北米太平洋岸の先住民が飼ってた「モフモフ犬」のDNA調査から、絶滅に至る経緯が推測される
かつて、サリッシュ族は「Woolly dogs」と呼ばれる毛深犬を飼っていたらしい。用途は、そのモフモフした毛を織物に使うため。つまり羊がいない代わりを犬にやらせていたというのだ。
参考:
Woolly Tale: Salish Weavers Once Raised a Now-Extinct Dog for Its Hair
https://www.americanindianmagazine.org/story/a-woolly-tale

この犬は19世紀に絶滅してしまったが、1859年に収集されたMuttonと名づけられた犬の毛皮は保存されている。ここからDNAを抽出して、祖先がどこかから来たのかや、どういう種族だったのかなどを調べたという研究があった。


The history of Coast Salish “woolly dogs” revealed by ancient genomics and Indigenous Knowledge
https://www.science.org/doi/10.1126/science.adi6549#supplementary-materials
この犬は小型のスピッツ犬の仲間で、色は白か薄茶色で毛は細かった、という。
良質な毛を保つには他の犬と交配させないことが重要で、そのため島に隔離して女性たちが大切に育てていたらしい。犬を、毛を取るための家畜として飼育していたという面白い事例である。
だが、ヨーロッパからの入植者が増えるにつれ、疫病で人が減ったり、伝統文化が禁止されたりするようになる。また羊が連れ込まれたことで、より効率的に大量の毛が取れる羊のほうに需要が傾いていった可能性もある。Muttonの祖先は5000年前くらいに変異した種のようなのだが、Mutton自身は16%ほどヨーロッパの犬、つまり曽祖父母の世代に一頭はヨーロッパ犬がいたくらいの配合になっているという。
モフモフ犬の種は厳重な管理のもとで保たれてていたが、維持管理が出来なくなったことで連れ込まれた洋犬との混血が進んで消えてしまったのかもしれない。
消滅に至る経緯は複雑で、おそらく複数の要因が絡んでいる。
ただ、やはり人口の減少がいちばん大きいと思う。以前取り上げた以下の記事を参照してほしいのだが、まさにこの犬の飼育されていた地域を含む北西岸で、主に天然痘によって、3年で人口の2/3が死亡という物凄いハイペースで減少していた時期がある。モフモフ犬が絶滅した時期は、この時期と前後している。
カナダ先住民と疫病死亡率。北米もかなりの影響を受けていた
https://55096962.seesaa.net/article/492751023.html
この伝統的なモフモフ犬の飼育と犬毛織物は、19世紀に途絶えてしまった伝統の一つと言えるだろう。
さて、今回のMuttonのDNAの分析結果だが、ひとつ面白い内容があった。羊毛のような毛を生み出す原因がKANK2部分にある変異だという話だ。この遺伝子が変異すると、ヒトでも同じ現象が起きるらしいのだ。毛が長く、モッフモッフになっていたのは、幾つかの特徴的な遺伝子の組み合わせの為せるわざで、だからこそ隔離して島で交配するという手法が取られていたのだろう。
まあ現代犬でもモフモフしたやつはいっぱいいるんだけど…もったいないなあ、羊の代わりが出来るモフモフ犬…生きた姿に会いたかった…。
あと、関連記事のほうにあるのだが、どうやら北米の先住民はサリッシュ族以外にもモフモフ犬を飼っていたらしい。
バンクーバー島西部のNuu-chah-nulth 族は、別の犬種で長毛種を飼っており、黒、灰色、白などいろんな色を揃えて使っていたのだとか。
考えてみれば北米、長い毛のある家畜化しやすい生き物があんまりいないんである。ウマは絶滅しちゃってるし羊いないし。ヤギの仲間はロッキー山脈あたりなら居るけどアラスカのような北の寒い土地には生息していない。
寒いところでも余裕で飼育出来て増やしやすいイッヌを使うのは、かなり頭のいい生存戦略なのでは…?
