リビアン・グラスの生成過程に関する新説(?)が出る。今後の動向次第かな

リビアン・グラスとは、エジプトの西からリビアにかけての砂漠地帯に点在する黄色い鉱物。ツタンカーメの胸飾りにも使われていたことで知られる。名前の通り「ガラス」状の鉱物なのだが、なんで砂漠の真ん中にそんなものがあるのかはっきりしていなかった。高温で溶けたと思われることから、隕石爆発に由来する、火山に由来する、落雷によるもの、など、様々な説が出されていた。

そんな中、「ついに謎が溶けたぞ!」とドヤ顔で隕石爆発説を押してきた記事が出ていた。

Libyan desert’s yellow glass: how we discovered the origin of these rare and mysterious shards
https://theconversation.com/libyan-deserts-yellow-glass-how-we-discovered-the-origin-of-these-rare-and-mysterious-shards-217565

↓リビアン・グラスの分布場所はこのへん
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↓今回分析されたサンプル
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使ったのは透過型電子顕微鏡(TEM)で、TEMでは、紙の厚さの2万分の1という小さな物質の粒子を見ることができるらしい。で、鉱物を詳細に分析した結果、この石は2900万年前に生成されており、隕石由来だというのだ。年代的には以前から言われていたとおりなのだが、詳細な元素まで見て宇宙由来の可能性が高いと言われると、んーそうなのかなー という感じ。ここは専門外なので生物については何とも言えない。

ただこの分析の甘いところは、分析した数が少なすぎるということ。
リビアン・グラスはご覧のとおり広い範囲に分布しているため、場所による成分の差異はないのか、せめて二桁は分析して表出してほしいなという感じ。あと、クレーターが見つかっていないというのはこの記事にも書かれているとおりだが、そもそも、この広範囲に隕石の爆発だけで散らばるのか? というのが疑問。今までの隕石爆発説も、クレーターがない・範囲が広すぎる・そもそも地表だけじゃなく深いところからも石が見つかる で決定打にならなかったはずなのだ。

ここは、確実にそうだと言い切るためにはもうちょっと詰めてほしいなあ。


なお、場所は違うがサハラには、既に発見されている巨大クレーターらしきものがある。このクレーターがリビアン・グラス生成の原因ではという説も以前はあったが、成分が全然違ってたらしくてその後いつのまにか消えていた。

エジプト西部砂漠とリビアン・グラスの謎~巨大クレーター「ケビラ」の成分分析
https://55096962.seesaa.net/article/201807article_15.html

また、リビアン・グラスは実は黒曜石ポジションで、固くて割れた所は刃物として扱える。オアシスに近いところや、かつてサハラが乾燥化する以前に人が住んでいたところは、人間が拾って利用してしまって無くなってる可能性も無くはない。つまり現在の分布が大昔から変動していないのかは疑問が残る。

リビアン・グラスの使い方/ツタンカーメンの胸飾りにあるあの黄色い石は…
https://55096962.seesaa.net/article/201909article_24.html

世の中は隕石原因説に傾いてはいるんだが、もし隕石が原因でリビアン・グラスが生成されたのだとしたら、世界の他の地域の隕石ではなぜガラス状物質が生成されないのか等、条件が明らかにならないとしっくりこない。謎はまだ、解明されていないなと思う次第。