ロバという便利な生き物について。それは人類が最初に手に入れた「運搬道具」だった
突然だが、「ロバは人類が手に入れた極めて優れた荷物運搬用の使役動物だった」という話をしたい。
よく古代エジプトには荷車が無かった、車輪が発明されなかったという話が出てくるが、そもそもエジプトは家畜ロバの原産地に近く、かなり早い段階からロバを使役していたと考えられる。便利なロバがいれば、敢えて荷車を開発する必要もなかったからだというのが自分の意見になる。
ロバの背中にカゴをつけて、そこに荷物を突っ込めば、それだけで荷車の用途は足りるのである。
※こちらはヨルダンの観光地(ペトラ遺跡のあるあたりの岩山へ続く階段)で撮影したもの

家畜としてのロバの起源はおそらく東アフリカで、約7000年前(つまり紀元前5000年)という古い時代だと推測されている。
ロバの家畜化起源地は東アフリカか。DNAの研究で示唆される
https://55096962.seesaa.net/article/491479269.html
おとぎ話では愚鈍の象徴として扱われ、ウマやラクダより一段劣るものに思われがちなところもあるロバだが、実はウマやラクダよりも「耐久性の高さ」と「小回り」という面で優れている。
ウマは一般にロバより体が大きく、走る速度も早いのだが、性格が繊細で、蹄が割れやすい。また食べられるものが結構限られている。
そもそもウマという種は貧弱だ。柔らかい草しか食べられないくせに筋肉質だから、地球上でも限られた場所でしか生息できなかったし、アメリカ大陸では絶滅してしまった。イギリスなどでは炭鉱で働くポニーも使われていたが、基本的な耐久性ではロバに劣る。
ラクダなら枯れ草でもサボテンでもバリバリ食たべるし砂漠では強いのだが、体が大きすぎて集落の中では使いづらい。また湿度がある場所にはあまり適さない。そして前提を言えば、気性が荒い者が多く力が強い分、飼いならす技術が必要で、だからこそ家畜化された時期はウマよりも遅い。
一方のロバは小柄で、適応できる範囲が広い。冒頭の写真のごとく狭い路地でも荷物を運んでくれる。走る速度は期待できないが、能天気さと頑丈さ、とにかく何でも食べられる意地汚さ、ウマやラクダに比べると一般的に従順で飼育しやすいところが、過酷な土地でも運用に向いている。
寒いところから暑いところまで、湿原から乾燥地帯まで、幅広くカバーできるのはロバなのだ。
このロバ、近代においても様々な国で見かける。エチオピアのようなあまり裕福でない国では、車を所有してガソリン代を支払えるのはごく一部の人だけだ。多くの労務はロバが担っている。
しかしそのロバさえも使えない貧しい人々はおり、そうした人々が顔を歪めながら重たい薪を背負っていく姿もしばしば見かけた。同じ量でも、ロバは涼しい顔で運んでいく。ロバは0.3馬力ほどだそうだが、それでも人の代替としては十分なのだ。

ロバをあまり高く評価しすぎるとその道の専門家に怒られそうだが、自分は、古代エジプトやメソポタミア文明の影の立役者はロバだと思っている。
建築現場で働く作業員への飲水や食料の運搬で、陸路部分はロバが担っていたとしたら、果たしてこのロバという便利な運搬用家畜なしにピラミッドが建てられただろうか?
沙漠遠征のお供だったロバ抜きにして、遠方の物資は入手できなかったのでは?
メソポタミアではロバ騎兵がいたことが知られているが、戦場に戦士を運搬するロバ抜きでは都市国家の戦争は成り立たなかったのでは?
大規模な建築や物資・人の運搬、戦争など、ロバは実に幅広く文明の成立に関わってきた。ちょっと抜けた顔をした、ただのお気楽な獣ではなかったのだ。人類はもっとロバに親しみを持ってもよいと思う。たぶん向こうは迷惑だろうけど。
よく古代エジプトには荷車が無かった、車輪が発明されなかったという話が出てくるが、そもそもエジプトは家畜ロバの原産地に近く、かなり早い段階からロバを使役していたと考えられる。便利なロバがいれば、敢えて荷車を開発する必要もなかったからだというのが自分の意見になる。
ロバの背中にカゴをつけて、そこに荷物を突っ込めば、それだけで荷車の用途は足りるのである。
※こちらはヨルダンの観光地(ペトラ遺跡のあるあたりの岩山へ続く階段)で撮影したもの

家畜としてのロバの起源はおそらく東アフリカで、約7000年前(つまり紀元前5000年)という古い時代だと推測されている。
ロバの家畜化起源地は東アフリカか。DNAの研究で示唆される
https://55096962.seesaa.net/article/491479269.html
おとぎ話では愚鈍の象徴として扱われ、ウマやラクダより一段劣るものに思われがちなところもあるロバだが、実はウマやラクダよりも「耐久性の高さ」と「小回り」という面で優れている。
ウマは一般にロバより体が大きく、走る速度も早いのだが、性格が繊細で、蹄が割れやすい。また食べられるものが結構限られている。
そもそもウマという種は貧弱だ。柔らかい草しか食べられないくせに筋肉質だから、地球上でも限られた場所でしか生息できなかったし、アメリカ大陸では絶滅してしまった。イギリスなどでは炭鉱で働くポニーも使われていたが、基本的な耐久性ではロバに劣る。
ラクダなら枯れ草でもサボテンでもバリバリ食たべるし砂漠では強いのだが、体が大きすぎて集落の中では使いづらい。また湿度がある場所にはあまり適さない。そして前提を言えば、気性が荒い者が多く力が強い分、飼いならす技術が必要で、だからこそ家畜化された時期はウマよりも遅い。
一方のロバは小柄で、適応できる範囲が広い。冒頭の写真のごとく狭い路地でも荷物を運んでくれる。走る速度は期待できないが、能天気さと頑丈さ、とにかく何でも食べられる意地汚さ、ウマやラクダに比べると一般的に従順で飼育しやすいところが、過酷な土地でも運用に向いている。
寒いところから暑いところまで、湿原から乾燥地帯まで、幅広くカバーできるのはロバなのだ。
このロバ、近代においても様々な国で見かける。エチオピアのようなあまり裕福でない国では、車を所有してガソリン代を支払えるのはごく一部の人だけだ。多くの労務はロバが担っている。
しかしそのロバさえも使えない貧しい人々はおり、そうした人々が顔を歪めながら重たい薪を背負っていく姿もしばしば見かけた。同じ量でも、ロバは涼しい顔で運んでいく。ロバは0.3馬力ほどだそうだが、それでも人の代替としては十分なのだ。

ロバをあまり高く評価しすぎるとその道の専門家に怒られそうだが、自分は、古代エジプトやメソポタミア文明の影の立役者はロバだと思っている。
建築現場で働く作業員への飲水や食料の運搬で、陸路部分はロバが担っていたとしたら、果たしてこのロバという便利な運搬用家畜なしにピラミッドが建てられただろうか?
沙漠遠征のお供だったロバ抜きにして、遠方の物資は入手できなかったのでは?
メソポタミアではロバ騎兵がいたことが知られているが、戦場に戦士を運搬するロバ抜きでは都市国家の戦争は成り立たなかったのでは?
大規模な建築や物資・人の運搬、戦争など、ロバは実に幅広く文明の成立に関わってきた。ちょっと抜けた顔をした、ただのお気楽な獣ではなかったのだ。人類はもっとロバに親しみを持ってもよいと思う。たぶん向こうは迷惑だろうけど。