南米アンデスでも、毛のない犬を湯たんぽがわりに飼育していたという話があるし、新大陸の家畜事情は、旧大陸の常識で判断出来ない世界なんだなと思った。実に興味深くて面白い。
参考:
Woolly Tale: Salish Weavers Once Raised a Now-Extinct Dog for Its Hair
https://www.americanindianmagazine.org/story/a-woolly-tale
この犬は19世紀に絶滅してしまったが、1859年に収集されたMuttonと名づけられた犬の毛皮は保存されている。ここからDNAを抽出して、祖先がどこかから来たのかや、どういう種族だったのかなどを調べたという研究があった。
The history of Coast Salish “woolly dogs” revealed by ancient genomics and Indigenous Knowledge
https://www.science.org/doi/10.1126/science.adi6549#supplementary-materials
この犬は小型のスピッツ犬の仲間で、色は白か薄茶色で毛は細かった、という。
良質な毛を保つには他の犬と交配させないことが重要で、そのため島に隔離して女性たちが大切に育てていたらしい。犬を、毛を取るための家畜として飼育していたという面白い事例である。
だが、ヨーロッパからの入植者が増えるにつれ、疫病で人が減ったり、伝統文化が禁止されたりするようになる。また羊が連れ込まれたことで、より効率的に大量の毛が取れる羊のほうに需要が傾いていった可能性もある。Muttonの祖先は5000年前くらいに変異した種のようなのだが、Mutton自身は16%ほどヨーロッパの犬、つまり曽祖父母の世代に一頭はヨーロッパ犬がいたくらいの配合になっているという。
モフモフ犬の種は厳重な管理のもとで保たれてていたが、維持管理が出来なくなったことで連れ込まれた洋犬との混血が進んで消えてしまったのかもしれない。
消滅に至る経緯は複雑で、おそらく複数の要因が絡んでいる。
ただ、やはり人口の減少がいちばん大きいと思う。以前取り上げた以下の記事を参照してほしいのだが、まさにこの犬の飼育されていた地域を含む北西岸で、主に天然痘によって、3年で人口の2/3が死亡という物凄いハイペースで減少していた時期がある。モフモフ犬が絶滅した時期は、この時期と前後している。
カナダ先住民と疫病死亡率。北米もかなりの影響を受けていた
https://55096962.seesaa.net/article/492751023.html
この伝統的なモフモフ犬の飼育と犬毛織物は、19世紀に途絶えてしまった伝統の一つと言えるだろう。
さて、今回のMuttonのDNAの分析結果だが、ひとつ面白い内容があった。羊毛のような毛を生み出す原因がKANK2部分にある変異だという話だ。この遺伝子が変異すると、ヒトでも同じ現象が起きるらしいのだ。毛が長く、モッフモッフになっていたのは、幾つかの特徴的な遺伝子の組み合わせの為せるわざで、だからこそ隔離して島で交配するという手法が取られていたのだろう。
まあ現代犬でもモフモフしたやつはいっぱいいるんだけど…もったいないなあ、羊の代わりが出来るモフモフ犬…生きた姿に会いたかった…。
あと、関連記事のほうにあるのだが、どうやら北米の先住民はサリッシュ族以外にもモフモフ犬を飼っていたらしい。
バンクーバー島西部のNuu-chah-nulth 族は、別の犬種で長毛種を飼っており、黒、灰色、白などいろんな色を揃えて使っていたのだとか。
考えてみれば北米、長い毛のある家畜化しやすい生き物があんまりいないんである。ウマは絶滅しちゃってるし羊いないし。ヤギの仲間はロッキー山脈あたりなら居るけどアラスカのような北の寒い土地には生息していない。
寒いところでも余裕で飼育出来て増やしやすいイッヌを使うのは、かなり頭のいい生存戦略なのでは…?
南米アンデスでも、毛のない犬を湯たんぽがわりに飼育していたという話があるし、新大陸の家畜事情は、旧大陸の常識で判断出来ない世界なんだなと思った。実に興味深くて面白い。