砂嵐でも、人は死ぬ。―古代エジプト人の肺に見る砂塵の影響
古代エジプト人のミイラの肺から大気汚染の影響が見つかっている、というのを見かけたのでちょっと調べてみたのだが、本当に15体のミイラから汚染が見つかっていた。もちろんミイラの肺の部分が良い状態で残っていなければ調査は出来ない。見つかっている数は少ないが、職業や階級での偏りがないことから、一般的なものだった可能性がある。
Egyptian mummies hold clues to ancient air pollution
https://www.nbcnews.com/id/wbna43286321
上の記事で「肺の中の汚染粒子を調査する」と言ってて、調査した内容が↓以下。
The structural and elemental composition of inhaled particles in ancient Egyptian mummified lungs.
https://www.escholar.manchester.ac.uk/uk-ac-man-scw:189744
※ここについているPDFがかなり詳細に調査を記載している
ミイラにする時に肺の大部分が残されていたために調査できた模様。なお後半には肺を実際に切り開いている解剖的なシーンもあるため注意
肺を汚染しているのがまず「シリカ(ケイ素)」の粒。これはサハラから飛んでくる砂漠の砂塵が由来。
これは珪肺症という肺の病気を引き起こす原因となる。
肺機能が落ちて体が動かなくなるもので、急性で発症した場合は2年以内に呼吸困難に陥るらしい。怖い。
次が炭素粒子。要するに物を燃やして出たススを長年吸い込み続けた場合などに起きるもの。
これはじん肺を引き起こす原因となる。
おそらく家の構造が煙を逃がしにくいものだったのと、現代も行われている焼き畑など農作業によるものがあると思う。
こちらも呼吸機能が落ちたり、咳が止まらなくなったり、肺がんになったりと大変。
前者の「沙漠の砂吸い込んでて肺が傷んだ」というのは、エジプトに住んでいれば誰でもなるものなので、階級性別問わず出ていたというのは分かる。ちょっと調べてみたのだが、近年起きた大規模な砂嵐で実際に数百人が呼吸困難になり、数人が死亡していた事例が見つかった。
Sandstorm causes health problems
https://www.undrr.org/news/sandstorm-causes-health-problems
https://www.undrr.org/news/sandstorm-causes-health-problems
砂嵐怖い。てか無理。
嵐で人は死ぬのか…。春先に西の風が吹いて西の空が暗くなり始めたら、みんなダッシュでおうちに逃げ込んでたりしたんだろうか。サハラから遠い東部デルタやパレスチナでも影響が出るというので、逃げ場はないなと悟った。
何度も言ってるけど古代世界、生きるのが過酷すぎる。
なお、中段のあたりに貼った肺を汚染している成分の詳細な研究だが、職業・地位によって汚染される対象が異なるはず。というのでマトリックス表が載っていた。たとえば「明かりに使う油が何かによって出る煤の種類が違う」とかである。いちばん下の「エリート」層はオリーブオイルやヤシ油の煤を吸い込む危険性はあるが、神官のように儀式で使われる蜜蝋の煤に触れる可能性は低い。
ただ全階級通して「泥レンガの埃」は触れてるというあたりが、実にエジプト。まあそうだよね、家の材料だもんね。あと家からあまり出ないぶん、エリート層ほど砂埃の影響は受けにくいらしい。
このへんで肺に貯まる埃の影響や種類は分かれてきそうなのは面白い・
Egyptian mummies hold clues to ancient air pollution
https://www.nbcnews.com/id/wbna43286321
上の記事で「肺の中の汚染粒子を調査する」と言ってて、調査した内容が↓以下。
The structural and elemental composition of inhaled particles in ancient Egyptian mummified lungs.
https://www.escholar.manchester.ac.uk/uk-ac-man-scw:189744
※ここについているPDFがかなり詳細に調査を記載している
ミイラにする時に肺の大部分が残されていたために調査できた模様。なお後半には肺を実際に切り開いている解剖的なシーンもあるため注意
肺を汚染しているのがまず「シリカ(ケイ素)」の粒。これはサハラから飛んでくる砂漠の砂塵が由来。
これは珪肺症という肺の病気を引き起こす原因となる。
肺機能が落ちて体が動かなくなるもので、急性で発症した場合は2年以内に呼吸困難に陥るらしい。怖い。
次が炭素粒子。要するに物を燃やして出たススを長年吸い込み続けた場合などに起きるもの。
これはじん肺を引き起こす原因となる。
おそらく家の構造が煙を逃がしにくいものだったのと、現代も行われている焼き畑など農作業によるものがあると思う。
こちらも呼吸機能が落ちたり、咳が止まらなくなったり、肺がんになったりと大変。
前者の「沙漠の砂吸い込んでて肺が傷んだ」というのは、エジプトに住んでいれば誰でもなるものなので、階級性別問わず出ていたというのは分かる。ちょっと調べてみたのだが、近年起きた大規模な砂嵐で実際に数百人が呼吸困難になり、数人が死亡していた事例が見つかった。
Sandstorm causes health problems
https://www.undrr.org/news/sandstorm-causes-health-problems
https://www.undrr.org/news/sandstorm-causes-health-problems
砂嵐怖い。てか無理。
嵐で人は死ぬのか…。春先に西の風が吹いて西の空が暗くなり始めたら、みんなダッシュでおうちに逃げ込んでたりしたんだろうか。サハラから遠い東部デルタやパレスチナでも影響が出るというので、逃げ場はないなと悟った。
何度も言ってるけど古代世界、生きるのが過酷すぎる。
なお、中段のあたりに貼った肺を汚染している成分の詳細な研究だが、職業・地位によって汚染される対象が異なるはず。というのでマトリックス表が載っていた。たとえば「明かりに使う油が何かによって出る煤の種類が違う」とかである。いちばん下の「エリート」層はオリーブオイルやヤシ油の煤を吸い込む危険性はあるが、神官のように儀式で使われる蜜蝋の煤に触れる可能性は低い。
ただ全階級通して「泥レンガの埃」は触れてるというあたりが、実にエジプト。まあそうだよね、家の材料だもんね。あと家からあまり出ないぶん、エリート層ほど砂埃の影響は受けにくいらしい。
このへんで肺に貯まる埃の影響や種類は分かれてきそうなのは面白い・