銃が効率的に人を殺せるようになるまでの試行錯誤の歴史「火器の誕生とヨーロッパの戦争」

映画「ナポレオン」を見たあとに、ふと本屋で見つけた本がこれである。
映画自体はシュールギャグ過ぎて歴史ものとしてはかなり微妙だったのだが、戦闘シーンの火器の使い方/描写は面白いところもあったのだ。ナポレオンが行きていた18世紀の戦争における火器の扱われ方は、かなり終盤のほう。その前段には、長い試行錯誤の歴史が存在した。

火器の誕生とヨーロッパの戦争 (平凡社ライブラリー945) - バート・S.ホール, 市場 泰男
火器の誕生とヨーロッパの戦争 (平凡社ライブラリー945) - バート・S.ホール, 市場 泰男

スタートは13世紀頃。中国で発明されたという火薬がヨーロッパに伝わったところから、である。
中世史の概要などを知ってる人なら、以下のような概要を覚えているかもしれない。

・火器の登場によって騎士が衰退、プレートアーマーなど重たい防具も廃れていった
・大砲で城壁が破れるようになり、分厚い城壁が無用の長物に成っていった

しかし、火器の登場から威力が高まるまでは改良には何百年もの時間がかかっており、ことはそう簡単ではなかった。

そもそもヨーロッパ、硝石が取れなくて便所の排泄物をファーミング(笑)して硝石機を育てていたという。輸入もしていて最初はかなり高価。
さらに製造した火薬には、すぐに湿気るという罠が待っていた。
これはなかなか普及しないのは当たり前である。鉄砲が出来たからといって、いきなり鉄砲隊ババーン! 強いぜヤッター!! ではない。装備揃えられないし、火薬作ったらすぐ使わないと湿気て使い物にならんし、弩とか槍とかのほうが戦場では使い勝手が良かった。

大砲については、デカい意思を城壁にぶつけて壊すという原理である以上、火薬を使わないトレビシェットのほうがが使い勝手がよく、経済的にはエコである。大砲が主流になるには、使用する火薬の量や価格と、破壊力との釣り合いが取れる必要があった。

銃の場合は、日本の火縄銃を思い起こして欲しいのだが、最初は単発でしか発射できない銃なのだ。
一回撃ったらシャコシャコ玉込めして撃つ、みたいな感じ。しかも初期は銃の筒の中にライフリング加工がないので弾の飛ぶ咆哮が定まりにくいし、弾が球体なので空気抵抗が大きい。飛距離は伸びないし命中率悪い。そのへんが解消されないと主戦力にはなれない。

そうした、多々ある技術上の問題をクリアしていった先に、銃火器が戦場の主戦力となる世界がある。
しかも技術は一直線に進化していったのではなかった。ある程度のところまで行ったら数百年停滞する、などもありつつ、必要と、おそらく偶然によって進化していったのだった。


分厚い本なのだが、細かいデータよりは全体の流れが面白いなと思った。自分も、技術は一直線に進化してきたのだと思ってたクチなので、こんなに無駄なことしてたのかー、とか、ただ単に殺傷力を高めるだけではなくコスト見合いもあったんだなー、とか色々と勉強になった。そして、意外と最近まで弩や槍などの武器が有効だったんだと言うことを知った。(というか、槍は銃剣になったとみなせば最近でも使われている)
戦争の歴史は、人間の技術発展の歴史でもあるのだ。

なお、技術的な部分以外では、お約束(?)の、戦争しすぎて赤字経営になったヨーロッパ諸国の金策についても出てくるので、そういうの好きな人にはオススメの本かもしれない。