偏頭痛に悩む人は古代エジプトにもいた。古代語「半頭」と治療の方法

春の気候は頭痛に繋がりやすい、とかなんとか。わりと周囲で頭痛に悩んでる人がいて、「そういや古代エジプトの医療パピルスで偏頭痛のやつあったな」と思い出したので、ちょっと掘り出してきた。

偏頭痛は、元は「片」頭痛で、ギリシャ語ではhemicrania。これが語源となってmigraineという現代の用語が生まれたらしいのだが、古代エジプトでは、まんま「半頭」という言葉で呼ばれる頭痛と、それに対する処方箋が残されている。有名どころでは医療パピルスの一つであるエーベルス・パピルス。民間療法として、ディル・エル・メディーナの職人村から発掘されたパピルス群がある。


images_large_10.1046_j.1468-2982.2001.00274.x-fig1.jpg

重要なポイントなのだが、古代エジプト人は、脳という機関の重要性を認めていなかった。「鼻水を生み出す場所」という認識。
なので、頭痛の原因は脳ではなく、頭蓋骨の様々な部位だと考えていた。

以下のジャーナルにまとめられているのだが、頭の色んな部位について詳しく分析しているのに、脳についての記述は無い…。

Headache in Magical and Medical Papyri of Ancient Egypt
https://journals.sagepub.com/doi/10.1046/j.1468-2982.2001.00274.x

治療は、頭痛の影響を受ける部位によって分かれている。

・頭全体が痛い
・頭の片側(半頭)
・こめかみ
・うなじ

二番目が片頭痛の治療法と思われる。ただし「痛い部位」の話だけで、どのように痛むのかについての記述がないため、診断は現代基準では雑。僅かに、エーベルス・パピルスの中に「嘔吐を伴う頭痛」というものだけはあるようだ。

なお、肝心の治療法だが、調べたところほとんどが「呪文を唱えろ」とか、泥に住むナマズの頭蓋骨を焼いて砕いてぬったくれとか、呪術的な内容とだったので…うん。
くも膜下出血などだった場合、古代世界では救命のしようがないので、ある意味では正しい。症状から起きることは分かっていても、どうしようもないことはあるのだ。呪文や祈祷は、ある意味、メンタルケアの側面の強い末期治療の一種だったのかもしれない。