ネケブ砂漠の十字路と旅人の墓、そこに納められたのは誰なのか

紀元前1千年紀の砂漠の十字路に位置する「旅人のための墓」、これは面白そうな発見だなぁと思ったのでメモしておく。
旅人の墓と言われているのは、近くの集落のいずれとも関係なく、様々な地域/様々な所属コミュニティの持ち物が雑多に数百年分重なっていることから、砂漠ルートの途中で死んだ人を納める共同墓地だったと考えられているからだ。

Dozens of 2,500-year-old skeletons unearthed at ancient crossroads in Negev desert
https://www.livescience.com/archaeology/dozens-of-2500-year-old-skeletons-unearthed-at-ancient-crossroads-in-negev-desert

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元論文がこれ

The Secret in the Desert: Preliminary Conclusions from the Excavation of a Unique Burial Complex in the Negev Highlands
https://www.tandfonline.com/doi/abs/10.1080/03344355.2023.2190272

地図で探すと、場所的にはこのへん。ここはクッッッッソ暑い砂漠のど真ん中ですね…
このへん過酷だからそりゃ死者も出るわな。

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このあたりは、エジプトの東端から西へ向かって続くルート、アラビア半島の南端から地中海へ向けて北上するルートが交わっており、墓から出てきている遺物もエジプトの護符やアラビア半島南のもの、紅海で取れる貝殻の装飾品など地域はバラバラ。ただしほとんどが女性の持ち物とされることから、ここに納められたのは主に女性ではないかとされている。
そのため、奴隷として売買されていた女性のうち、売られる途中で死んでしまった人が無縁仏としてここに葬られたのではないか、という推測もされている。だとしたらだいぶ悲しい話であるが、人身売買されながらも砂漠に捨てられなかっただけまだマシなのか…。

遺体を移動させた跡があったり、少なくとも50体ほどの骨が見つかっていることから、墓は長期に渡って使われていたことがわかっている。
果たしてこの墓に納められた女性たちは、売り飛ばされた悲しい背景を持つ人々だったのか。それともただの「旅人の女性用の墓」で、実は男性用も別にあったりしたのか。
後者であってほしいなあと思う。