古代アンデス民はジャガイモを食っていた? 狩猟採集民ではなく「採集狩猟民」だったかもしれない
古代、最初期にアンデスに住み着いた人たちは、既にジャガイモを食べていたかもしれない。
そんな研究が出ていたので、ちょっと論文を読んでみた。
ざっくり要約すると
・人骨の同位体比を調べることで、食べていた食物の種類と比率がわかる
・9,000 年~6,500年前という超初期の人類の骨を調べてみたところ、8割がC3植物だった
・C3植物はイネ、コムギ、イモ、C4植物がトウモロコシ。イネやムギはアンデスにないのでイモだったのでは?
という感じ。
イモではなくキヌアという可能性もあるが、少なくともトウモロコシとは違うとわかる。
Stable isotope chemistry reveals plant-dominant diet among early foragers on the Andean Altiplano, 9.0–6.5 cal. ka
https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0296420#pone-0296420-g001
実に分かりやすい結果が出ていて、得ていた栄養分はほとんどC3植物。
同位体についての情報は以下のページの図がわかりやすかった。「くわしく見る」をクリックするとPDFの論文が開くので、それも参考までに。
https://www.environmentalisotope.jp/understood/1046/
動物の場合は、食べた後に骨が残る。
これまでは遺跡に残る骨から、肉食だったんだろうと思われていたのだが、実際は痕跡の残らない植物のほうをたくさん食べていたという結果である。
当時はまだ土器がないはずで、あまり複雑な調理はできない。そうなると、イモ掘ってきて焚き火に放り込むか近くに埋めて蒸し焼きくらいしか出来ない。また、分析対象になったウィラマヤ・パチシャ(Wilamaya Patjxa)とソロ・ミカヤ・パチシャ(Soro Mik’aya Patjxa)という遺跡が標高3,800 メートルに位置するということで、高地であればやはりイモしかないと思う。
なぜ動物をあまり食べていなかったのかについては、2つの可能性が考えられている。
・この土地に人が11,000年前ごろに到達したとすれば、9,000年前までの2,000年で動物を狩り尽くしてしまっていた
・もともと狩猟はあまり行っておらず植物食を好んでいた
いずれにせよアンデスの民は早い段階からイモを食べており、のちにイモの栽培化やリャマ・アルパカなどのラクダ科動物の飼育が開始される前段部分が始まっていたことが予想される。というか狩猟できる動物が減った、の説のほうがありそうだなと思う。減ったから増やそう→飼育 となる流れなら自然だと思うからだ。あと他に食い物がなければ、毒はあっても増えやすいイモに手を出すのもわかる。
この論文読んだ時、アンデス=イモ文明 強火担の先生が狂喜乱舞しそうだなとちょっと思い出していたw
だいぶ前になるが、「ジャガイモのきた道」という本を読んだ時の感想が以下。
https://55096962.seesaa.net/article/201105article_38.html
この時は、「ジャガイモの原種は毒があるんだからそんな古くから食われてたわけじゃないだろ」と思っていたのだが、実は古代からなんとかして食ってたのだとしたら、ちょっとゴメンナサイをしなければならない。アンデス高地は、そもそもイモのお陰で定住生活が始まったのかもしれない。イモなかったらみんな山を降りてた…?
食べてた証拠の残らないイモが、まさかの食物の大半を占めてたとは、意外な結果であった。
そして南米の農耕牧畜の始まりの一端についても、ひとつ勉強になった。
科学の力って素晴らしいなあ。
そんな研究が出ていたので、ちょっと論文を読んでみた。
ざっくり要約すると
・人骨の同位体比を調べることで、食べていた食物の種類と比率がわかる
・9,000 年~6,500年前という超初期の人類の骨を調べてみたところ、8割がC3植物だった
・C3植物はイネ、コムギ、イモ、C4植物がトウモロコシ。イネやムギはアンデスにないのでイモだったのでは?
という感じ。
イモではなくキヌアという可能性もあるが、少なくともトウモロコシとは違うとわかる。
Stable isotope chemistry reveals plant-dominant diet among early foragers on the Andean Altiplano, 9.0–6.5 cal. ka
https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0296420#pone-0296420-g001
実に分かりやすい結果が出ていて、得ていた栄養分はほとんどC3植物。
同位体についての情報は以下のページの図がわかりやすかった。「くわしく見る」をクリックするとPDFの論文が開くので、それも参考までに。
https://www.environmentalisotope.jp/understood/1046/
動物の場合は、食べた後に骨が残る。
これまでは遺跡に残る骨から、肉食だったんだろうと思われていたのだが、実際は痕跡の残らない植物のほうをたくさん食べていたという結果である。
当時はまだ土器がないはずで、あまり複雑な調理はできない。そうなると、イモ掘ってきて焚き火に放り込むか近くに埋めて蒸し焼きくらいしか出来ない。また、分析対象になったウィラマヤ・パチシャ(Wilamaya Patjxa)とソロ・ミカヤ・パチシャ(Soro Mik’aya Patjxa)という遺跡が標高3,800 メートルに位置するということで、高地であればやはりイモしかないと思う。
なぜ動物をあまり食べていなかったのかについては、2つの可能性が考えられている。
・この土地に人が11,000年前ごろに到達したとすれば、9,000年前までの2,000年で動物を狩り尽くしてしまっていた
・もともと狩猟はあまり行っておらず植物食を好んでいた
いずれにせよアンデスの民は早い段階からイモを食べており、のちにイモの栽培化やリャマ・アルパカなどのラクダ科動物の飼育が開始される前段部分が始まっていたことが予想される。というか狩猟できる動物が減った、の説のほうがありそうだなと思う。減ったから増やそう→飼育 となる流れなら自然だと思うからだ。あと他に食い物がなければ、毒はあっても増えやすいイモに手を出すのもわかる。
この論文読んだ時、アンデス=イモ文明 強火担の先生が狂喜乱舞しそうだなとちょっと思い出していたw
だいぶ前になるが、「ジャガイモのきた道」という本を読んだ時の感想が以下。
https://55096962.seesaa.net/article/201105article_38.html
この時は、「ジャガイモの原種は毒があるんだからそんな古くから食われてたわけじゃないだろ」と思っていたのだが、実は古代からなんとかして食ってたのだとしたら、ちょっとゴメンナサイをしなければならない。アンデス高地は、そもそもイモのお陰で定住生活が始まったのかもしれない。イモなかったらみんな山を降りてた…?
食べてた証拠の残らないイモが、まさかの食物の大半を占めてたとは、意外な結果であった。
そして南米の農耕牧畜の始まりの一端についても、ひとつ勉強になった。
科学の力って素晴らしいなあ。