サハラ以南の現生人類にもネアンデルタールのDNAが入ってる…? 研究結果が予想外の方向に

まずは、前提なる話からざっとまとめる。

・現生人類(ホモ・サピエンス)とネアンデルタールは別物とされていた
・塩基配列の分析が可能になり、共通するDNAがあると判明。どこかのタイミングで交雑していた
・ネアンデルタール以外にもデニソワ人とも交雑してたと判明。これらの交雑はユーラシア大陸で起きたためアフリカ先住民にはDNAが受け継がれていないと考えられていた
・しかし実はわずかながら受け継がれていた。サハラ以北のアフリカ人は、おそらく歴史期にヨーロッパから人が移住したなどで混じったのではとされる
・サハラ以南の先住民からもネアンデルタール似のDNAが出てきた。これはどこから来た…?

 ↓ ↓ ↓
<今回の研究内容>

約25万年前、ネアンデルタールの祖先がアフリカを出る前に原生人類の祖先と交雑した痕跡と考えられる。
その現生人類の系統はのちに絶滅してしまったため直接の子孫はおらず、交雑の結果残った痕跡だけが見られる。


時間軸のスパン長すぎて分かりづらいのだが、要は「ネアンデルタール→現生人類」の流れだけでなく「現生人類→ネアンデルタール」で受け継がれたDNAもある、ということらしい。論文がちょっと専門的すぎて門外漢には理解が追いつかないところもあるが、サハラ以北と以南では事情が異なり、「ネアンデルタール由来」のDNAではなく「ネアンデルタールの祖先に受け継がれた現生人類由来」のDNAだった、という話になるかと思う。

aaz0183-f1.jpg

要約
Neanderthals carried genes acquired from ancient interactions with ‘cousins’ of modern humans
https://penntoday.upenn.edu/news/neanderthals-carried-genes-acquired-ancient-interactions-cousins-modern-humans

元論文
Diverse African genomes reveal selection on ancient modern human introgressions in Neanderthals
https://www.cell.com/current-biology/fulltext/S0960-9822(23)01315-5

原生人類とネアンデルタールの祖先が分離したのは50万年ほど前とされる。現生人類が種族として確立されるのが20万年前くらい。当然ながら、分離してからの時間が早いほど種族としては近いので、25万年前の現生人類は、今生きている我々よりはネアンデルタールに近かったはず。で、混じったあとのネアンデルタールはアフリカを出て、他のネアンデルタールと交配していくことになるのだが、そこで現生人類のDNAが一部、引き継がれていった、ということらしい。

ただ、これだけ昔の話だと、化石などからDNA抽出して証拠を見つけるわけにも行かず、交雑がアフリカのどこだったのか、規模はどのくらいか、といった具体的な話もしづらい。ある意味、コンピューターを使って分析したシミュレーション結果だけの机上の空論になってしまうのだが、サハラ以南の多くの先住民にごく僅かながらネアンデルタールと共通するDNAがある、というのは現実なので、なんとか説をひねり出すことこうなるんだろうな、とは思った。

人類の進化系統樹は、細かく見ていくとかくも複雑な話になるのだ。うーん。
毎回言ってる気がするけど、このジャンンル研究してる人…頑張って…。

*なお最近の研究だと以下のようなものもある

人類の「出アフリカ」は一直線の道ではなかった。最近のトレンド学説が複雑怪奇に
https://55096962.seesaa.net/article/499465184.html