トンガ噴火の海底地形の変化が明らかに。大噴火で寒冷化しなかった理由は「噴出分の大半が海底に堆積したから」

2022年に発生したトンガの海底火山についての続報である。
この噴火については調べれば色々情報は出てくるので詳しくは省略するが、宇宙からも観測されるほどの巨大な海底噴火、ソニックウェーブが地球を二周して日本でも気圧変化が観測されたほど、という人類史上稀有な事象である。

しかも空気中への噴出物が少なく、大噴火につきものの寒冷化現象も起きていなかった。
むしろ海水から大量の水蒸気が成層圏まで上がってしまい、温暖化に繋がったとする研究もある。初めて観測される現象が相次いだのだ。

で、「大気中に放出されなかった噴出物どこいったんだよ」という話なのだが、このたび海底の調査が完了し、大方の予想通り「近くの海に再堆積してました」という結果になったようだ。

Volcaniclastic density currents explain widespread and diverse seafloor impacts of the 2022 Hunga Volcano eruption
https://www.nature.com/articles/s41467-023-43607-2

海底の断面図を見ると、噴火口だけきれいに800mぶんほど抉れており、火山の斜面は崩壊していない。山の形はキッチリ残ったまま。

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堆積物は海流とともに流れて広がったようで、広い範囲で海底ケーブルの破損が起きたのは火山から噴出したものがケーブルのある場所を流れた結果らしい。当然ながらその範囲では海中の生物も全滅。海底の風景が一変されていることが分かる。この堆積物は、噴火口から20km先までも到達しているそうなので、かなり広い範囲で影響が出ていたのだ。火山噴火が地上で起きなくてほんとに良かった…。

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これまで海底火山というのはなかなか観測が出来ず、噴火した時や火山性の地震が起きた時にどういう反応が出るのか分かっていないところが多いという。去年10月に日本で起きた「謎の津波」現象の原因も、鳥島沖のマグマの活動によるものだったというが、当初はそれが分からなかった。

今回、噴火が海のある程度深いところで起きると、チリではなく水蒸気が噴出する場合もあるということ、その場合は近辺の海中生物が死滅する、ということが分かった。こうして人類の自然現象に対する知見は溜まっていくのである。実に面白い。


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★おまけ

噴出した水蒸気についての記事はこちら。水蒸気が温室効果ガスなのとか、この時まですっかり忘れてましたね…

トンガ噴火で気候変動? その理由は火山性ガスではなくまさかの「水蒸気」
https://55096962.seesaa.net/article/491836265.html