チベット、エチオピア、アンデス。世界の高地民を巡る写真集「極限高地」

世界の高原地帯に住む人々を巡るという珍しいテーマの写真集。前に広告だけ見かけて気になっていたのだが、たまたま見かけたので手にとってみた。
実はこれら三箇所の高地は、自分も既に巡っている。だからこそ、そこに行くキツさの想像がつく。
チベットはラサが入り口、アンデスはクスコから、エチオピアはアディスアベバからラリベラへと飛行機で飛んでそこから入った。いずれも高地順応できていなければ高山病になることがある。自分も程度は軽くてもそれぞれの回で食欲不振や息切れなどのトラブルを経験した。写真集は、多くの観光客が訪れる地域以外も扱っているので、それよりキツかったはず。タイトルの「極限高地」の意味も分かろうというものだ。


極限高地 チベット・アンデス・エチオピアに生きる - 野町 和嘉, ナショナル ジオグラフィック
極限高地 チベット・アンデス・エチオピアに生きる - 野町 和嘉, ナショナル ジオグラフィック

写真集なので当然ながら写真がメインなのだが、人のいる風景が多い。それも、イベント(宗教)に関する風景だ。
チベットはチベット仏教、エチオピア北部はエチオピア正教、アンデスは表向きカトリックだが現地宗教や自然崇拝的な概念と融合している。いずれも現地で見た風景や感じた雰囲気と繋がっていて、自分的には少し懐かしい部分もあった。チベットにはちょうど冬の巡礼シーズンに行ったので、五体投地で聖地を目指す人や、凍結した川に仏典の文字を書いているのは見た。エチオピアのアクスムでは白い服を来た巡礼や、葬式で泣き叫ぶ人を見た。アンデスでは雪を抱く高峰と、スペイン統治時代に作られたという教会を見た。

本で読んだことがあって知識はあるものの到底個人で行ける場所ではないところや、時間や予算の都合で行けなかった場所の写真もあったりして、もし行けていたらこういうのが見られたのかー、などと思いながら眺めていた。
個人的に、眺めるのがとても楽しい写真集だった。



なお余談だが、この写真集に出てくる三大高地と言われる場所に暮らす人々は、それぞれ、高地に適するために独自の進化をしている。
それを以前調べたのがこちら。

世界三大高地と人類の高地順応~高地の人々の高度順応戦略とその代償
https://55096962.seesaa.net/article/202001article_15.html

わかりやすく言うと、高地の空気の薄さに順応するために、血液が酸素を運ぶシステムを変化させて対応している。これは我々には真似できないし、遺伝的なものなので勝ち目がない。
逆に、高地に順応した体は低地では不具合をきたす場合もある。
三箇所の高地は、人と土地が強く結び付けられている場所、とも言えるかもしれない。


*****
あと、オマケだが、チベットに行く時に立ち寄った青海省の博物館で見たモヒカンのラマ僧が実際に活動している写真が載ってて、ウワアー今も本当にこの格好の人いるんだーー! ってちょっと感動した。見事なモヒカンだった。w