「黒檀」(ebony)の語源は古代エジプト語から。だがアジアの「黒檀」とエジプトの「黒檀」は別物だった

黒檀の語源は古代エジプト語、っていうの見かけて、んっ黒檀ってアジアにしかなくないっけ? と思ってちょっと調べてみた。
結論から言うと、「黒檀」と呼ばれている植物の中には複数の種類があり、アジアの黒檀とアフリカの黒檀は別だった。
というか黒檀という言葉じたい、「黒い木材」を意味するバズワードのようなものだったのだ。

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古代エジプト人にとっての「黒檀」とは、アフリカン・ブラックウッド(学名:Dalbergia melanoxylon)のことだった。
エジプト内では育たないため、エチオピアからソマリアあたり、要するに古代の「プントの国」に近いところから輸入されていた。この木材はマメ科の広葉樹。(なので、日本語Wikiに書かれている「カキノキ科カキノキ属の熱帯性常緑高木の数種の総称」というのは間違っている)

成長が遅く、木材として使えるようになるまで60年もかかっていたらしい。だが木材としての価値は高いので、伐採されすぎて現在は絶滅に瀕しているという。
有名な「デン王のラベル」も、黒檀製と言われるが、実態はこのアフリカン・ブラックウッドだ。

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で、この輸入ものの黒檀のことを古代エジプト人は「ヘブニ」と書いている。
これがギリシャ語に入り、のちに英語のebonyになった、という流れ。

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https://dianabuja.wordpress.com/2012/10/02/modern-words-that-survive-from-ancient-egypt-what-how-and-why/

それがアジアの「黒檀」の英訳になったのでちょっと話がややこしくなった。
真っ黒で加工しづらいのは共通しているが、アジアの黒檀はアフリカの黒檀と種類が別で、だいたいがカキノキ科カキノキ属。要するに英語のdragonと東洋の竜は別物なのにお互いを訳語としてしまったために分かりづらくなってる。のような話である。

まあ、わかっちゃうとなんでもないんだけど。

それにしても、古代エジプト語の単語が意外なところで生きてるもんだなあ、と思ってしまった…。