イスタンブールで見た像の正体。まさかの南アラビアだった

10年ほど前に行ったイスタンブール。
考古学博物館の敷地内にある「古代東方博物館」という建物の中にはエジプトやメソポタミアなど現在のトルコ国外に当たる周辺文化圏の遺物が陳列されていた。
その中にあって、どこの文化圏のものかわからんかったコレ。

https://55096962.seesaa.net/article/201208article_13.html

ふとしたことから見つけたよ…
こいつは…南アラビアの前一千年紀、多神教時代の死者の像だ…！



※出典元「イスラーム成立前の諸宗教」国書刊行会

首だけのやつは、もともとはこんな感じで壁に埋め込まれていたらしい。
また小型の妙に四角い像は墓の中に納められたもの。多くのものに死者の名前が刻まれていることから、神像ではなく死者本人の像だと考えられている。


出土地不明なのは、小型で持ち運びしやすいことからあちこち盗掘で持ち出されてしまったからだとか。
また元々は木製品や金属製のものもあったはずで、金属製のものは溶かして再利用されて残っていないそうだ。

あと、エチオピアのアディス・アベバ国立博物館で見た謎の像の正体もだいたいわかった。
左側のが香炉で、右側のが奉納者(デカいので王とかかも?)の像だ。

https://55096962.seesaa.net/article/201906article_5.html

四角い台座に奉納者の名前が刻まれた、似た形式の香炉が南アラビア出土品の中にある。
南アラビアは香料の産地だ。乳香や没薬、それ以外にも様々な種類の香料を算出していたという。だからこそ香炉がたくさん作られた。





エチオピアも、南部や海沿いでは香料を算出できるから、似た形式のコレが作られたのかもしれない。
もしくは南アラビアから渡ってきた人が作らせたか。
エジプトとメソポタミア双方の影響を受けてそうな見た目なのも当然で、南アラビアは地理的にその中間にあり、香料の輸出先がそれら李地域だったので交易商を通じて繋がっている。



まあ、今ならグーグルで類似画像検索でもすれば出てくるんでしょうけど。当時はそういう野無かったし、グーグルレンズでトルコ語翻訳するとかも出来なかったしな…。(ちなみにエチオピアで見た遺物のほうはマジで情報がほとんどない)

というわけで、わかると「なあんだ」なんだけど、ノーヒントで見た目と手がかりだけから遺物の所属する地域と時代を特定するのは結構大変、という話。
いやあすっきりした。