古代エジプトのオーパーツ! サッカラの飢餓像! →そもそもエジプトのじゃない

記事タイトルで即落ち2コマみたいになってるのだが、まあそういうことです。

史実としてのイムホテプについての記事を書いたあと、イムホテプの時代に飢饉が起きた証拠として「サッカラの飢餓像(The Starving of the Saqqara)」を挙げている人を見つけて何じゃこりゃと思いながら辿っていたら、どうやらこの像につけられた”通称”の「サッカラ」という地名から、エジプトの古い時代のものだと勘違いした人がいたらしい。

日本語の記事もあった。

古代エジプトで発掘された「サッカラの飢餓像」のミステリー! 歴史を逸脱した“オーパーツ”か!?
https://news.biglobe.ne.jp/trend/0812/toc_230812_4432517818.html

何かめちゃくちゃ勘違いされまくった結果の記事なので、こちらで情報を整理させてもらうことにした。

所有するカナダ/コンコルディア大のページ
https://www.concordia.ca/arts/diniacopoulos/egyptian-antiquities/sculpture-investigation.html

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まず この像は、エジプトで発見されたものではない。
というか発見地は不明であり、本物か偽物かすら分かっていない。大学が所蔵するようになったのは1999年からで、ギリシャ人のディニアコプロス夫妻が集めたコレクションの寄贈だという。1950年頃には既に知られていたらしいが、それ以前の来歴が残っていないため、いつどこで見つかり、どう所有されたのかが分からない。

この像に言及するエジプト学者や古代エジプトの本は見当たらないと思うが、それはこの像の存在が学者によって隠されているとか、オーパーツだからとかの陰謀論ではなく、背面に書かれている文字がビブロス文字だと特定されているからである。
そう、この時点で「エジプトのものじゃないじゃん」になって話が終わるんである。

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解読の試みは以下とか
https://jiroftscript.quora.com/The-Starving-of-the-Saqqara

この像はユダヤ人がエジプトから追放された時代のものでは?! という説まで出てきているらしいが、人物名がユダヤ人のようにも見える、という話から来てるのかなと思う。まあ像の見た目からしてエジプトっぽくないので、文字からしてもレバント産の可能性のほうがありそうだ。
ちなみに「背後に解読出来ない未知の古代文字が書かれている」としている記事もあるが、ビブロス文字は完全な解読がまだされていないので、「解読できない」までは正しい。「未知の古代文字」の部分は間違い。

誕生したのがヒエログリフなどよりはるかに新しい時代で、そもそもヒエログリフを元にして作られた文字の一つであるビブロス文字が書かれている以上、先王朝時代のものとかオーパーツとかいうセンは考えられない。また、そもそも飢餓像と名付けられているが、飢餓状態にあるようにも見えないのだ。てかこれ普通に見れば「双子の像」じゃない…? w 双子の赤ん坊像とかだと思うんだけど。後世に付けられた根拠のない通称に引っ張られ過ぎなのでは。

自分は、ヨルダンで見たアイン・ガザルの像の系譜だと思った。この像はなぜか双頭のものが多く、双子に宗教的な意味があった文化を想像していたからだ。

この像をエジプトの先王朝時代のものと考える人は身代わりの首あたりを想像していたのではないかと思うが、美術様式が違いすぎるので、さすがにエジプト学者も「(エジプトだとすると)系統不明」って言うしかないと思う。

分かっている情報を整理してしまえば、特に不思議なこともなく、むしろ記事にするほどの内容もない、世界中にたくさんある「出土地不明の遺物の一つ」。たまたま通称にエジプトの地名が名前についていたから、エジプト遺物と勘違いされてエジプトカテゴリに入ってきちゃっただけの品である。なんでオーパーツになるのかは全然分からない。やるならせめて「ビブロス文字はあとから書き足されたもの!」とか「これはビブロス文字に見えて実はアトランティスの失われた言語!」とか話膨らましてからにしないと。

コタツ記事書くにしても、もうちょっとこう。