古代エジプトの葬儀代はおいくら万円か。来世の値段は安くない

葬式代が高ぇよ! みたいな話も聞くけど、まあ高いよなとは私も思っている。ただ世の中、儀式というものはそういうもので、ケチるものでもなく金をかけてやるのがステータスシンボルというか意味をもたせるためには必要、みたいなイメージである。

前置きはさておいて、古代エジプトの葬式代の話をしよう。
前提として、古代エジプトでは最初はミイラになれるのは王や重臣など限られた人々のみだった。しかし末期王朝ごろからミイラづくりが量産化され、松竹梅でコースを選べ、庶民もミイラにして貰えるようになってきた。近年、サッカラで発掘されていたミイラ工房などは、まさにその時代の代物である。

古代エジプト末期、ミイラづくり工房の発掘まとめ
https://55096962.seesaa.net/article/202005article_27.html

で、具体的なお値段の試料どっかあった気がする…と思って本棚漁ってみたら、あったですよ。こちらですよ。

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※出典元「ミイラの謎」 知の再発見叢書42

ファイユーム・パピルスの一つで紀元後の話なので、ファイユーム・ポートレートで有名なグレコ・ローマン式のミイラで庶民のものに対するお値段と思われる。が、まあ…うん、お高いですよこれ。ガテンの日給1ドラクマとかの世界なんで、めっちゃ貯蓄してないとこれは支払えない。
計算間違えているという補足が書かれているが、肝心のミイラ本体を作るお値段が明細に明示的に書かれていないので、おそらくそれを足して総額がこれなのでは、と思う。書かれているのはミイラづくり以外のオプション部分に見えるからだ。

で「布」の部分がかなりの額を占めるのが驚き。
この時代のファイユームのミイラはこんな感じで芸術的な布の巻き方をしているのが特徴なのだが、新品用意するとこんなかかるんだ?! みたいな。
マスクや棺は意外とそんな高くない…。

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意外に高額なのが泣き女の部分で、これはミイラを墓に安置する日一日分の額のはずだから、雇った人数は一人二人ではない。かなり葬儀に派手にお金をかけたケースにはなるかと思う。

まとめると、葬儀代はやはり「お高い」。
ミイラにすること事態のお値段より、葬儀オプション代が結構かかる。今で言うと焼き場代はそんなでもないけど棺に骨壷、葬式の時に立てる花とか、親戚や近所の人を招いての宴の規模とかでお金が飛んでいく感じ。
しかし古代エジプト人的には、きちんとミイラになって立派な墓に納められて、皆に嘆かれて死を記憶されていないと来世で復活出来ないのだから、これは必要な出費だったのだと思う。

古代も現代も、死の儀式は家計の準備が大変なんだなと、しみじみ思いますはい。

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あとで思い出したけど、「古代エジプト埋葬習慣」という本におもいっきり値段の解説ありましたね…
一章使って解説してくれてた。

(031)古代エジプトの埋葬習慣 (ポプラ新書) - 和田 浩一郎
(031)古代エジプトの埋葬習慣 (ポプラ新書) - 和田 浩一郎