒に登る
・登山の主導権を自分が握る
以上! 準備たいへん!! 普通にどっかの絶景ポイントとかに呼び出して突き落とすほうが早い!(笑)
登山中の事故に見せかけた殺人は…オススメしません…。
なお逆の立場として、殺される側から見れば、
山は 信頼の置けない相手と登ってはいけない
これ。
最近だとSNSで登山仲間つのってて、オフ会のノリで見ず知らずの人と山に登ってるパーティーもあるようだが、私にはとても無理だ。テントで寝首をかかれるかもしれないし、崖で豹変するかもしれない。異性の場合、何か下心があるかもしれない。それを抜いても、そもそも山という「トラブルなどで命がけの場面が有り得る」というフィールドに、信頼出来ない他人をお供にする気がしれない。せめて冒険者ギルドが身元保証してくれるぐらいじゃないと…。
まあそもそも、人気の山だとめっちゃ人いるし、そうじゃなくても夏山とかのハイシーズンは何かと人の目があるんで、危ないことは無いですけどねー。最近だと登山で知り合った人がストーカーしてくるとか、SNSで粘着してくるとかのほうが問題ですかね。
町は、山とは別の意味で怖い所なのです。(オチ)
****************
なお、ここに書いたのは一般人の登山、積雪なしの時期・日本国内を想定している。
同じ山でも積雪期や海外の4000mを越える高峰になると、アクセスは難しいが殺人自体は簡単になる。ザイルに故意に切れ込みを入れるだけなどでも、ほぼ確実に死ぬので…。
また、この記事は、登山中の事故を故意に引き起こせという意味で書いているのではない、念のため。あくまで「創作物に軽く山の殺人シチュエーションを出すのはあまりオススメしない(現実味がなくなるので)」ということが言いたい。
レジャー中の事故に見せかけて人を殺すにしても、他の、前提のハードルが低い種類にしておいたほうがいい。