生類憐れみの令と「御犬医者」、犬に小豆を与えて元気になるのは何故なのか

江戸時代、五代将軍・綱吉の時代に発令された「生類憐れみの令」は悪法として有名だ。インパクトのある法律なので、社会科の授業で習って覚えている人も多いと思う。
この時代、犬は人よりも大切にされ、怪我をさせたり殺したりすると極刑、野良犬は集めて飼われ、怪我や病気になると医者に見せていたという。

で、その「犬専用の医者」、御犬医者というものがちょっとおもしろい。
というのも、現代で言う獣医ではなく、やぶ医者というか、適当な薬を処方してそれっぽく振る舞っていただけで商売になったらしいからだ。
それも、何故か小豆を粉にしたものを薬として与えている。

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出典元:「犬の日本史/吉川弘文館」

いずれの犬医者も何故か小豆の粉を使っている。だが、なぜ小豆で元気になるのかがわからない。
ちょっと検索してみても論文などは見つからなかった。

ただ、「犬に豆を与えるのは大丈夫か」という質問に、「加熱していれば与えてもよい」「食物繊維が含まれているので体にはいい」というページは複数ヒットした。また、以前読んだ納豆の本で、「犬によっては納豆が好きで、美味しそうに食べる」という話が出てきていた。してみると、犬と豆自体は別に奇異な取り合わせではないらしい。

なぜ小豆を薬にしたのか。そして、それなりに効いたように見えたのか。
理由がわからないからモヤモヤする。
ただ一つ思いついた仮説があって、これは猫で言う猫草の役割をしたのではないだろうか。

この本のあとの方に、綱吉の時代は犬が過保護にされすぎて、餌に白米と煮干しを与えていたという。とすると、高カロリーな餌を与えられすぎて胃もたれしていた可能性があり、粉にした豆の食物繊維でお通じが良くなったのでは。
あくまで仮説だが、だとすれば、豆の粉薬が一定の効果を発揮するのは運動不足で高カロリーな餌を食べすぎている過保護な犬だけで、犬全般に効く万能薬ではない。特殊な状況でだけ有効なので、現代の飼育犬には特に必要というわけでもなく、同じ環境を作らなければ効果の検証が出来ないということになる。
この仮説が正しければ、論文など出てこなくても当たり前ということになる。

まあ、真偽の程はわからないのだが、小豆の粉を練った薬で財を築いた御犬医者たちは、実にたくみな詐欺師たちだったのだろうなぁと思う。