名大文学部創立75周年記念講演会・シンポに紛れてきた。エチオピアの人文的に不遇な立場とか
さいきん休日はお仕事関連のウェビナーとかが入れられてたりしたところ、今回は空いてたので久しぶりに人文系のシンポで一般参加枠にこっそり紛れ込んできた。エジプト関連の発表があるので。てかまあエジプトのお二人は発表物だいたい把握しているので、エチオピアの方を楽しみに…w
今回は人文学におけるデジタルアーカイブスがテーマで、比較的若い先生方が発表。
一人目の発表者は羊皮紙やパピルスの文書をデジタル文書に起こしてデータベースにするというお話。ヒエログリフやコプト語などを実物の写真見ながらXMLに起こしていく作業はなかなか大変そうだった。
二人目の発表者はピラミッドの画像を3Dデータベース化して現地に行かなくても詳細に見られるようにしたというお話。
三人目の発表者は現地で歴史や文化が失われてしまった不遇のエチオピア南部の人になんとかして使えるデータを提供したいけど、デジタル化したデータでは現地の人が使えなかった、そもそもインターネット普及してない…。という切ない話。
この三人目の方のエチオピア南部の話が面白かった、というか、分かりすぎてしまったんである。
中の人、エチオピアに行った時、全く同じことやったからw あの国、インターネット事情が最悪なんである。速度遅い、よく切れる、しかも乾季に行ったためホテルのWi-fiすら間に三回くらい停電を経験した。ネカフェは一件だけ見つけたんだけど、そこもすっげえ遅かった。バックボーンがだめすぎる。
そして都市部でないとそもそも電気通ってなかったりする。
なので、口伝だった文化や歴史が失われた地域で、デジタルアーカイブを作って現地の人にそれらを取り戻してもらおうとしてもアクセス出来ない。出来た所で言語が英語やドイツ語だと意味が分からない。
まずアナログで、というところだが、現地語でパンフ作っても識字率が低いとどうしようもない。
これ南米で遺跡発掘してたチームでも同じような問題にぶち当たってたのを見た覚えがあるんですよね…。あなたたちの祖先の大事な遺跡なんですよ、と地元民に遺跡の管理をさせようとしても、まず下地の「歴史とは何ぞや」「文化財はなぜ守らなければならんのか」から作っていかないと根付かないという。
エチオピア北部は、もともとアクスム王国があり、ゲエズ文字があり、キリスト教が布教されていたので欧米の関心もあるが、南部はそもそも文字がなく、キリスト教圏でもないので人文学的に不遇である、という話も出てきた。なるほどと思った。ていうかまさに自分の興味のいだき方がそれだったので。うん、エジプトつながりで遺跡のある北部しか行ってない。ゴメンナサイ。
エチオピアは多民族国家だが、南部は特に細分化が激しいのもあって、各々の民族の歴史が残りづらいんだろうな。民族の独自言語すら、どう残していくかが問題に上がることもあるくらいだし。
もともと吟遊詩人が口伝で伝えていた歴史物語も今はほとんど消えてしまってる、というのは悲しい。
そして現地で説明される歴史が、かつてやって来た外国人の著書丸写しというのも、アフリカではよく聞く話ではあるが悲しい。
エチオピアはアフリカでは珍しく、列強の支配を受けずに独立を保った国なのだが、それでも、多民族国家だと支配民族の歴史が優先されて、それ以外は消えてしまうのだなと思った。
この状況だと、単純に残っている口伝や遺物をデータ化して保存しておくだけでは、現地の人はどうしようもない。文化財は人類の遺産、と大きなことを行っても、それらの担い手だった人たちが関与しないところに飾っているだけでは片手落ちだろう。
現地で失われた歴史をもう一度現地の人に還元するにはどうすればいいのか。これは非常に難しい問題だな、と思った。
あと、遺産をデータ化して誰でもアクセスできるようにすることで、遺産のオリジナルを管理することができなくなる可能性もあるというのは、なるほどと思った。たとえば、博物館が収蔵物をオープンアクセスにしてデータを公開すると、博物館に行く人が減って維持費が確保器亡くなる可能性がある。図書館にしても、オリジナルの書物を保管し維持し続けるのにはお金がかかるが、誰も現地に来ず、閲覧料も取れなくなってしまうと、それらのお金をどこから確保するか難しくなってくる。個人経営のような小さな博物館の場合は特に大きな問題になる。
何でもかんでもフリーでオープンアクセスにすることは良くないのだなあ…と、勉強させてもらった。
