エスナ神殿の天井画クリーニング・修復から、新年の神話の場面が明らかに。星と神話の物語

数年前から実施されているエジプトのエスナ神殿の天井画のクリーニング作業。
ローマ支配時代に作られたもので、エジプトの神殿の中では新しい部類に入るため残りは良い。今までにも色んな絵が復活しているが、今回は「新年」の絵が見つかったという話。

ちなみに古代エジプトの新年は、ナイルの増水が始まる7月半ば(7/19ごろ)である。9月と書いている本もあるが、それはコプト暦の新年であり、古代暦の一つには違いないが、コプト教(キリスト教)布教後の日付になる。ローマ支配の時代だと両方使われていて微妙なのだが、ここに描かれている内容は古代エジプトの伝統的な神話の話なので前者の7月半ば元旦の暦の話になる。

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Ancient New Year's scene from Egypt uncovered on roof of 2,200-year-old temple
https://www.livescience.com/archaeology/ancient-egyptians/ancient-new-years-scene-from-egypt-uncovered-on-roof-of-2200-year-old-temple

※クリーニング前と後の比較写真あり

船に乗っているのは左からオリオン座を神格化したサフ、シリウス星の神格化であるソティス、ナイルの増水を司るアスワン地方の女神アンケト。サフとソフィスはそれぞれオシリスとイシスに対比され、夫婦神。またシリウスが瞬くと増水の季節に入るとされていたことから、ともにナイルの増水に関わる神々となる。また、アンケト女神は水源を決壊させて増水を起こしたあと、増水開始から100日後に水源を締めて増水を終わらせると考えられていた。

ナイルの増水によって新年が開始する暦なので、これらの神々が一年のうち新年シーンに描かれるのは妥当。
これまで明らかになってきた内容からして、エスナ神殿に描かれているのは特定の神に係る内容や特定の神話というよりは、天文に関わる神話の物語のようだ。逆に、なんでこの時代にこの神殿作ったんだろう、という疑問も浮かぶ。

※たとえば、デンデラのハトホル神殿はクレオパトラをハトホル=イシス女神に見立てて作られており、壁画にでかでかとクレオパトラ7世がいるので、パトロンとなった王家の意図が分かりやすい

いやあ、いいなこの神殿。修復終わったらいつか行ってみたいなー。
やっぱ神殿の浮き彫りは、彩色が残ってるほうが雰囲気がね。

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★ここまでのおさらい

エジプト・エスナの神殿をクリーニングしていたら新しい「星座の名前」が見つかった、という話
https://55096962.seesaa.net/article/202011article_23.html

エジプト・エスナ神殿のクリーニングが完了する。浮き彫りがキレイだ…
https://55096962.seesaa.net/article/488135611.html

エジプト・エスナ神殿(プトレマイオス朝に建造)から黄道十二宮の星座が特定される。
https://55096962.seesaa.net/article/498808684.html

エスナ神殿のキメラ生物の起源、辿ってみたら古バビロニアに行きついた
https://55096962.seesaa.net/article/498927170.html