大ピラミッド前のスフィンクス、元の岩はどのくらい「風化」していたのか。シミュレーションしてみた結果とか

有名な、ギザの大スフィンクス。ピラミッド前に鎮座するアレは、実は今も風化が進んでいて、近年も何度も修復が行われている。元々が脆い岩なのだ。
その風化は、天然の岩が砂から掘り起こされ整形されたときから始まっていた。
だが、整形される以前にも、それなり風化は進んでいたかもしれない。

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…という話を見かけたのでメモがわりに。
元々風化していてスフィンクスっぽいシルエットがあったから、岩をどけずに逆に周囲を彫り込んでピラミッド複合体に組み込んだのだ、という説は、別に新しいものではなく昔からある。が、わざわざコンピューターシミュレーションで風向きとか浸食方向とか考慮して理屈つけてるのは珍しいかな。

Sphinx may have been built from a natural rock feature eroded by wind, study claims
https://www.livescience.com/archaeology/ancient-egyptians/sphinx-may-have-been-built-from-a-natural-rock-feature-eroded-by-wind-study-claims

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基礎知識として、スフィンクスは三層の岩盤の境目に存在する。
首から上はピラミッドの基盤になっている岩盤で硬い。しかし首から下は、柔らかい砂とサンゴ礁の地層。エジプトのあたりが海の底だった時代の堆積物だ。
そのため境目となる首のあたりの侵食が進んでいるのだが、首から上だけ別の岩で作ったというわけではない。(これ勘違いして書いてる本も、古い本だとたまーに見かける…)

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柔らかい胴体部分は浸食を受けやすく、元々細長い体の基本的な形は出来ていた可能性がある。で、ピラミッドづくりを指示した王様か誰かが、「ちょうどええとこに岩在るやん。これスフィンクスにしたらオブジェならへん?」と思いついて、途中追加した可能性はある。
スフィンクスがピラミッドの真正面ではなくちょっと斜めに位置がズレてるのも、スフィンクスを避けるために参道が斜めになってるのも、あとから「この岩残そう」と決めたからだとすれば辻褄はあう。

ピラミッド本体もそうだが、複合体自体、けっこうその場の思いつきで作った雰囲気があるので、これは説としてはアリだと思うのだ。まあ…岩まるごと削ってどけるのと、存在しなかっただろう前足やおしりのあたりを彫刻して顔を整形するの、どっちが楽だったかは微妙だが…労力の問題じゃなかったんだろうな。たぶん。

あと胴体の大きさに対して顔が小さすぎる、というにも昔から言われているけれど、天然石の元あった形が基本だったのなら、複雑なこと考えなくても、多少バランス輪悪くなるのも仕方ないかな。


約五千年前の、彫刻が施される前の岩の状態がどうだったかなど分からないので、この説を立証することは難しい。ただ、一つの説としてはアリだと思う。