古代エジプト王朝とヌビアの金: 金鉱の数はなんと250、でも総算出量は…

古代エジプト王朝がどのくらい金を掘り出していたのか、どうやって掘っていたのかなどについては以前記事にまとめた。
現代基準で22.5カラットまでの純度で高級品を作れたようなのだが、そこまで純度の高いものは一部に限られる。また、新王国時代にガンガン掘ってた時代でも1トンくらいしか記録がなく、さすがに手作業だと効率が悪かったんだなという感じ。

ツタンカーメンのマスクの金の純度と、古代エジプト人が作れた最高純度とは
https://55096962.seesaa.net/article/201805article_5.html

古代エジプト/ヌビア独立と金 エジプト統治時代と独立後の金の流れ
https://55096962.seesaa.net/article/201205article_12.html

で、今回、「確認されている金鉱の数はエジプト東部~ヌビアで250箇所ある」という記事を見つけて、ん? となった。そんなに数あんの?
調べてみたら、マジ250箇所踏破してる人たちがいた。疑ってごめんなさい…

Gold of the Pharaohs – 6000 years of gold mining in Egypt and Nubia
https://www.academia.edu/29416145/Gold_of_the_Pharaohs_6000_years_of_gold_mining_in_Egypt_and_Nubia

本文中に登場する「Arabian-Nubian Shield (ANS)」とは、アラビアーヌビア盾状地 という地形名である。
この図がわかりやすいのだが、紅海沿岸のこの地形の部分に大量の金鉱が眠っている。ただし一つ一つの金鉱の規模が小さいため、南アフリカみたいに露天掘りでドーン! と大量に掘り出すということが難しい。

Gold-occurrences-in-Arabian-Nubian-Shield-ANS-compiled-from-Kochine-and-Bassyuni.png

https://www.researchgate.net/figure/Gold-occurrences-in-Arabian-Nubian-Shield-ANS-compiled-from-Kochine-and-Bassyuni_fig1_312503404

考えても見てほしいのだが、古代にはシャベルもトラクターも粉砕機も無い。もちろん金を見つめるための金属探知機もない。
石の斧とか青銅のノミでありそうな岩盤を手作業で掘削、原石が出てきたら手作業で砕いて粉にして、ふいごでフーフーしながら炉で溶かして…、という全て手作業での金づくり。そりゃあ大変に決まっている。
しかも場所はエジプトの東砂漠かヌビアの荒野。

写真見るだけでだいぶキツそう。
現代なら車があるとはいえ、ここの金鉱回ってマーキングしていった調査隊の人たちめっちゃお疲れ様。

454798950.png

で面白いなと思ったのは、これらの金鉱のいくつかはアラビア支配時代、紀元後1350年頃まで掘られていたらしいという話だ。
現代でも宝探しのように金を探している人はいるとナショジオの番組でやってたのを見たことがあるが、それは遺跡荒らしの一種だった。マジメに金鉱から掘ってる人も最近までいたのだ。
というか、よく調べてみると、実は金鉱は枯れてはいないらしい。小規模な金鉱が点在する地域なので金自体はまだある。ただコスパが悪いので掘らない/掘れないのだという。

※ただしエジプト側では、近年になって金鉱の再開発に乗り出した
※その後の話を聞かないので成果のほどは分からない

あの栄光をもう一度。エジプトさん、東部砂漠の金の採掘権の入札開始
https://55096962.seesaa.net/article/202003article_13.html

また、冒頭の論文の最後に出ていた「これら250箇所の金鉱全部の量を合計しても、現代の南アフリカの月間総産出量に満たない」という結論に、ちょっと泣いた。
手作業だしなあ…。

ファラオ時代に掘った分で全体の40%の約7トン。残りがローマ時代とアラブ時代で30%ずつ、合計17.5トン程度の産出量だそうだ。
古代世界的には多いのかも知れないけど、現代基準だとしょっぱい。たまに「金の密輸で1トン発見されました」とかニュースで流れてるくらいだしね。

ただ、その超貴重だった金を惜しげもなく墓に突っ込んだ歴代ファラオはやはり凄まじい財力を持っていたのだろうし、後世にさんざん墓荒らしに遭ったのも当然だった、と言えるだろう。