古代人はどうやって髪の毛を「剃った」か。そこから見えてくる散髪事情について
「5000年前の日常」というメソポタミア本を読み返していて、ふと気がついた部分があった。
「青銅製の剃刀で安全に頭を剃るのは大変だぞ」という話である。
五〇〇〇年前の日常 シュメル人たちの物語 (新潮選書) - 小林 登志子
古代世界に、ハサミはない。「古代メソポタミアに存在した!」と書いてあるサイトも出てくるのだが、実物の写真がない時点で怪しいと思ったほうがいい。というか銅か青銅しかない時代だと、それほど薄くて鋭利な刃物は作れないんである。そして実物があったとしても、それは日常使いする量産されるような品ではなかっただろう。あったら残っている。たとえばエジプトでは剃刀やピンセットを墓に入れている。はさみに似た形状のものがあったとしても、オシャレセットとして使われるようなものではなかったわけだ。
で、剃刀はあったのだが、この剃刀で頭を剃るのも一苦労だったはずだ…というのが、冒頭の話である。切れ味のことは考えていなかったのだが、確かにこれで頭を剃るのは大変そうだな、と思った。
鉄は打ちのべてモノを作る金属なのだが、銅は型に溶けたものを流し込んでモノを作る金属なので、作り方からしてそもそもあまり薄く出来ないという特徴がある。この剃刀、実際に使ったらどんな感じだったのだろうか…。
古代エジプトでは、理容師という職業が成立していた。職業に対する訓戒では「街の髭剃り人は客を探して一日中在るき回る(ので大変)」と書かれている部分がある。つまり剃刀で毛を剃る担当がいたのだ。現代のような手軽で写りのよい鏡のない古代だから、自分で頭や髭を剃るのは難しく、人に頼んだのは当然と言える。
また、より古い時代には王専属の理髪師というのも居たらしい。刃物を王の体に当てるのだから、大変な仕事である。信頼されていないとそんなことは許されない。実際には美容師とかではなく側近なのだが、「切れ味があまり良くなかった」と聞けば納得である。うっかり痛くしようものなら首が飛びかねない。そのへんの召使いに出来る仕事ではないわけだ。なるほど…。
理髪師の起源は古代エジプト! みたいな話を見かけたので、元ネタを集めておいた。
https://55096962.seesaa.net/article/202101article_7.html
と、「古代世界では髪を綺麗に剃る難易度が非常に高い」ということが分かってくると、古代メソポタミア人も、エジプト人も、実際はそんなに髪の毛剃ってなかった、という話も、より解像度を増してくる。髪の毛が伸びないと剃れない。そして剃れたとしてもジャギジャギになってしまって現代人の考えるほど綺麗な坊主頭にするのはほぼ不可能。
どおりでホットワックスで毛穴潰そうとしてる手法が残ってるわけだよ…w
神官さんたちの剃髪は、壁画で見るとツルッツルだけど、実際はそんな綺麗じゃなかったのかも。あとやっぱ腕のいい剃り師は重宝されたんだろうなと思った。それが町の理容師の起源になっていったのかも。
「青銅製の剃刀で安全に頭を剃るのは大変だぞ」という話である。
五〇〇〇年前の日常 シュメル人たちの物語 (新潮選書) - 小林 登志子
古代世界に、ハサミはない。「古代メソポタミアに存在した!」と書いてあるサイトも出てくるのだが、実物の写真がない時点で怪しいと思ったほうがいい。というか銅か青銅しかない時代だと、それほど薄くて鋭利な刃物は作れないんである。そして実物があったとしても、それは日常使いする量産されるような品ではなかっただろう。あったら残っている。たとえばエジプトでは剃刀やピンセットを墓に入れている。はさみに似た形状のものがあったとしても、オシャレセットとして使われるようなものではなかったわけだ。
で、剃刀はあったのだが、この剃刀で頭を剃るのも一苦労だったはずだ…というのが、冒頭の話である。切れ味のことは考えていなかったのだが、確かにこれで頭を剃るのは大変そうだな、と思った。
鉄は打ちのべてモノを作る金属なのだが、銅は型に溶けたものを流し込んでモノを作る金属なので、作り方からしてそもそもあまり薄く出来ないという特徴がある。この剃刀、実際に使ったらどんな感じだったのだろうか…。
古代エジプトでは、理容師という職業が成立していた。職業に対する訓戒では「街の髭剃り人は客を探して一日中在るき回る(ので大変)」と書かれている部分がある。つまり剃刀で毛を剃る担当がいたのだ。現代のような手軽で写りのよい鏡のない古代だから、自分で頭や髭を剃るのは難しく、人に頼んだのは当然と言える。
また、より古い時代には王専属の理髪師というのも居たらしい。刃物を王の体に当てるのだから、大変な仕事である。信頼されていないとそんなことは許されない。実際には美容師とかではなく側近なのだが、「切れ味があまり良くなかった」と聞けば納得である。うっかり痛くしようものなら首が飛びかねない。そのへんの召使いに出来る仕事ではないわけだ。なるほど…。
理髪師の起源は古代エジプト! みたいな話を見かけたので、元ネタを集めておいた。
https://55096962.seesaa.net/article/202101article_7.html
と、「古代世界では髪を綺麗に剃る難易度が非常に高い」ということが分かってくると、古代メソポタミア人も、エジプト人も、実際はそんなに髪の毛剃ってなかった、という話も、より解像度を増してくる。髪の毛が伸びないと剃れない。そして剃れたとしてもジャギジャギになってしまって現代人の考えるほど綺麗な坊主頭にするのはほぼ不可能。
どおりでホットワックスで毛穴潰そうとしてる手法が残ってるわけだよ…w
神官さんたちの剃髪は、壁画で見るとツルッツルだけど、実際はそんな綺麗じゃなかったのかも。あとやっぱ腕のいい剃り師は重宝されたんだろうなと思った。それが町の理容師の起源になっていったのかも。