というわけで、久々の人文系シンポはけっこう楽しかった。
リモートはやっぱ楽でいい。休み時間にトイレ並ばなくていいしね…もうこれ系はずっとウェブでやってほしい…。
今回は人文学におけるデジタルアーカイブスがテーマで、比較的若い先生方が発表。
一人目の発表者は羊皮紙やパピルスの文書をデジタル文書に起こしてデータベースにするというお話。ヒエログリフやコプト語などを実物の写真見ながらXMLに起こしていく作業はなかなか大変そうだった。
二人目の発表者はピラミッドの画像を3Dデータベース化して現地に行かなくても詳細に見られるようにしたというお話。
三人目の発表者は現地で歴史や文化が失われてしまった不遇のエチオピア南部の人になんとかして使えるデータを提供したいけど、デジタル化したデータでは現地の人が使えなかった、そもそもインターネット普及してない…。という切ない話。
この三人目の方のエチオピア南部の話が面白かった、というか、分かりすぎてしまったんである。
中の人、エチオピアに行った時、全く同じことやったからw あの国、インターネット事情が最悪なんである。速度遅い、よく切れる、しかも乾季に行ったためホテルのWi-fiすら間に三回くらい停電を経験した。ネカフェは一件だけ見つけたんだけど、そこもすっげえ遅かった。バックボーンがだめすぎる。
そして都市部でないとそもそも電気通ってなかったりする。
なので、口伝だった文化や歴史が失われた地域で、デジタルアーカイブを作って現地の人にそれらを取り戻してもらおうとしてもアクセス出来ない。出来た所で言語が英語やドイツ語だと意味が分からない。
まずアナログで、というところだが、現地語でパンフ作っても識字率が低いとどうしようもない。
これ南米で遺跡発掘してたチームでも同じような問題にぶち当たってたのを見た覚えがあるんですよね…。あなたたちの祖先の大事な遺跡なんですよ、と地元民に遺跡の管理をさせようとしても、まず下地の「歴史とは何ぞや」「文化財はなぜ守らなければならんのか」から作っていかないと根付かないという。
エチオピア北部は、もともとアクスム王国があり、ゲエズ文字があり、キリスト教が布教されていたので欧米の関心もあるが、南部はそもそも文字がなく、キリスト教圏でもないので人文学的に不遇である、という話も出てきた。なるほどと思った。ていうかまさに自分の興味のいだき方がそれだったので。うん、エジプトつながりで遺跡のある北部しか行ってない。ゴメンナサイ。
エチオピアは多民族国家だが、南部は特に細分化が激しいのもあって、各々の民族の歴史が残りづらいんだろうな。民族の独自言語すら、どう残していくかが問題に上がることもあるくらいだし。
もともと吟遊詩人が口伝で伝えていた歴史物語も今はほとんど消えてしまってる、というのは悲しい。
そして現地で説明される歴史が、かつてやって来た外国人の著書丸写しというのも、アフリカではよく聞く話ではあるが悲しい。
エチオピアはアフリカでは珍しく、列強の支配を受けずに独立を保った国なのだが、それでも、多民族国家だと支配民族の歴史が優先されて、それ以外は消えてしまうのだなと思った。
この状況だと、単純に残っている口伝や遺物をデータ化して保存しておくだけでは、現地の人はどうしようもない。文化財は人類の遺産、と大きなことを行っても、それらの担い手だった人たちが関与しないところに飾っているだけでは片手落ちだろう。
現地で失われた歴史をもう一度現地の人に還元するにはどうすればいいのか。これは非常に難しい問題だな、と思った。
あと、遺産をデータ化して誰でもアクセスできるようにすることで、遺産のオリジナルを管理することができなくなる可能性もあるというのは、なるほどと思った。たとえば、博物館が収蔵物をオープンアクセスにしてデータを公開すると、博物館に行く人が減って維持費が確保器亡くなる可能性がある。図書館にしても、オリジナルの書物を保管し維持し続けるのにはお金がかかるが、誰も現地に来ず、閲覧料も取れなくなってしまうと、それらのお金をどこから確保するか難しくなってくる。個人経営のような小さな博物館の場合は特に大きな問題になる。
何でもかんでもフリーでオープンアクセスにすることは良くないのだなあ…と、勉強させてもらった。
というわけで、久々の人文系シンポはけっこう楽しかった。
リモートはやっぱ楽でいい。休み時間にトイレ並ばなくていいしね…もうこれ系はずっとウェブでやってほしい…。