ユダの丘にある洞窟は「死者との対話」のために使われた? ローマ支配下の異教活動

イスラエルはユダの丘にある広大なテオミム(Te’omim)の洞窟内部から見つかった人骨と大量のランプは、ローマ支配時代に洞窟内で行われた黒魔術の痕跡ではないか、という論文が出ていて、面白そうだったのでメモしておく。

論文タイトルに「ネクロマンシー」とあるように、死者の頭蓋骨とランプを持ち込んで、洞窟内で何らかの儀式を行い、イタコのような感じで死者の声を聞いていたのではないか、とされている。ギリシャでいう nekyomanteion (死者の託宣、神託の一種) ではないか、という。

Oil Lamps, Spearheads and Skulls: Possible Evidence of Necromancy during Late Antiquity in the Te’omim Cave, Judean Hills
https://www.cambridge.org/core/journals/harvard-theological-review/article/oil-lamps-spearheads-and-skulls-possible-evidence-of-necromancy-during-late-antiquity-in-the-teomim-cave-judean-hills/973DF6E86AF609B8B4D1296D8292B8EB

洞窟の場所はココ。けっこう首都に近い。

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論文についている写真を見ると、鍾乳洞などがあり、かなり入り組んだ構造で、内部には泉も湧いているという。なるほどここだと亡霊を呼び出す儀式にふさわしそうだなあという感じ。ここで見つかっているものはとにかく大量のオイルランプで、型式から2-4世紀のものがほとんど。岩の割れ目に押し込まれているものが多く保存状態がいい。その状況から、単に明かりを灯すだけではなく捧げ物のような使われ方をしていたかもしれない。

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また、金属製の斧など、儀式に使われたかもしれない遺物も見つかっている。

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ただ問題は、この場所が本当にギリシャ・オリエント風の「死者との交信」儀式に使われたといえるのかどうか、だ。
そして誰がこの儀式を行ったのか。

2世紀~ということは、時期的にバル・コクバの乱のあとエルサレムが破壊され、ユダヤ人が追放されて別の住民が定住させられていたあたり。ということは、この儀式を行ったのもユダヤ人ではなく、近隣のシリア、エジプト、アナトリアなどからやってきた人々だったのだろう。この儀式の痕跡がギリシャ風、というか東地中海の伝統っぽい異教的なものに見えるのは、そのせいだろう。
ローマ国内でキリスト教が国教化され、異教が厳しく禁止されていくと痕跡が途切れるのだとすれば、解釈的には無理がない。

古代に死者の声を聞いた洞窟。オカルティックだが自分はこういうの好きなほうなので、ちょっと行ってみたいなぁとか思ってみたりする。
冥界への入り口、楽しそう。